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■「最初の体験」前夜(2)■


もそもわたしが経済学部に進んだのは、別に経済学に興味を持っていたわけでは全然ありません。ただ、文科系にしてはちょっとだけ数学の成績もよかったし(もともと理科系志望でしたから)、実家が商売をしていたので、まあ文学部よりは「潰しがきく」だろう、と考えたからです。

学に入ってから、最初のうちは授業にも出ていましたが、そのうち、わずかのアルバイトをする他は本ばかり読む生活になりました。その本もフロイトやユングといった心理学関係か哲学関係がほとんどです。それは、将来心理的な仕事をしたいと考えていたわけでなく、自分自身はどこかおかしいのではないか、と漠然と考えていたからだと思います。

めてマルクスを読んで「搾取」という概念を知ったときには、ちょっとした感動はありましたが、すぐに「この発想はマルクス自身の生い立ちと関連があるのでは?」なんて、すぐにフロイト的に解釈してしまうような、精神分析かぶれの学生でした。

とのコミュニケーションが苦手で本ばかり読んでいたわたしにとって、卒業時に一般企業へ就職することは選択肢の中になく、現実社会を避けるように大学院に進みました。

科系の大学院まで進んでしまうと、将来は大学の先生しか道はない、と考えていましたから、自分の経済学に関する学力のなさを恥じて、大学院1年のときはがむしゃらに勉強しました。大学院の講議の他、学部の基礎的な講議にまで出席した時期もあったと思います。学部時代に経済学をしっかりやっておかなかった穴埋めをしようとしたのでした。

うすることで、わたしは内面の不安や空虚感からなんとか目をそらし続けていたわけです。でも、そんな状態は長続きしませんでした。最初におかしいなと思ったのは、がむしゃらに食べること。2合のお米を炊いていっきに全部食べてしまうことが毎晩のように続きました。水もがぶ飲みします。今度は、口から食べ物を取り入れることで、不安や空虚感をうめようとし始めたのです。体重がどんどん増え続けました。どこかおかしいな、と感じながら春休みがやってきました。

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Written by Shinsaku Nakano <shinsaku@mahoroba.ne.jp>
Last Update: 2001/01/17