新・闘わないプログラマ No.329

古い「情報処理用語事典」を眺めてみる 〜その2〜


先日書いた「古い『情報処理用語事典』を眺めてみる」の続編です。ネタ元は前回と同じ、矢田光治・荒川正人編「情報処理用語事典」(オーム社、1981年発行)です。

ぱらぱらとページをめくってみて目に付いた単語が「データベース」。今回はこれで言ってみましょう、ということで今から20年以上前のデータベースとは…と見てみると(125ページ)、

データベース data base 統合データの集まりを指す. 複数のアプリケーションからアクセス可能な重複のない関連づけられたデータの集合.

だそうです。いまいちよくわからないですね。とは言え、今どきの用語辞典でも大差無い説明のようですから、知らない人へはこれ以上の説明は難しいのでしょう。ここで注目は「data base」と2単語になっている、ということでしょうか。「database」という単語がこの時代にはまだ認知されてなかったのかも知れません。
さて、当時のデータベースと言えば、関係データモデルによるデータベース(要するにRDB)はまだこれからの技術で、階層データモデルに基づくDBMSが主流だったはずなので、と「階層データモデル」とか「階層型データベース」とか「hierarchical data model」とか、そんなのを検索してみたのですが…ありません。あれ? 私の認識に間違いがあったのでしょうか。当時はIBMのIMS DBとか、階層型データベースが花盛りだったはずだったと記憶しているのですが…。
しかし今では、RDBに押されて階層型データベースも見る影も無いですね。いやいや、いわゆる普通に言うDBではRDBばかりですけど、ちょっとそれから離れてみれば、Windowsのレジストリなんてのがありました。あれ階層型データベースですね。意外なところで生き残っていました。

「階層データモデル」が載ってないとしたら、じゃあ「関係データモデル」「関係データベース」はどうなんだろ、と調べてみると、こっちは見つかりました(203ページ)。

リレーショナルデータベース relational data base IBM社のCoddの提案した関係モデルに基づくデータベースで, 数学における関係の概念を応用したものである. 関係データベースともいう.

リレーショナルデータモデル relational data model 1970年, IBM社のCoddにより提案されたデータベースモデルであり, データをそれが記録されている物理的な構造から独立して取り扱うことをねらいとしたものである. 従来のデータベースでは, 論理的データ構造を意識してプログラムをつくったのに比べ, リレーショナルデータベースでは, データ項目の組は集合論でいう関係の概念に従って定義される.

こちらはナゼか載っています。そもそもこの時代、実際に動くRDBMSって何かあったのかなあ、と探してみたところ、「DB2.jp オンライン・セミナー DB2豆知識 RDB & DB2ヒストリー」というページが見つかりました。これを何ページか読み進めてみると、「'80年代、ついにRDBが製品になった」と題して、

1970年代のデータベース研究の成果は、1981年2月にIBMが発表したSQL/Data System (SQL/DS)という製品に結実します。SQL/DSは、IBMの大型コンピュータSystem/370のDOS/VSEというOSの上で動くRDBでした。

ということで、ちょうどこの用語辞典が出版された頃にRDBMSの実際の製品が出たようです。ちなみに私がRDBというものを知ったのはそれから数年後のことでした。
私が最初に触ったのは、メインフレーム上で動くDB2でした。それ以来RDBとも長い付き合いのはずなんですけど、どうも苦手なんですよね。「SQL文を書け」を言われればそれなりには書けますし(←マニュアル見つつ)、「テーブルの正規化をやれ」と言われればそれなりに出来る(←そう思っているだけかも)んですけどね。SQLの妙にCOBOLライクな書き方と言うか、「ON」とか「IN」とか「FOR」とか「INTO」とか「TO」とか「FROM」とか「英語の前置詞の使い方をよく知らないオレをナメてんのか?」と思わせるとことなんかが…。正規化も、これは主キーに関数従属がどうたらこうたらだから第○正規形がどうたらこうたら、とか、いまいちよく解りませんです。
だいたい何で私がRDBとか苦手にしているのか、とよくよく考えてみると、関係データモデル自体が、集合論という数学の一分野をベースにしているからなんですよね(用語事典にも書いてますけど)。私、数学が苦手なんです、というかはっきり言って「嫌い」です。大学で理学部に行っていたのにもかかわらずです…すみません、全く威張れるようなことではありません。
そう言えば、これは以前にも書いたかも知れませんが、その大学に行っていた頃、理論物理(一日中数式をもてあそんでいる ←極論)の教官が「この関数は非常に面白い性質を持っているんですよねー。これをいじり倒してると一日中飽きないですよ」なんて言っていたのを聞いて「人種が違う」と思ったものです。私なんか数式をいじっていると3分でイヤになります(←自慢にならない)。
でも、よくよく考えてみると、実験物理(一日中機械をもてあそんでいる ←極論…じゃないかも)に進んだ私などが、新しい実験装置が入ると一日中それで遊んでいたのと大差なかったのかも。あちらさん(理論物理)は数式が研究の道具なのに対して、こちら(実験物理)は機械が研究の道具なわけで。

あれ? なんでこんな話になっちゃったんだろ? まあ、そんなわけで今も昔も「頭を使う仕事より身体を使う仕事の方が好きな私」というのが、今回の結論でした。

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