新・闘わないプログラマ No.148

なんか違うような気も…


堺屋経済企画庁長官が、例の「IT講習券」に関連して、「IT国民運動の発想と構成(習う側を援けるか、教える方を補助するか)」といういいわけじみた談話を発表していますね。
「習う側を援けるか、教える方を補助するか」って、どうして「習う」とか「教える」とか、そういう方向に行っちゃうんでしょうね。講習会を開けば、それに出席させれば何故かうまく行く、という発想自体がトホホな感じを受けるわけでして。
話は横道に逸れますが、以前、授業中に問題のある言動をする教師に講習を受けさせて再教育することを検討するだか、実施するだか、そういうニュースがあったのを記憶しておりますが、そういう教師はもともとその職業に向いていないんであって、講習を受けたから直る、とかそういう問題じゃないような気もする…それと一緒のように思えるわけです。

日本が「IT後進国」になる危機が迫っている。ITの中核となったインターネットの普及で、米国や北欧はもちろん、アジア諸国に立ち遅れるようになってきたからだ。6月に発表された通信白書では、日本のインターネットの普及率は21.4%、発表25の国の中では13位、台湾、韓国とほぼ同じだが、その後の民間調査では、台湾、韓国、シンガポールは30%以上になり、その差はますます開く傾向にある。

そんなに困ったことかなあ。「インターネット普及率」ってのが正確には何を意味しているのかわからないですけど、別にいいんじゃないの、現時点でのそんなのが低くたって。必要になればみんな使うと思うし。
そもそも、今現在の「インターネット普及率」なるものと、「IT後進国」とやらがどう結びつくのかよく分からない。とりあえず普及率が高ければ「IT先進国」なのかしらん?

インターネットは、それまでのコンピューター利用とはまったく異なる。それまでのパソコンの利用は、主に文書や図面の制作、機器の制御などで、それぞれの場に固定した利用だった。だから、特定の企業や官庁が高級機器を備え優れた技術者を揃えれば、高度な水準に達することができた。

なんか、「コンピュータ」=「パソコン」っていう書き方で、ものすごくトホホな感じなのですが…。
それはともかく「特定の企業や官庁が高級機器を備え優れた技術者を揃えれば、高度な水準に達することができた」って、なんか言っている意味が全然把握できない書き方だなあ。
まあ「いままではコンピュータは専門家だけが使っていれば事足りたが、これからの時代『IT革命』なるものを推進していく上では、そういうわけにはいかない」ってことが言いたいんでしょうけど。

多くの人々が情報発信してこそ、多様で高度なコンテンツ(情報の中味)も生まれるのである。

出た〜。「いんたーねっとで誰もが世界に向けて情報を発信できる」ですか? もうその台詞、かなり古いと思うんですけど。
それとも、そーゆーことをやるのが「IT先進国」なんでしょうか?

インターネットの基礎技能は、「IT時代の読み書き」といわれる。国民の多くが読み書きのできない状況では、新聞も出版も価値が乏しい。契約書も注意書も効力を欠く。高札を読み聞かさねばならないような状況では、正確で複雑な社会関係を築くことも困難だ。

インターネットも同様で、多くの人々がこれを利用する技能が普及してこそ価値が出る。一日も早く「国民皆IT社会」を形成する必要があるのだ。

「インターネットの基礎技能」っていったいなんだろ? そんな必要となるような「基礎技能」ってあったっけ?
まさか、いま時点での、特定のOSにおけるダイヤルアップ接続の仕方、とか、特定のアプリケーションの操作方法なんていうようなことを言っているわけじゃないですよね??
基礎技能って言ったら、やっぱり「読み書き」くらいしか無いような気もするんだけどなあ。特定の環境における操作方法が「インターネットの基礎技能」ってのはいくらなんでも…ねえ。

IT後進国になりかねない日本がIT先進国に飛躍するためには、

(i)どこでもインターネットが使える機器と光ファイバーなど(ハードウェア)の整備

(ii)誰もがインターネットを利用できる基礎技能(ソフトウェア)の普及

(iii)インターネットを便利で楽しくするコンテンツ(情報の中味)の創造

堺屋長官のこの言葉によれば、なんか「インターネット普及率」さえ上がれば「IT先進国」なるものになるらしいのですが、それは置いておいて…。
(i)はまあいいでしょう。特に通信関係のインフラの整備は頑張ってくださいね、というか、変な規制をして普及を妨げないでくださいね、とだけ言っておきます。
(ii)は、教えるとか教わるというか、そういう問題でしょうかねえ。面白ければ、役に立てば、必要に迫られれば、そしてどこでもすぐに使えれば、講習会なんかやらなくたって、みんな使うと思うんですけど。
まあ、そんな中で「インターネットの基礎技能」を強いてあげれば、上にも書きましたけど、「読み書き」じゃないでしょうか。特に「書く」方。
別に、文学的で美しい文章を書く、とかそういうのはどうでもいいのですけど、最低限他人が読んで解るような書き方をして欲しいなあ、と思わせる文章があちらこちらに ←人のことは言えんか…。
あと、「多くの人々が情報発信」なんて堺屋長官は言っていますけど、不特定多数に自分の書いたものを公開しようとした場合に、どんなことは書いてよくて、どんなことは書いてはいけないのか、そして公開した場合にどんな責任が発生するのか。講習会をやるってのなら、そういう方面を重点的にやるべきではないか、などと思うわけです。
世の中には、自分の書いた文章を他で引用されただけで「無断引用された、許せない」と怒り狂う人もいるようですから、まあ、そんなのも含めて…。

インターネットの普及率を上げたいというのなら…それ自体が目的ではないはずなんですが、それは置いておいて…インフラ整備と並んで「(iii)インターネットを便利で楽しくするコンテンツ(情報の中味)の創造」っては重要でしょうね。でも、これは国が何かやらなくたって、民間が勝手にやります。国が出来ることは、変な規制をしない、これだけでしょうかねえ。
ってことで、家庭用ビデオデッキの普及に一役買ったアダルトビデオの例を持ち出すまでもなく、「インターネットではポルノ解禁」というのが、国がやるべき、インターネット普及率を上げる一番の政策なのではないかなどと思うわけで…ご検討下さい > 堺屋長官。
あれ? でも、解禁するも何も、そーゆー方面は、海外からのやつが見放題だそうですから(←伝聞です)、いまさら国内で解禁してもしなくても、合法的にいくらでも見ることができるそうで(←だから、伝聞です)、あまり意味がないかいな?

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