新・闘わないプログラマ No.374

文系と理系


よく、人を「文系」「理系」と色分けして「○○さんはさすがに理系だけあって○○が○○だよねえ」とか「オレは文系だから○○が○○でも仕方ないじゃん」などという言い方がよくされます。ここで「文系」「理系」というのは、ほぼ大卒者が対象のようで、その人が文系(と言われている)学部卒か、理系(と言われている)学部卒か、ということによって決まるようです。
これに対して「たかだか大学の4年間で何を学んだか、というそれだけのことで文系・理系に色分けするのはおかしい」という批判もよく耳にするわけです。
とは言え、そもそも大学の学部を選択する段階において、自分が向いていない学部を志望する人は少ないでしょうから、「たかだか大学の4年間で何を学んだか」によって決まるというよりは、それ以前の当人の素質の問題として、文系学部を出た人と理系学部を出た人の全体的な傾向は異なっているはずです。もちろん「全体的な傾向」としてですが。まあ、少なくとも血液型占い(?)よりはまともな分類の仕方ではないか、と。
私は、と言えば、理学部物理学科を出てますから「理系」に分類されるということになります。このことには別に不満があるわけではありません。「理系だから、文章書くの下手でさあ」とか都合のいいこと言って逃げたりしてもいますし。

さて、出典がどこなのかは不明ですが、ここのところ2ちゃんねるなどでたまに見かける嘘ニュース(?)にこんなのがあります(虚偽の内容です、本気にしないでね……念のため)。

【社会】インターネット利用率ついに100%に−総務省の実態調査で判明

先月27日に実施された、インターネット利用に関するアンケートで
インターネットの利用率が100%となっていたことが明らかになった。
麻生総務大臣は「これは政府主導によるIT政策の効果の現れと言っていいだろう」
とのコメントを発表した。

調査したのは、総務省統計局統計センターなど。今年四月に
ネット上でアンケートを実施し、約二万三千人から回答を得た。

この「インターネット利用率ついに100%に」がおかしい、というか誤った結論であることはすぐにわかるわけで、こんなのに騙される人はいない(と思いたい)のですが、でもちょっとでもひねると、たちまち騙される人が続出します。調査するほうすら気づかずに、変な調査をしたり、変な分析をしたりして、明らかに変な結論を大真面目に公表したりしているのをよく見かけます。
いわゆる理系の多くの分野(と文系の一部の分野)において、統計学の知識は必須に近いものがあると思いますが、アホな調査が蔓延して、新聞などでもそれが堂々と報道されているのを見ると、文系・理系関係なく、最低限の統計学の知識などは必要なものなのではないか、などと思ったりします。
そういえば、「反社会学講座」(パオロ・マッツァリーノ著、イースト・プレス刊)に、こんなこと書かれていました(11ページ)。

なお、データの一部分だけを抽出したり、意図的に誤読したりするのは、社会学研究上の重要なテクニックですので、日々研鑽に励まねばなりません。統計学の手法を用い、重回帰分析などのテクニックを使用するのも有効です。学力低下のおかげで、算数の不得意な人が増えたので、たやすく煙に巻くことができます。

ここで著者は、意図的にこういうテクニックを使いましょう、みたいな書き方をしてますけど、これは皮肉も入っているのでしょう。社会学者(文系……ですよね?)の皆さんも、気づかずに統計学の手法を誤用して、大真面目におかしな結論を出している、こともあると。

ええと、今回こんな話を書いたきっかけは、技術関係の入門書の書評を、ある雑誌で読んだからなのです。そこに書かれていたことを要約すると、

そーかい、そーかい、どーせオレの書いたものなんか……といじけてみたりする理学部出身の私だったりするわけです。確かにその本自体は非常にいい内容であると思いました。でも、それと著者が文学部出身であることとは、あまり関係が無いように思えるのですが、どんなもんでしょう。
私がこの間書いた『「ネットワーク技術」勉強会』という本も、正真正銘の入門書です。先の書評の話で言えば「理系の著者の書いた入門書」なので「クズ」という評価になります。しくしく。
ちょっと話はずれますが「初心者の気持ちがわからないので、専門家はわかりやすい入門書・教科書を書くことができない」だから「入門書はその道の専門家では無い、勉強したての人に書かせるべきである」という主張もよく聞きます。私はこれ、昔からこれ、疑問に思っていました。「その対象に対して深く、本質的なことまできちんと理解している専門家なら、初心者にわかりやすくそれを教えることができるはずだ」と。
そんな思いがあって、ああいう本を書いたわけですが、理系というだけでそういう見方もされてしまうんでしょうかねえ。あ、「読んだけどやっぱりクズ本だった」という評価は……いや、あはは。

しかし、完全にとりとめのない文章になってしまったような……。ま、バリバリの理系の私は、書いた文章が下手でもしょうがない、と開き直ってみたり ←そういう問題ではない。

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