消費者契約法の概要と問題点 TOPへ index.htm
消費者契約法(平成13年4月1日施行)施行前の契約には適用なし
消費者と事業者との間には、情報量・交渉力に格差があることにかんがみ、(1条)
民法の要件を緩和し、又は具体化し、
1、事業者の不当な勧誘行為によって締結された消費者契約を、消費者が一定の要件の下で取消しうるものとする規定
2、消費者契約における消費者に不当に不利な条項を、無効とする規定
を置く。
適用(2条、12条)
消費者と事業者間で締結される契約すべて(労働契約は除く)
「消費者」=事業として又は事業のために契約当事者となる場合を除く「個人」
「事業者」=法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約当事者となる場合における個人
事業性(一定の目的をもち同種の反復継続行為)が問題(メルクマール)となる。消費者契約法の適用の有無。
問題となる契約「特約店・代理店加盟契約」「内職契約」「内職商法」「マルチ商法」など。
「特約店・代理店加盟契約」多くが開業準備行為にあたり、消費者契約法の適用の有無で問題となる。
1条の趣旨より、初めて開業するような場合は、消費者にあたるとし、適用を認めるべきか。
「内職契約」「内職商法」多くが労働契約にはならないであろう。また事業性なしとして、多くの場合、適用は認められる。
「マルチ商法」連鎖販売取引で、初めて勧誘を受けるような個人については、適用を認めるべき。統括者、勧誘者の立場の者は、事業性が認められる。
取消すことができる契約(4条)
誤信・誤認型(不実の告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知)と困惑型(不退去、退去妨害)
事業者が勧誘するに際し(以下すべてにかかる)、
<不実の告知> 要件
1、事実と異なることを告げること
2、告げられる対象が「重要事項」であること
3、内容が事実であると消費者が「誤信」すること
4、その誤信と意思表示との間に因果関係があること
民法の詐欺との相違。故意が要件とされていない。
問題点。重要事項とは(4条4項)。内閣府(旧経済企画庁)の消費者契約法の解説では、ある程度限定的。
限定的にとらえすぎると、消費者契約法の適用範囲を不当に狭めることとなり、消費者保護に欠けることとなる。
ただし、商売はある程度の「はったり」はあるもので、消費者もまったく馬鹿ではないのだから、常識的に「うそ」と分かる範囲まで広げる必要はない。クレーマー対策。
特に動機が問題となる。
例えば、「シロアリがいる」(うそ)と言われ、それの駆除の契約を結んだ場合。
例えば、霊感商法で、「たたりがある」と言われ、「この銅像を購入し拝めばたたりから逃れられる」として、銅像の売買契約を結んだ場合、この規定により取消すことができるか。
<断定的判断の提供>要件
1、将来における変動が不確実な事項について、断定的判断を提供すること
2、内容が確実であると消費者が誤信すること
3、その誤信と意思表示との間に因果関係があること
金銭的・財産的なものに限るか(4条1項2号)。内閣府(旧経済企画庁)の消費者契約法の解説では、限定的に捉えている。金銭的・財産的なものに限るとすると、「3ヶ月で5キロ痩せる」「必ず偏差値があがる」などの場合、この規定では取消すことができなくなる。ただし、(うそであれば)不実告知の規定で取消すことができるとも考えられる。商売上の許される範囲の「はったり」かどうか。通常、消費者が誤解しない範囲かどうか。が問題か。
<不利益事実の不告知>要件
1、消費者に利益となる旨を告げ、かつ消費者の不利益となる事実を「故意に」告げないこと
2、利益告知の対象となる事項は重要事項又は重要事項に関連する事項であること、不利益秘匿の対象は「重要事項」であること
3、その不利益事実が存在しないと消費者が誤信すること
4、その消費者の誤信と意思表示との間に因果関係があること
5、事業者による不利益事実の告知を消費者が拒んだ場合でないこと
「故意」が要件となっており、立証の困難が指摘される。
<不退去>要件
1、消費者がその住居又は業務を行っている場所から退去すべき旨の意思表示をしたこと
2、それにもかかわらず事業者が退去しないこと
3、それにより消費者が困惑したこと
4、消費者の困惑と意思表示との間に因果関係があること
証明の困難さ。「意思表示」「困惑」の程度は、広く解する。
退去すべき旨の意思表示は、「時間がありませんので」「いらない」「手振り身振り」含む(旧経済企画庁)。
<退去妨害>要件
1、契約締結の勧誘している場所から消費者が退去する旨の意思表示をしたこと
