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武者組/おめでたき日々(2003年6月)

(2003年6月)
今月のことば:「100万人のキャンドルナイト」


2003年6月28日

枡野浩一

●午後テレビをぼんやり見ていたら、「課外授業 ようこそ先輩」に枡野浩一という歌人が出ていた。「カンタン短歌」ということで、平易なスタイルの短歌をつくっている人のようだが、「カンタンと言っても、読む人が簡単ということで、作る方は決して簡単ではない」というのが、ちょっと実篤の作風に似ているので気になった(実際、実篤のそれは苦心しての簡単か、天然の部分が多いのかはまだよくわかっていないのだが)。

●予備校時代に自分をはげますために短歌を始めたというのも「!」と思った。実篤にとっての詩や創作も、自分をはげますためのものだったのだ。むしろ文芸のひとつの原型というべきなのかもしれない。

●番組は小学6年生と2日間にわたって短歌をつくっていくものだった。授業は「自己紹介の短歌」に始まり、「友達をはげます短歌」「自分をはげます短歌」「世界をはげます短歌」と進んでいったが、中には私の胸に迫ってくるものもあった。枡野氏も「つくった本人は忘れても、読んだ私やテレビで見た人の中で残っていく」と話していたが、そういう真剣につくった「はげましのことば」は人のこころに残っていくのだろう。それは、実篤の詩が多くの人の心に残っているのと同じように。

●そんな枡野氏の作品に興味を持ったので、図書館で第一短歌集を予約した。ほぼ日の石川啄木本を書いたのも彼のようだが、あの本は私のストライクゾーンぎりぎりだったので(「図書館で借りるだけ」以上、「古本屋で買うのを迷う」未満)、どうなるかちょっと不安&期待。


●劉生で検索していたら、広島県の藤田知事と住建産業(当時)の中本会長の対談がヒットした(「すこぶる対談」環境保全と社会貢献)。それによると岸田劉生の「麗子像(毛糸肩掛せる麗子肖像)」(国内オークション最高額落札)を公開したところ、年間2〜3万人だった入場者が2週間弱で1万人、最終的には約3ヶ月で3万人を超えたとのこと。さすがだ。

●これまたwebを逍遥してたどりついたものだが、よい文章だったのでご紹介しておく。2002年3月19日の熊本日日新聞夕刊に掲載された「ふたりの一枝 父が無言の握手…母への感謝と別れ(古川一枝)」がそれだが、尾崎一雄が亡くなったときの様子を娘である筆者が書いている。幸福な死というものがあるのかどうか知らないが、おだやかな最期のようだった。

●「武者組“あるね”ニュース」発行。

○ [次回展示] 「大原美術館所蔵名品展」(千葉市美術館)

2003年6月21日

●ウッドワン美術館の出開帳、日本橋高島屋と松坂屋美術館が日程未定だったが、決まったようなのでこれから先の展覧会に追加した。東京だと日本橋高島屋だが、会期は約20日(横浜・高島屋もあるが、もっと短い)。混むんだろうなぁと思いつつ、麗子像に思いをはせる。

プロレスラーの大森隆男(と言われても大半の人はわからないと思うが)も実篤が好きらしい。

6月6日のメールニュースで紹介した実篤の新刊『豊かな人生』をオンライン書店で注文して購入。字も大きく、読みやすい。「人生論」を編集したもののようだが、思い切った抜粋になっていて章題をつけるなど、新しい本になっている。こうなると実篤の意図とは違うところも出てくると思うので、せめて編者の名前(発行人のようだ)を入れて、成り立ちや編集の意図を明らかにして欲しいと思った。また、底本は新潮社の『人生論』とあるが、新潮文庫の『人生論・愛について』だろうか。本来なら全集か、オリジナルの岩波新書からとるべきだと思うのだが。
「日向堂」に出品しておくので、よろしければのぞいてほしい。「武者小路実篤(続)」の棚にあり。

2003年6月19日

●実篤記念館から「友の会ニュース第85号」が届いた。昨年度の友の会の決算報告もある。それと、記念館報の「美愛眞第4号」も同封してあった。いろいろな情報があって楽しい。館報は実篤記念館や調布市の施設で入手可能だと思うので、ぜひどうぞ。じつはこの中の写真に、私もちょっとだけ写っています。さて、どこでしょう?

2003年6月14日

岸田麗子「父 岸田劉生」のデジタル版増える

●岸田麗子の「父 岸田劉生」はPDF形式で電子出版されていたが、最近Adobe ebook形式とXMDF形式でも出版されていた。

●Adobe ebook形式はパピレスで販売中(450円)で、Adobe ebook readerか、最新のAdobe Readerを使って読むことになる。

●XMDF形式はNTTドコモのM-stage bookで販売中(こちらも450円)(ノンフィクションのコーナー参照)、ドコモのサービス経由で購入し、PDAかノートPCで読める(ブンコビューワ)。

●電子出版は形式が増えても読者増に直接つながらないのがつらいところだが、多くの人の目に触れて読者が増えることを期待したい。

「電子化された白樺派」も更新。千家元麿の「自分は見た(抄)」も確認していたので、追加しておく。


●2ちゃんねるの文学板で「元祖!武者小路実篤伝説」というスレッドが立っていたのには驚いたが、その中で大仁鉱山跡地に実篤の碑があると書かれていたので、少し調べてみた。詳しくは、「石碑で見る武者小路実篤」参照。

