妻が痔の手術を受けました。もう１０年来のおつき合いだったのですが、最近調子が悪くなり、手術を決断したようです。手術とはいっても入院の必要のないごく簡単なものなのですが、やはり手術は手術ですから術後の痛みもあって、しばらくは安静が必要なようです。妻は何をするにもエネルギッシュで、たまにはゆっくり休んだほうがいいよ、とアドバイスすることがよくあったのですが、普段は全然言うことを聞きません（聞けません？）。今回は否応なしに身体を休めないといけなくなってしまいました。

宇宙には、人間が無理を続けていると、そのことを伝えようとしてさまざまなメッセージを届けてくれる知性があるようです。身体的に無理をしていると、身体がだるくなったり、どこかが痛くなったりするでしょう。心理的に無理を続けていると、なんだか理由がよくわからないのに、落ち着かなくなったり不安になったりします。病気とはいえないけれど、理由がわからない心身の不調はとても大切なメッセージです。そのメッセージを無視し続けると、病気になったり事故にあったりして強制的に休みを取らされてしまいます。

身体が疲れたら身体を横たえて休息をとる、心が疲れたら自分の気持ちに無理をせずやりたいことを素直にやる、こんなシンプルなことを多くの人が普通にできれば、世の中の病気と事故はほとんどなくなってしまうでしょう。

でも、なぜか、社会全体がそういうシンプルな考え方から目をそむけているような感じがします。というよりも、多くの人がそんな考え方ではいけない、と考えているように思われます。人生はそんな簡単なものではない、と思いたいのでしょうか。

生きることがつらくなっている方からよく聞く言葉の一つに「難しいですね」というような言葉があります。その方のお話の内容に関してわたしが何かコメントしたり簡単なアドバイスをしたりしたときによく聞く言葉です。でも、本当に「難しい」ことなのでしょうか？

わたし自身の癒しのプロセスが深まっていく中で見えてきた一番大切なことは、この世界はとてもシンプルだ、ということです。必要のないことをあれこれ考えてしまうことで、自分自身がものごとを複雑にしてきたのだ、ということが見えてきました。このことがわかってくるプロセスの中では生みの苦しみとも言える辛い体験もありましたが、それらの辛い体験こそが、もう必要のない複雑さを手放していくために必要だったように思います。

最近、うつをはじめとするさまざまな心理的不調や、理由のよくわからない身体的な不調に苦しんでいる人が増えています。実は、その辛い体験こそが、あなたを人生の次のステップ、今まで想像もしていなかったまったく新しいステップへと導いてくれる大切な道しるべなのです。

今、まさに苦しみの中にいる方にとっては、「そうはいわれてもなぁ」という気持ちがあるかもしれませんね。でも、この文章を読んで下さっているあなたは、どこかで本当のことに気づいているのだと思います。自分の直感を大切にして、今の自分に本当に必要なことは何なのかを感じ取り、それを自分に与えることを少しずつ許していって下さい。

（【まほろば通信】vol.118掲載2007/08/31）