秋の特別展 書信往来 〜志賀直哉との60年〜


 時間がなかったので駆け足で見る。今回はハガキや封書など小さいものが中心なので、いつもより点数が多い。内容も画や書と違ってじっくりと見なければいけなかったのだが、拾い読みになってしまったのが残念だ。

 特別展なので製本されたパンフレットがある(¥200)。その他にいつもと同じく目録があるが、今回は50%増量で6ページ。各書簡には、全集第18巻と『岩波書店版 志賀直哉全集 第12・13巻』の収録番号が振ってある。
 展示品は記念館所蔵のもののほかに、神奈川近代文学館蔵、東京都近代文学博物館蔵、日本近代文学館寄託資料、個人所蔵といろいろなところから集められている。

 展示室には武者小路と志賀の間で交わされたハガキ・手紙が年代順に並べられ、二人の交流のあとをたどることができる。出会ったばかりで遠慮がちに志賀のことを「君」と呼んでいたころ(親しくなるとこれが「兄」になる)、互いの作品を厳しく批評しあった十四日会のころ、壮年期の支援・応援のやりとり、老境にさしかかり健康をいたわり合う手紙と順々に見ていくと、「二人は友達」という感じを実感した。これぐらい長く深くつづく友情を、素直にうらやましいと思った。
 中で興味深かったのは十四日会や『白樺』創刊当初の手紙で、青春期特有の熱のようなものが感じられて好もしかった。また、つい最近阿川弘之の『志賀直哉』(新潮文庫版)を読み終えたばかりだったので、それを下敷きに武者小路が志賀の見舞いに書いた有名な書を見ると、胸にじんとくるものがあった。
 ハガキ・封書のひとつひとつに読み下し文がつけられていたので、スムーズに読むことができた。武者小路はハガキの署名に明治のころから略字(新字体)の「実」を使っていたのに、今回初めて気がついた。書などへの署名には正字(旧字体)「實」を使っていたので(80歳のときに新字体に変更)、てっきりそれ以外の署名も旧字体と思い込んでいたが意外だった。

 公園へは行かなかった。翌日公園の外から見たところ、旧邸のまわりの木々が赤く色づきだしたようだ。武蔵野にも秋が駆け足でやってきた。
友の会会員は会員証を受付に提示すると無料(会期中1回に限り)。

(1997年11月15日見学)




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