新・闘わないプログラマ No.375

古文書発掘


「プログラム言語への招待」(有沢誠著、岩波書店、1984年9月7日発行)という古文書が引越し以来開けてなかったダンボール箱より発掘されました。記憶をたどってみると、学生時代に大学生協で買ったことを思い出しました。本自体は全体的に黄ばんでいたりシミになっていたりしますが、まあ、読むのには支障がなさそうです。一応、アマゾンへのリンクを張っておきますが、さすがにもう新品では買えないようです。
内容は、タイトルからだいたい想像していただけることと思いますが、まあそのとおりの内容です。ちなみに余談ですが、タイトルで「プログラム言語」となっていて、JISなんかでもこの用語を使っていますが、「プログラミング言語」のほうがいいような気がして、私はこっちを使っているのですが、どんなもんなんでしょう。英語では普通“programming language”と書きますよね。
本の表紙は、アンドロメダ星雲(あれ? 最近は「アンドロメダ銀河」と呼ぶほうが一般的なんでしたっけ?)の有名な写真を背景に、プログラムのソースリストが……これがよく見るとBASICだったりします。
さて、では本文は、と見てみると、そこは縦書きの世界。プログラミングの本を、いくら一般向け啓蒙書のような類のものとは言え、縦書きで書くメリットって、何かあったのでしょうか。“FORTRAN”とか“COBOL”という単語が縦書きになっていたり、文中に90度回転させて横書きでソースの一部が書かれていたり、はっきり言って見づらいだけですね、これ。
この本自体、「NEW SCIENCE AGE」とかいうシリーズの1冊だったようで、このシリーズ本の編集方針として「縦書き」というのがあったのかも知れません。それとも、当時はこういう本でも縦書きが当たり前だった? それとも岩波だから? いずれにしても、読みづらいことこの上なしです。

体裁の話はこれくらいにして、言語に関して、どんな言語がどんなふうに紹介されているか、ということだけを拾い読みしてみました……なぜいまさらこんな古い本を読んだかと言うと、もちろんここのネタにするためです。
まず、最初に「マイクロコンピュータのプログラム言語」という章でBASICが取り上げられています。当時はまだ「パソコン(ここでは「マイクロコンピュータ」と呼んでいる)を使う」≒「BASICでプログラミングをする」でした。本文中でも、BASICの文法について、この本では異例の長さで解説しています。著者もそれだけ重要視していたのでしょう。そして、こんなことが書かれています(37ページ)。

BASICを使い慣れ、知り尽くしてくると、BASICに対する不満がでてくる。BASICで十分に書けないことがたまってくるのである。BASICを卒業して、より高度なプログラム言語へ移りたくなる。

そして、著者が「より高度なプログラム言語」として推薦しているのが、

マイクロコンピュータの場合、BASICの次のプログラム言語としては、PASCAL(パスカル)をとりあげるのがよいであろう。

というわけでPASCALでした。当時から、BASICがある程度以上大きなプログラムを作るのにはまったく向かないというのは世間の共通の認識だったのですが、PASCALは次のプログラミング言語として希望の星だったのですね。かく言う私も、当時はPASCALに結構期待をかけていたのですが……結局のところ一度も主流になることがありませんでした。
さて、そのPASCALは「構造化プログラミングとパスカル」という章で取り上げられています。懐かしい言葉ですね、「構造化プログラミング」。あと、その章の本文中で述べられている「GOTO文有害説」。いやあ、本当に懐かしい。

次に「大型コンピュータのプログラム言語」の章。はい、ここで出てきました、COBOL、FORTRAN、PL/I。なんのかんの言っても、PL/Iが廃れてCOBOLがしぶとく生き残っている、というのが現状でしょうか。ここでも著者はPL/IよりはPASCALに将来性があるようなことを言っています。いやまあ、今から見れば五十歩百歩……ん? ちょっと意味合いが違うか。んじゃ、目糞鼻糞……いやいや、そうじゃなくて……。
また、別の章では、Cがシステム記述言語として紹介されています。扱いは非常に小さいです。ここでもPASCALが引き合いに出されています。

最後は「これからのプログラム言語」の章です。まず最初がLISP。この本が書かれた時代においてさえ、LISPは別に新しい言語じゃなかったような気もしますが、LISPにはいつの時代であっても将来性を感じさせるものがあるようです。
その次がAdaですが……いやあのその、ノーコメントということで。
で、その次がPrologですが……ううむ。
で、最後の最後に「オブジェクト・オリエンテドの言語」。おお、これもありましたか。でも扱いは小さく2ページしかありません。まあ、当時としてはこんなものかも知れません。Smalltalkの名前が見えます。C++やJavaは影も形もありません ←あたりまえ。
しかし、オブジェクト指向に関するこんな記述、全然読んだ記憶が無い。

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