●新しき村の神奈川支部が「武者小路実篤と新しき村展」を開いていたが、6月12日(木)から今日6月14日(土)までだった。会場は鎌倉芸術館(神奈川県鎌倉市)。実篤の書画や著作のほかに、村内・村外会員の作品(油絵・書・陶芸・織物など)を展示するとのこと。新しき村の辻田氏のホームページに案内があったが、これからも注意して見ておきたい。

●「武者組“あるね”ニュース」発行。

○ 実篤記念館「東洋の美」展示解説
○ [白樺発見] 有島武郎「カインの末裔」文学碑建立

●実篤記念館の展示解説(6月21日)は、つつじヶ丘駅にある記念館の掲示板で見つけた(仙川駅前にも同じものがある)。公式ホームページにも告知はなかったし、調布市報でも直前の6月20日号で出るのではないだろうか。せっかくの解説なのだから、もう少し積極的に告知をしても良いのにと思った。

2003年6月10日

●「武者組“あるね”ニュース」発行。

○ [白樺発見] 「世界美術館紀行」ロダン美術館〜巨匠と弟子・愛の造形〜
○ [新刊情報] 「Casa BRUTUS特別編集 柳宗理

2003年6月8日

●三鷹駅南口の実篤記念碑を見てきたので、そのレポートと写真を掲載。

●大原美術館寄託のロダン「或る小さき影」「ゴロツキの首」「ロダン夫人」は、有島記念館の「特別展 有島3兄弟と白樺派の人々」に貸し出し中とのこと。(大原美術館の貸し出し中作品リストによる)。

2003年6月7日

原田宗典「幸福先生」

●これも読者の方から教えていただいたお話。

原田宗典の『笑ってる場合』という本に、「幸福先生」という文章が載っている(単行本は1999年5月、集英社。2002年6月に集英社文庫)。書き出しからして「これも山谷伍兵衛の話。」というのだから、もうずばり実篤のパロディというか、まねなのだが、最後にも丁寧に

もうひとつ余談だが、この文章は武者小路実篤「空想先生」を下敷きにして、原田宗典が勝手気儘に書いたものである。それを知った上でもう一度最初から読み返すと、二度楽しめて大変お得である。

と書いてある。読んでみると、題材やら馬鹿馬鹿しさかげんやら忠実に継承されていて、よくできた文章だと思う。原田氏の実篤好きが伝わってくる、楽しいオマージュだ。


●実篤と徳川夢声は交流はあったのは知っていたが(夢声からの年賀状だったかを実篤記念館で見たことがある)、文庫本の題字まで書いていたとは知らなかった。『夢声戦争日記』(中公文庫、1977頃)がそれで、絶版になっているがケンイチさんのWebページに小さいが実物の画像があった。字の雰囲気から判断するに、たしかに実篤の字のようだ。2001年に『夢声戦争日記抄 敗戦の記』(中公文庫BIBLIO20世紀)として再刊されたが、こちらは表紙が変わっていて、夢声の写真になっている。

●例の角川文庫の『七人の武蔵』だが、ついにと言うべきか回収された本と後日送られてくる訂正本がセットでYahoo!オークションに出ていた。なんと5万円という値がつけられていたが、さすがに入札者はいなかった。好事家は訂正の記事が出た時点で自力で入手しているだろうし、違いといっても実篤作品の有無だけ。需要はないのではないだろうか。

2003年6月6日

●「武者組“あるね”ニュース」発行。

○ [新刊情報] 武者小路実篤『豊かな人生』
○ [新刊情報] 関川夏央『白樺たちの大正』

2003年6月4日

読売新聞による「ロマンの旅−宮崎−」というページに、日向の新しき村の紹介記事が載っていた。しかし記事右上の写真は、どう見ても実篤ではない。その上の文章の若山牧水ではないかと調べてみたら、たしかに牧水だった。沼津市若山牧水記念館のトップページの写真と同じだし、HTMLソースを見ても画像ファイルはbokusui.jpgとなっていた。
●新しき村の記事には、JR高鍋駅より車で30分とあったのは予想できたが、「P:30台」というのはちょっと意外だった。ほんとうにそんなに止められるのだろうか。

「武者組漢字字典」を作成した。「白樺」関連の資料をつくる際に、入力しにくい文字を集めてみた。

2003年6月2日

●今日から日経新聞で「禅宗美術の誕生」(辻惟雄)という連載が始まったが、第1回は牧谿「観音猿鶴図」の猿図。牧谿といえば実篤も愛した画僧だが、東京国立博物館(上野)で明日から開かれる「鎌倉 禅の源流」展(〜7月13日)で展示されるそうだ(この絵は6月15日まで公開)。

●Yahoo!掲示板で、「志賀直哉好きな人集まれ!!」というスレッドがあったが、発言があまり増えていない。

2003年6月1日

●実篤記念館の春の特別展「自伝『或る男』の青春」は今日まで。昨日、雨の中見学に行ったが、いろいろな資料が集められていて、お貞さんの写真の発見あり、「或る男」の原稿発見ありと、盛りだくさんの展示だった。お貞さんの写真は本邦初公開なので、図録だけでもご覧になることをおすすめする。

実篤記念館の公式ホームページが5月27日頃に更新された。今年度の展示予定や旧邸公開日、夏休みまでの講座の案内などが公開されている。

展覧会の予定に、件のゴッホ「農婦像」の巡回展の予定を追加した。まだ詳細は未確認だが、日程がわかっているところだけ記入した。

●今月からこのページの作り方(物理的な方法)を少し変えている。これまでと違わないようチェックしているが、不都合な点があればお教えください。

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