類似商号と目的の適格性―会社設立の際の注意点1

会社の設立登記を申請したが、類似商号にあたる会社が存在したとか、目的について適格性がないと判断されたという場合、その商号もしくは目的等を変更しないと会社の設立ができないということになります。株式会社や有限会社の場合は、もう一度定款認証からやり直さなければならなくなったり、また会社の届出印を作り直すとか手続面、費用面で負担を強いられることになります。

したがって、会社設立にあたっては、商号・目的・本店を決定すれば、まず類似商号の調査をし、目的の適格性を確認する必要があります。

<類似商号>

他人がすでに登記している商号(類似含む)は、同一市町村(東京都の特別区、政令指定都市にあっては各区)内において、同一営業目的のために使用することができません。したがって、このような商号は登記をすることができず、会社の設立ができなくなります。

会社の商号が決ったら、本店の所在場所を管轄している法務局で、類似商号に該当する会社がないかどうか確認する必要があります。類似商号調査簿というものがあり、それを見て調べます(無料)。

類似の程度は、一般の人がぱっとみて(もしくは読みでも)、同じ会社かなと判断してしまうような商号と考えて下さい。(「徳山信用販売」と「徳山百貨信用販売」、「青森建設」と「青森建材」、「セブンシャツ」と「セブン」、「マキシム」と「東京マキシム」などは類似商号となります)

会社の目的がまったく異なる場合は、似たような商号でも類似商号にはあたりませんが、一部でも重なる部分があれば類似商号にあたります。

政令指定都市(例えば大阪市や神戸市)であれば、区内で類似商号にあたる会社がないがどうか調べることになります。

また、会社の種類等には関係がありませんので、株式会社、有限会社、合名会社、合資会社、外国会社、商号登記すべて調べる必要があります(株式会社酒井と、酒井有限会社や酒井合資会社は類似です)。

(ちなみに、中小企業等協同組合法に基づく組合、中間法人などは、同種の法人内で類似名称の制限があります)

通常、類似商号調査簿は、あいうえお順に並んでいますので、一般的な言葉、例えば「日本」「新」「第一」など(地域によっては、「東京」「関西」「阪神」「大阪」「神戸」など)を頭につけた商号と類似にならないかも考慮する必要があります。

(コンピュータ化されている法務局では、きちんと、あいうえお順に並んでおり、類似商号調査はやり易いのですが、「更新分」も見る必要があります)

似たような商号を発見した場合は、法務局で相談して下さい。

旧 注)商号は、日本文字(かな・カタカナ・漢字)であると外国文字(アルファベット)であるとを問わず認められますが、外国文字そのものは登記できませんので、日本文字(カタカナ)をもって表示することになります。また、外国文字を用いた商号に、中点の使用は認められます。例えば、株式会社 Friday・Houseの場合、登記での表示は、株式会社 フライデイ・ハウスとなります。ただし、平成14年11月1日から、この点は、改正されます。

(商号に漢字や平仮名をもちいた場合についても、誤読等を防ぐため、補助的符号として中点「・」の使用は登記上可能)

平成14年11月1日より、商号の登記にローマ字その他の符号(アラビヤ数字など)の使用が可能になりました。

今後、類似商号調査では、ローマ字会社にも注意が必要となります。例えば「AOI」と、「エイオーアイ」「あおい」や、「ITO」と「伊藤」は類似とされる可能性があります。

<目的の適格性>

目的も類似商号を区別する基準となりますので、他の目的と区別できるという基準が加わってきます。

したがって、会社の目的については、「明確性」「具体性」が要求されます。

また、他に「営利性」「適法性」も要求されます。

例えば、営利性のない「社会福祉への出費」などの目的は登記することができません。

弁護士や税理士などの一定の資格を有する者に限って、業とすることができる事業は、適法性がないとされます。

明確性や具体性については、一般の人がみて、どのような事業であるのかが、ある程度明確にわかるように定める必要があるということです。どの程度表現すればいいのかは、判断がむずかしく、微妙なものは最終的には「登記官の判断」ということになります。したがって、事前に法務局で相談することになります。以前は認められなかったものでも、時代の流れで認められるようになる場合もあります。

例えば、「情報の収集、販売」という目的は、なんの情報かわからないから具体性がないとされ、「各種情報の収集、販売」ということであれば、さまざまな情報を対象としているのだなとわかるので具体性ありとされたりします。「デザート」という言葉なども具体性・明確性なしとされ、「ゼリー、アイスクリーム、コーヒー、洋菓子」と具体的に表現する必要があります。原則、一般の人がわからないような専門用語や、企業が名づけた特定の商品名を用いることはできません。また、「温暖化ガス排出権」のように比較的新しい用語については、法務局との相談が必要になります。

例えば、「日用品雑貨」というものは、あまり具体性がない言葉ですが、「日用品雑貨の販売」という目的は、世の中に雑貨店というものがあり、一般的にイメージできますので、OKとなります。しかし「日用品雑貨の製造」というのは、なぜか具体性なしとされていました。「販売」がOKなのになぜ「製造」が×か?というと、おそらく、「販売」については、いろいろな商品を仕入れ、売ることができるので、日用品雑貨という具体性に欠けるものも、広く認めざるを得ないが、「製造」の場合は、何を作っているかということは、ある程度特定が可能であろうという考えからきているのだと思われます(他の製造業との区別のため)。できるだけ具体的にしてほしいが、広く一般的にならざるを得ないものは認められるということです。ただし、現在では「日用品雑貨の製造」もOKとなっているようです(法務局により異なります)。その他 sonota.htm

(ある語句の明確性の判断については、通常の国語辞典や現代用語辞典に説明がされている場合は、原則としてその語句は明確性があるとされます。登記官も「現代用語の基礎知識」などをみているようです。ただ、「OA」「TV」などのような外国文字の使用は相当でないとされています)

大阪市内での設立であれば「商都大阪の会社の目的OK事例集」(日本加除出版)という書籍があり、これを登記官がみていますので、この中に記載された目的であれば、ほぼまちがいなくOKとなります。

目的の適格性については、段々、緩和されているように思われます。

また、ある事業(目的)で、許認可を受けてする場合、許認可申請との関係も考慮する必要があります。

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