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Etching・Soft-Grand-Etching |
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![]() 銅版にニードルという針で、グランド液で膜を作った上から、絵を描いていくのですが、針の先端を自分の制作に合った鋭さに調整したりします。 ソフトグランドというものもあって、それはべたつく程度の柔らかい膜の上から描いていくので、指紋などが付きやすく、しかしそれをうまく利用して、面白い効果を出したりするのも一種の方法です。ぼくは道具に釘や大工用具、果ては爪楊枝まで使って、できるだけ自由な線を出そうとしました。それも、独学の面白さだと思います。 20世紀初頭のシュールレアリスムという芸術運動には、絵、オブジェ、詩に、自動記述--オートマティスム--という手法があります。意識的制御を極力排し、簡単に言えば、結果的に偶然性を大いに取り入れるわけですが、夢、幻視的な風景を描いたものが一般に分かりやすいのでよく知られています。しかし、もっと抽象的な絵にも、その手法は生きています。 前者にはダリ、エルンスト、ポール・デルボー、マグリットなどがよく知られているかもしれません。 後者にはアンドレ・マッソンなどがいます。ミロは直接関係をあまり持ちたがらなかったようですが、やはり同時代の深いつながりのある画家です。またピカソの一時期、クレーにも感じます。 シュールは後期になって、いろんなかたちで発展したようです。アメリカで生まれた抽象表現主義やヨーロッパのアンフルムの潮流にもそのエッセンスは引き継がれています。フロイトからユングへの関心の移り方にも、無意識、深層意識への関わり方の変化が同時に流れているようです。 また民族的芸術の積極的な掘りおこしなどにも、面白いものがありますね。そんななかでキューバ生まれのウイフレッド・ラムの絵は観た時にかなり惹かれました。彼の絵にはキュビズムの影響もありそうですが、なにか本能的な感じで生まれたようなフォルムですね。もともとピカソのキュビズムには原始美術が生きていました。 このページのエッチングの作品「刻印・飲みほされた夜」は、アーシル・ゴーキーを身近に感じていたころ、描いていたシリーズの1枚。彼の引いた線を見ているだけで、描きたくなる衝動を感じていた頃のエッチングの銅版画です。背景のトーンにはガーゼの生地をソフトグランドで写し取って腐食しました。ゴーキーの作品は、実際には植物などの観察から、そのスケッチしたものから生み出された抽象的、幻視的なイメージが多いのです。その頃、少しですが、ぼくも雑草を観ながらスケッチを描いたりしていましたね。 --------99.9.18記入 |