新・闘わないプログラマ No.453

製本


最近、コンピュータ関係の本を買い込んで、電車の中で読んでいます。朝の通勤時にはぎゅうぎゅう詰めの電車で座ることはもちろん、立って本を持ちながら読むことすらままならないので、主に読むのは帰りのときです。帰りは並ばずともかならず座っていけるという好条件なので、そこが読書タイムになっています。まあ「好条件」というのは要するに、東京の都心をはさんで家と職場が反対側にあるからに他ならないわけで、要するにそれは「通勤時間が長い」ともいえます。
さて、そんなわけで、カバンにコンピュータ書を入れて持ち歩いていますが、最近のこの手の本って、どれも「でかい」「重い」のは何故なんでしょうか。少なくとも、立って手に持って読めるような大きさと重さははるかに超越しているものが大半ですね。
昔は、コンピュータ書というとA5版あたりがポピュラーだったように思うのですが、今はそれより大きな版形が一般的です。紙質も必要以上に厚くて、結果として重くなってしまっているものがよくあります。私としては、K&R日本語版(「プログラミング言語C」)くらいの大きさ(A5版)・厚さ(20mm)・重さ(520g、実測)・紙質(今どきのたいていの本に比べたら薄めの紙)くらいがちょうどいいのではないか、と思っています。
とは言え、現実にはそれよりはるかにでかくて重い本をカバンに入れて持ち歩かざるを得ません。いま読んでいる本は、サイズがB5変形(縦はB5で、横幅はB5より大きい)、厚さが45mm、重さは1kgを優に越えています。少なくとももう少し薄い紙を使って欲しいと思うのですけど、どうなんでしょう? 「厚い紙を使う」→「本の厚みも増す」→「書店で棚差しされていたときに目立つ」、とかそういう理由もあるんでしょうか。

さて、プログラミングの勉強をしようか、と、なにかの言語の教科書を買ってきたとします。よくありがちな場面としては「机の上にその本を開いておいて、それを見ながらキーボードを叩く」というのがあります。ごくありふれた光景ですね。で、ここで問題となるのが「机の上にその本を開いておいて」という部分です。たいていの場合、手で押さえておかないと本は閉じてしまいます。開いたままの状態を保っておくことができません。
余談ですけど、私の持っているK&R日本語版は、108ページから217ページまでなら手で押さえておかなくてもなんとか開いた状態を保ちました。まあK&R日本語版は紙が薄いせいもあって開いた状態にできるページもあるようですが、いまどきのたいていの本はどのページであってもそういうことは不可能なものが多いように思えます。
なぜ手で押さえておかないと本が閉じてしまうのかと言えば、本の綴じ方のせいです。本の綴じ方には何種類かあります。そのなかに、コイル状にした針金を使った綴じ方があります。ノートやスケッチブックなどでよく見かける、例のあれです。これを「リング綴じ」と呼ぶらしいのですが、本をこのリング綴じにすれば、机の上に置いたときに手で押さえていなくても、独りでに閉じてしまうことが無いのでいいと思うのですが、なかかなそういう本はありません。書店の洋書コーナーに行くとリング綴じの本をよく見かけますが、少なくとも日本では一般的ではないようです。
では、なぜ、日本ではリング綴じの本が普及しないのでしょうか。以前こんな話を聞いたことがあります。これだけが原因なのかどうかはわかりませんが、一つの理由になっているらしいです。それは、
「リング綴じにすると、本にカバーをかけることができない」
ということです。ここで言う「カバー」は書店が付けてくれるものではなく、本が出荷されたときから付いているいわゆる表紙の部分のことです。日本の本はカバーがあるのが一般的です。カバーの無い本と言えば絵本やムックの類など、かなり珍しい部類に属します。で、あのカバーはいったい何のためにあるのでしょうか。これも聞いた話ですが、カバーが付いているのは別に「本に高級感を出すため」とかそういう理由ではないということです。読者側としては、実際に本を読む場面では、あのカバーは邪魔になることが多いものですし。
では、日本では大多数の本になぜカバーがかけられているのでしょうか。これは、日本において、書籍は委託販売が主流だ、ということにあるそうです。委託販売ですから、書店に並べられている書籍は出版社に返品される可能性があります(←私の本のように売れまくっていれば返品はされないでしょうが ←もちろん嘘です)。返品された本は書店に並べられていたわけですから、当然のごとく汚れていたりするわけです。とくに表紙や帯は汚れやすい部分でしょう。そこで、出版社側では、書籍の本体より、カバーや帯を多めに刷っておいて、汚れていたらそれらを取り替えて再出荷する、ということをやるんだそうです。カバーはそのためにあるということのようです。
つまり、風が吹けば桶屋が……じゃなくて、委託販売だからリング綴じ本は出しづらい、ということで。

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