新・闘わないプログラマ No.485

遅い


「ファイルサーバへのアクセスがすごく遅いみたいなんですけど」
「ファイルサーバ? どれどれ……うーん、遅いっちゃあ遅いかなあ」
「いや、さっきなんか数MBのファイルをファイルサーバにコピーしただけで、1分近くかかっちゃって」
「単にファイルサーバが込んでいただけなんじゃないかなあ……あ、でもいま急に遅くなった。ファイルの一覧を見るだけでこの遅さ。なんでだろ?」
「さっきからそうなんですよねー」
「でも単に遅いだけで、動かないわけじゃないし……誰か大量のファイルをコピーでもしているのかなあ? ちょっとサーバーの負荷を確認してくるよ」

「おっかしいなあ。ファイルサーバの、CPUもディスクI/Oも、それからネットワークも、どれもそんなに負荷が高いわけでも無いし、なんで遅いんだろ?」
「そうですねえ、ファイルサーバ上でファイルの操作をしてみても、とくに遅くは感じませんし」
「となると、犯人はネットワークかなあ」
「と言っても、ファイルサーバとクライアントのPCとの間には、途中にルータとか余計なものはなくて、単純にハブでつながっているだけですし、遅くなる要因があまり……」
「ハブってどんなやつだっけ?」
「GbEのそれなりのやつですよ」
「他のPCからのアクセスも遅いんだろうか?」
「ちょっと調べてきます」

「なんかみんな『遅い!』って文句言ってますよ」
「まいったなあ、ハブの故障かなあ……あれ? そのさあ、そこにおいてあるPCだかサーバ機だか、それは何?」
「何でしょう? 見たことないですねえ」
「どうしてそんなものが、ここに勝手に置かれているんだ? それに電源も入っているし、稼動しているのかな?」
「あ、Aじゃないですか? これ置いたの。なんか計算用のサーバを置きたいんだけど場所が無いとかなんとか言っていたような……」
「そのサーバが大量のデータをネットワーク経由でやりとりしていて、そのせいで遅くなったとか」
「でも、ギガビットのスイッチングハブですしねえ、そう簡単には遅くなるほどのデータは流せないような気がしますけど」
「お、おい。ちょっと待て。ここにぶら下がっている、この安物っぽいハブ、これはいったい何だ?」
「家庭用みたいな4ポートハブですねえ、これ。この先につながっているのは、バックボーンのハブと、それからAの置いたサーバと……あと、この遅くなったファイルサーバもつながっていますね」
「なんでこんな勝手なことするんだ? ファイルサーバはバックボーンのハブに直接挿していたはず。ちょっとAを呼んできて」

「なんでこんなところにハブがぶらさがってるんだ?」
「この計算用のサーバを置いたんですけど、ハブのポートに空きが無かったんですよね」
「それで?」
「だから、近くに転がっていたハブを使って分岐させたんですよ」
「その転がっていたハブがこれ?」
「そうですけど、それが何か?」
「あのさあ、この線ってファイルサーバにつながっているんだよね」
「知ってますけど。それが一番近かったから、途中にこのハブを入れさせてもらったんですが」
「勝手にこんな安物のハブを途中に入れられても困るんだけど」
「ちゃんと問題なく動くことは確認しましたよ。ファイルサーバへもアクセスしてみましたし」
「いや、そういう問題じゃなくて……いま、みんな『ファイルサーバへのアクセスが遅い』って騒いでいるんだけど」
「いやあ、ハブを1個途中に入れたくらいで、そんな遅くはならないでしょう」
「そんなことないよ。ファイルサーバとはギガビットでつないでいたんだよ。でもこのハブって100メガのやつで……え゛、ちょっと待て。このハブって10メガの、スイッチですらない、コリジョン起こりまくりのダムハブじゃん」

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