2、それにもかかわらず消費者を退去させないこと
3、それにより消費者が困惑したこと
4、消費者の困惑と意思表示との間に因果関係があること
5条(媒介の委託を受けた第三者及び代理人)
例えば、販売店(クレジット会社の加盟店)がおこなったクレジット契約につき、販売店が上記取消事由にあたる行為をして、クレジット契約を結ばせた場合、クレジット契約の取消しができる。割賦販売法の「抗弁権の接続」では困難であった、既払い金の返還が、クレジット契約自体を取消せば、可能となる。
参考)泣く連帯保証人の問題 「日本裁判官ネットワーク」よりhttp://www.dab.hi-ho.ne.jp/judge-net/(オピニオン)―債権者と保証人との間の保証契約の締結に、主債務者が間に入っておこなった場合
(消費者契約法は、裁判となった場合、立証の点で問題があり、一般的には、他の特別法−割賦販売法、特定商取引に関する法律、金融商品販売法など−で対処(クーリングオフなど)できるものは、それを優先させた方がよい)
契約条項の無効
<不当条項の無効> 8条
1、債務不履行、不法行為、瑕疵担保による損害賠償責任を「全部」免除する条項(無効)
2、事業者の故意又は重過失による債務不履行、不法行為の損害賠償責任を「一部」免除する条項(無効)
ただし、瑕疵担保責任について、事業者が交換又は修理の責任を負う場合、または事業者があらかじめ締結された第三者との間の契約で、消費者のために、その第三者が賠償、交換、修理の責任を負うとされている場合には、事業者の損害賠償責任を免除する条項があっても無効とはならない。
<消費者の損害賠償額の予定条項の無効> 9条
1、契約解除に伴う損害賠償額の予定や違約金の条項であって、解除の事由や時期等の区分に応じて同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生じる「平均的損害額」を超える部分(無効)(9条1号)
平均的損害額とは。その契約の解除による実際の損害ではなく、そういう契約(契約の種類、解除の時期、代替可能性等、諸事情を考慮し)であれば生じるであろう平均値。
売買契約の2日後に消費者が契約を解除した場合には、事業者に現実に損害が生じているとは認められないから、約定違約金の請求は、消費者契約法により許されない(大阪地裁平成14年7月19日、中古車販売につき)。逸失利益を認めなかった。
学則等における前納学納金不返還特約につき消費者契約法9条1号を適用し無効とした事例(京都地裁平成15年7月16日)。(大学、専門学校は戦々恐々)
損害につき、事業者側に立証責任を負わせている。事業者側が、通常、この契約であれば、これぐらいの損害が生じるんだということを立証しなければならない。
2、履行遅滞の場合の賠償額について履行時期に本来支払われるべき金額に14・6%をかけた金額を超える金額の賠償額を予定し、あるいは違約金を定める条項。超える部分が無効。(9条2号)
ただし、金銭を目的とする消費貸借上の債務不履行による賠償額の予定については、利息制限法に規定があり、それが優先されると思われます。risoku.htm
消費者契約の申し込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる(11条2項)。
そういえば、住宅ローンの抵当権設定で、保証委託の場合の損害金がこの14・6%以内になっており(前はもう少し高いケースもあったような)、また、住宅ローンの金銭消費貸借で、利息制限法が優先して適用される場合でもこの14・6%以内になっている(前の14・6%超える損害金が記載された抵当権設定契約書を使っている場合はわざわざ訂正してその契約書を使っていたりする)。
<消費者の利益を一方的に害する条項の無効> 10条
敷引き特約は無効(大阪簡易裁判所 平成15年10月17日)。ただし、この判決は、敷引き特約が一般的に無効と言ったのではなく、当該事案(入居期間約6ヶ月など)については、無効と判断している。(一般的に無効とされると関西は影響大―大家さんは、むっちゃ困る)
関西方面では、関東方面のように礼金・権利金がなく、(そのかわり?)敷引き特約というものが慣例となっている。ただ、最近は、敷金自体の額が下がっているため借主にとって敷引き額が多く感じられるようでトラブルとなっているケースもある。裁判では、一応、敷引き特約は当事者間の合意であり、慣例ともなっているので、それは尊重しつつ、特に不合理な事例については個別に判断されることになる。判例の傾向としては、敷引きの根拠がはっきりしていないため、敷引きを認めない(もしくは合意した額より減額したもののみ認める)という大家にとって厳しい傾向にある。