新・闘わないプログラマ No.57

資格商法


「悪徳商法?マニアックス」あたりを眺めていると、「資格商法」という手口が沢山あることに感心してしまいます。まあ、騙す方も騙す方なら、騙される方も騙される方で、よくこんな手口を考えるなぁ、とある意味感心してしまったり、なんでこんな手口に騙されるんだよー、なんて思ってしまったり、まあ世の中いろいろですね。
資格商法ってどんなものか、って言いますと、たとえば「今度、○○診断士という資格が国家資格になる予定になっている。ついては、今なら、当会、○○診断士普及協会、の通信教育を受講すれば、その資格が得られる」とかなんとか言って、高いお金を払わされれて・・・というパターンです。で、こういうのを一回でも受講すると、こいつはカモだ、ということでそのスジのリストに載ってしまうらしくて、何度も何度も勧誘の電話があるそうです。まあ、詳しくは、悪徳商法のページでもご覧ください。

翻って、コンピュータの世界を見渡しますと、資格・検定・試験の類が溢れかえっています。いわゆる「悪徳商法」に属するような奴はあんまり聞かないのですが、それは試験を受けるために必要な費用が小さい、というだけで、人々の不安を煽って、資格を取らせよう、というあたりは、「資格商法」そのものだったりするかも知れません(^^;)
なーんたって、あの「通産省」関連の国家資格、情報処理技術者試験からして、怪しげな香りがぷんぷんしていますから :-p

この情報処理技術者試験、いまこれをお読みの方の中にも取得している方、または取得しようと勉強されている方も沢山いらっしゃることと思いますので、あまりきついことを書くのは気が引けるのですが、そういう資格を取っていない人間の戯れ言だ、とでも思って軽く聞き流して下さい m(_ _)m
私、あの試験にほとんど価値を認めていないんです。そもそも筆記試験なんかで「情報処理技術者」の能力を測ることなんて不可能だと思いますし、あの資格の有無と、その人の能力の間に相関関係なんてあるんでしょうか・・・・私は無いと思っています。
この情報処理技術者試験、確か、数年前に制度ががらっと変わったはずですけど、資格の種類が五種類(二種、一種、特種、オンライン、アナリスト、でしたっけ)だったのが、十何種類に増えました(もう多すぎて覚えていません)。以前の試験は、デファクトスタンダードになっていても、特定のメーカーの製品やら、公的機関以外のところが定めた標準は、一切試験問題に出せなかったんだそうで、試験内容自体が現実からものすごく乖離していました。
「Ethernet」(Xeroxの商標・・・でしたよね)という言葉を出せないもんだから、「CSMA/CD方式を使用したバス型の伝送速度10MbpsのLAN」なんて言ったり、「UNIX」なんて言葉すら出せなかったんですから、試験問題を作る方も苦労したでしょうけど、こんな無意味な試験を受けさせられるほうもいい迷惑でしたね。最近の試験は、特定メーカーの製品名であってもある程度は出せるようですが。
そういう意味では改善はされているようですが、でも、でも、筆記試験じゃあねぇ。種別によっては、論文を書かせるものもありますが。この、論文という試験形態、私はこれはいいと思うのですが、実際の情報処理技術者試験でやっている論文は、かなりいただけません。だって、その場でテーマを与えられて、確か2時間半で4000字の小論文を書くんですよ。「あのなー」っていう風に私なんかは思ってしまいます。ちなみにこのコラム、長い回でだいたい4000字くらいです。書くのにかかる時間は、その回によって違いますが、2〜3時間、ただし、これにはテーマの選定やら、構成を考える、と言った作業は入っていません。こんな駄文ですら、普通に書いたらそのくらいかかるんですよね。なのに、論理を展開して行かなければならない論文を、テーマを与えられて2時間半で4000字。こんなん、そのための練習・訓練をやらなければ絶対に出来ない内容です。
しかも、しかも、この論文、なんといまどき原稿用紙に筆記しなければいけない・・・あのー、この試験、確か「情報処理技術者試験」でしたよね。いま時の情報処理技術者って、手書きで仕様書とか書いたりするんでしょうか?? しかも原稿用紙に。
「2時間半で4000字の論文を」「原稿用紙に手書きで」書くための能力なんて、情報処理技術者にとって、まったく無意味な能力だと断言できます。でも、この能力の無い人は、絶対に試験に受からない仕組みになっています。こういうところが、世間からあまりにも乖離していて、試験そのものが無意味だ、と思うわけです。
あと、上で書きましたけど、制度が改正されて試験の種類が増えました。その時に言われた冗談として、「これで、みんな仕事そっちのけで試験勉強して、日本のソフトウェア業界の生産性ががた落ちするだろう。これは、日本に危機感を抱いたアメリカの陰謀に違いない」というのがありました。でも、これはありません、だって、アメリカが日本のソフトウェア産業に危機感を抱いていたりするはずが無いもの(^^;) アメリカにとって、日本のソフトウェアなんて眼中に無いでしょう・・・ゲーム業界を除いて。

国家資格以外にも、なんちゃら協会のうんちゃら検定、とか、あとベンダーのかんたら認定技術者試験、とか、この業界の資格も本当に沢山あります。
最近ですと、私の周りでよく言われているのに、MCP(Microsoft Certified Professional)ってのがあります。まあ、マイクロソフトお墨付きの技術者とでも言うんでしょうかね。マイクロソフトのBackOffice製品(WindowsNT Server、SQL Server、SNA Server、等々)を中心にしてシステム構築する上でのプロの養成、ということで試験をやっています。うちのとこでも、これの講習をやったり、補助金が出たりするらしいですけど。他の会社(IBMとかNovellとかLotusとか)でも同じようなことやっていますよね。これ、言葉悪いですけど、なんかそのベンダーの飼い犬になったような感じで、なんかヤですね(この資格持っている人、ごめんなさい)。
結局、どれもそうなんですけど、こういう技術者向けの資格って、はっきり言って、持っているだけじゃ何の役にも立たないわけです。試験だけなら、極端な話、コンピュータに一切手を触れずに、机にかじりついて勉強しただけでも、受かっちゃったりするんです。でも、そいつが実際に仕事が出来るか、というと、それは全く別の話です。いかにしょうもないところで苦労してきたか、いかに修羅場をくぐりぬけてきたか、と言ったことが、その人の糧となって、その結果としての技術力ですから(そうじゃない人も、いっぱいいますけど(^^;))。
もちろん、机上の勉強(この言葉、本当は嫌いなんですけど)も大切で、これが無いと、よくいる「自分の経験だけ」の融通の利かない、理論を馬鹿にする、技術者になってしまいますが。

というわけで、私が考えるに、持っていて一番価値がある資格は、ユーザー向けのでしょうかね、「一太郎検定」のようなやつ。もちろん、我々のような仕事をしている人間には必要の無いものですけど。
これなら、その資格を持っていれば、少なくともそのソフトの使い方はかなりの程度、知っていると考えていいでしょうから、たとえば会社で人材募集をするときに、こういった資格の有無というのは、やっぱり大きな判断基準になり得ると思うわけです。
そういう意味で、一番価値があるかも知れない?(^^;)

今回はなんのかんのエラソーにいろいろと書いてしまいましたが、私は試験ってやつが大嫌いですし、そもそも価値を認めていないですから、こういう資格はなぁ〜んにも持っていません。「無冠の帝王」とでも呼んで下さい。

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