新・闘わないプログラマ No.51

ソフトウェアのライセンス管理


店で売っているパソコンなどのパッケージソフトって、ご承知のように、中に入っているフロッピーやらCD-ROMのメディアを売っているわけじゃなくて、ソフトウェアの使用許諾権(ライセンス)を売っているわけですけど、こいつの管理って、コンピュータを沢山あつかっているようなところですと、結構大変です。ライセンス管理にちょっとでも気を抜くと、すぐ不正使用になってしまったりします(悪意でやっているわけじゃないんですが・・・)
このあたりは、個人でしかパソコンを扱ったことのない人や、沢山のパソコンの導入や管理をやったことのない人にはピンと来ないかも知れませんが、実はこれは、ものすごく大変な(そしてつまらない)仕事だったりするのです。

大概の場合、ソフトウェアパッケージ1個は、1台のコンピュータにインストールして使用できる、というようなことが、使用許諾契約書とかに書いてあると思います。実際には、メーカーやら製品によって、その内容が微妙に違っていたりして、それがまた悩ましいとことでもあるのですが、取り敢えず1台に1パッケージが原則です。
でも、コンピュータを大量に導入する場合には、1台ごとにパッケージを買うのも面倒だし、マニュアルとかメディアとか沢山あってもゴミになってしまうだけなので、通常はライセンスパックなどと言っている、ソフトウェアのライセンスだけの製品(マニュアルやメディアが付いていない)を購入することが多いです。こいつはメディアが付いていませんので、通常は「フルパッケージ」とか呼んでいる普通のソフトウェアパッケージと組み合わせて購入するわけです。
このライセンスパック、たとえばマイクロソフトを例にとりますと、縦横25cmくらいの厚紙で出来た封筒(?)のような物の中に、単なる紙切れ(使用許諾契約書、ライセンス証書、ユーザー登録用紙、他)数枚が入っているものです。値段は、製品とライセンス数によりますけど、高いものだと数十万円・・・・そりゃまあね、理屈では分かっているつもりでも、感情的には、このぺらぺらの紙切れがウン十万円?(^^;)

とにかく、こんな感じでソフトウェアのライセンスを買っていくのですが、このライセンス数と、そのソフトウェアのインストールされているコンピュータ数を注意深く見張っていないと、知らないうちに不正使用になってしまったりするんですね。
最初にパソコンを導入したときには、必要なだけのソフトウェアライセンスを購入するのは簡単なんで、そこで問題が起こることはほとんど無いのですが(業者に一括で見積もってもらえばいいし)、その後が問題だったりするんですね。パソコンの数が増減したりしたときに、ライセンスをどういう風に減らしたり増やしたりするか、その管理が非常に厄介です。たとえば、ソフトウェアのライセンス管理を部署ごとに行っている会社の場合、こんなときです。

ここまでは全然問題が無いですね。ところが・・・

こうなってしまうと、もう不正使用なわけですね。ソフトウェアのライセンスは100台分しか無いのに、105台で使っているわけですから。
この例で、どこが一番問題か、というと部署Bにパソコンを渡したところの手続きですね。この場合は、ディスクの内容をまっさらにしてから渡すか、それとも、ライセンス証書を付けて渡すか、のどちらかにしなければいけないわけです。
じゃあ、そうすればいいじゃないか、と思うわけですけど、それがそうは簡単に行かないんですね。まず、ディスクをまっさらにして渡す、というやり方ですが、これは、パソコンを受け取った部署Bで新たにソフトウェアを買って下さい、というものですから、これは普通は認められないでしょうね。部署Aでライセンスが余っているのに、それを部署Bで買いなさい、と言っているわけですから。
じゃあ、ライセンスも一緒に部署Bに渡すやり方はどうか、ということですが、これも実はそう簡単には行きません。1ライセンス毎に切り離されたライセンス証書というようなものがあるようなソフトの場合には、これでもほとんどうまく行くのですが、実際には「この証書1枚で20ライセンス」のような場合もよくあります。確かマイクロソフトの場合、1、5、20の3種類があったかな。その上、ベンダーにしてあるユーザー登録自体も移動させないと、バージョンアップの手続きとかで面倒なことが起きてしまいます。
私がソフトウェアのライセンス管理をやっていた頃は、このあたりは、IBMのやり方がいちばんすっきりしていました(今どうなっているかは分かりません)。IBMのパソコン用のソフトウェアには、1ライセンスあたり1枚のライセンス証書が必ず付いてきました。これは、パソコンにプリインストールされているソフトの場合も同じでした。また、バージョンアップの時には、古いバージョンのライセンス証書を提出する形でしたから、このあたりの面倒も起こらなかったのです。だから、パソコンの移動の場合には、このライセンス証書をつけて移動させれば、それでお終いで、非常に楽でした。

これだけでもかなり厄介なところに、さらに輪をかけて話をややこしくしているのが、クライアントアクセスライセンス(CAL)というやつです。マイクロソフトがこのやり方を採用してから、このライセンス形態が主流になっていますが、これは本当に管理が面倒です。
このCALとはどんなものか、と言いますと、一言で言えば、サーバーソフトウェアにアクセスするための権利、とでも言ったらいいでしょうか。たとえば、WindowsNT Serverがあって、これをファイルサーバーやらプリンタサーバーとして使いたいクライアントパソコンがあったとすると、このクライアント1台毎にこのCALが必要になります(正確には、2種類のライセンス形態があるので、実際ににはもう少しややこしいのですが)。このとき、このクライアントのOSはWindowsNT Workstationであっても、Windows95/98であっても、OS/2であっても、MacOSであっても、このCALが必要になります。
要するに、CALはソフトウェアという「もの」に対する使用権では無く、あくまでもサーバーソフトウェアにアクセスするための権利なわけです。だから、NT Serverにアクセスするための機能(ソフトウェア)があっても、実際にその機能を使ってNT Serverにアクセスしなければ、CALは必要無いのですね。
このCAL、サーバーソフトウェア(Windows NT Server、SQL Server、SNA Server等)毎にあって、必要なものを必要なだけ買うわけですけど、これがもうややこしいことこの上無い。もう、面倒になると「しょうがない、全台数分買っちゃえ」とかいうことになって、ますますマイクロソフトの利益に貢献したりするわけですね(^^;)

そんなこんなで、最近はソフトウェアのライセンス管理については、もう面倒でやってられない、という気になってきています。
ところで、DTPやCADなんかの高価なソフトには「ドングル」と呼ばれているものを使うソフトがあります。これ、ハードウェアキーの一種なんですが、これをコンピュータの特定のポート(シリアルポート、パラレルポート、ADB等)に付けないとソフトウェア自体が動作しないようになっている、というものです。
安いソフトではこんな仕組みにすると値段が高くなってしまって現実的では無いと思いますが、でもこういう仕組みって取れないものかなぁ・・・なんて思うこともあります。こっちとしてはソフトウェアの不正使用までして経費を減らすような仕事をしたいわけじゃないんですけど、でも、よほど注意しないとそうなってしまう危険性があるわけで、その管理のためのコストというのも馬鹿にならないわけなんですよね。
こういう非生産的な仕事は出来るだけ避けたいなぁ・・・なんて思っている今日このごろです。でも、じゃあ、常日頃もっと生産的な仕事をしているかと言われると、それは・・・(^^;)

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