昔の実篤公園(大正・昭和編)


 実篤公園の仙川口の近くに「滝坂皇大神宮」という小さなお社がある。これは実篤が住むまでは現在の公園管理棟のあたりにあったらしく、池とあわせてひとつの神域になっていたと聞いている。古来水の湧くところには神が宿ると考えられ人々は神社を祭ったものだが、この神社もそのひとつだと考えられる。
 「滝坂」というのは少し北にある急な坂道のことで(甲州街道の南)、あまりに急な坂のため荷を引く馬が滝のような汗をかくことからそう呼ばれた。「皇大神宮」は伊勢神宮の内宮のことだが、由来によると伊勢神宮を勧進して建てられたもののようだ。今でこそ忘れられそうな小さな神社だが、昔は縁日はたいへん賑わい、大正5年の祭りは盛大に行われて仙川折り返しの臨時電車も出たそうだ。昔から鬱蒼とした森だったらしく、池には主(ぬし)がいるとも大蛇が出るとも言われていたが、子供たちは沢蟹を取ったり泳いだりしていたとのこと。
 お社は今もきれいに清められて守られている。私は仙川へ買い物に行くときによくこの神社の脇を通るが、天気が良いと遠く富士山を望むことができる。公園の木々が葉を落とした冬の澄んだ空気の日が良く見えたと思うが、夕方の景色はそれは美しいものだ。近くにいながら例祭(9月15日)には行ったことがない。今年こそは忘れずに行ってみようと思う。

参考資料:「せんがわ21 特集 せんがわ界隈史」(1993年9月、せんがわまちニティ情報センター)

(2001年7月1日:記)




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