新・闘わないプログラマ No.386

歴史


世間(って、ドコの世間かは知りませんが)で話題になっている「教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書」を買ってみました。で、この本を買った直後にする正しい行動としては、「自分のサイトが載っているか確認する」ということでしょう。
というわけでとりあえず年表から探してみると……ありました、地味に(97ページ)。

10/13
雑文サイト「それだけは聞かんとってくれ」開設。
http://www.sorekika.com/
個人サイト「Lepton's world」内、「闘わないプログラマ」スタート。
http://www.amy.hi-ho.ne.jp/~lepton/

最近は雑誌の原稿執筆で忙しいのか更新がない、雑文サイト「それだけは聞かんとってくれ」と実は同じなんですよね、開設日。単なる偶然なんですけど。
それはともかく、とりあえず載っていたので一安心、というか、載っていない可能性のほうが高いだろうなあ、と思っていました。ここ、言及されるような特定のコミュニティに属しているわけでもないし、歴史的事件(もちろんインターネットの)に関わったこともないし、地味に長くやっているだけのような気がしますから。

本のほうは風呂に入りながら、興味のありそうなところをぼちぼち読んでいるところです。
とは言うものの実際のところは知らない話が多くて、たとえばインタビューを受けた人たちでも、名前を聞いたことがあるのは「ムーノーローカル」をやっていたrhyme氏くらいで、あとは全然知らなかったりします。
そんなわけで、真っ先に読んだのが、一番興味のあった「雑文→テキスト考」(115ページ)です。ここに、こんなことが書かれています。

初期雑文の代表サイトである「雑文館」(96年3月)の新屋氏や、だじゃれの展開に思わず笑ってしまう「みや千代日記」(96年8月)のみやちょ氏らである。彼らがウェブにもたらしたのは完成された文章の面白さだった。雑文と呼ばれるサイトを一度でも見れば判るはずだが、起承転結を守り、高い文章力で構成された味わいのあるテキスト群は、ウェブに溢れる隙を残した日記や、ニュース記事への無意味なコメントでは味わえない面白さに包まれている。

「起承転結を守り」は、必ずしもそうではない構成のものもあったとは思いますが、それはともかく「完成された文章の面白さ」というところに本質があったと思います。
実は、私のところの原則である「一話完結」「続編は作らない」「日記にはしない」「文字修飾はできるかぎりしない」「内輪受けはしない」は、雑文系サイトの影響を受けたものだったりします。もちろん「原則」はあくまで「原則」ですので、それにのっとっていない場合も多々あるわけでして、その辺の突っ込みはご容赦いただきたいと思うわけでして……。
さて、116ページにはこんなことが書かれています。

98年頃から雑文サイトの中心地が新屋氏の「雑文館」に設置された自動登録型のリンク集「勝手にリンク」(98年)や「オフィスの友」(99年6月)に移っていった頃から、かつてのように「ReadMe!」などからジャンル外の読者が訪れる機会が減り、「雑文界」と呼ばれるような「雑文の読者は雑文の書き手」という内輪的コミュニティになっていったのではないだろうか。

内輪的コミュニティになってしまったのは、必ずしも内輪的なリンク集がメインになって外から訪れる人が減ったことによるものだけでは無いと思うのですが、そのあたりはいろいろな要素が絡み合っていると思いますし、言えないこともありますので、とりあえずはノーコメントということにしておきます。まあ、歴史的必然(大げさ)であったのかも知れません。
とにかく「誰が、いつ、どこからでも読める」「作者の人となりや、過去のいきさつを知らなくても読める」といところに「雑文」のよさであったと思うので、内輪的コミュニティになってしまっているのなら、それはそれで残念だなあ、とも思います。

と、まあほんの2ページほどの内容について、結構だらだらと書いてしまいました。
この本全体の印象としては、月並みな言葉ですが「よくこんなに調べたよなあ」でしょうか。調査すべき史料はかなりのものが残っていて(それもデジタルデータとして)、あとはそれを調べてまとめるという作業になるわけですが、この本を手にして思ったことは、「調査すべき史料が膨大であればあるだけ、その歴史(別に「インターネットの歴史」に限らず)の研究は困難になるのではないか?」ということです。
今から何百年も後の歴史家は、膨大な史料が残っているであろう今のこの時代をどうやって調査し研究するんでしょうか。

などと言いつつ、こうやってここでも未来における歴史研究のための史料を増やしているわけで……あ、こんな駄文、史料にも何にもならないか。

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