土地の境界について TOPへindex.htm

土地の境界というものは、非常にわかりにくいものである。それは、まず、土地というものは、つながっており「ここからここまでが私の土地だ」といえる明確な根拠・目印がない場合があるという点。さらに、制度的に土地の境界と言った場合、2つの意味があり、「所有権の範囲を示すものとしての境界」「地番の境を示すものとしての境界」があるという点である。

司法書士試験の受験時代に、試験勉強の中で、「境界確定訴訟」というものが出てきて、さっぱり理解できなかったのを思い出す。「これは特殊な訴訟で、土地の境界争いがあり、裁判で境界を確定するのだが、当事者で合意(和解)をして勝手に境界を決めることはできない。絶対的な公的な境界があり、それを裁判所が公的機関として確認するのである」というふうな説明で、「絶対的な境界?」「争いを解決できればいいのだから、当事者が納得すれば、そこが境界でいいじゃないか」という印象で、この「絶対的な公的な境界」というものがどういうことなのかさっぱりわからなかった。「ここからここまでが私の土地だ」という所有の範囲としての境界しかイメージできなかったためである。

実は、境界には、「地番の境としての境界」の意味があり、登記上、特定されているのは、この境界のことである。

明治時代、地租改正の際、全国の土地について、所有・境界・地積を明らかにし、地番をつけた。この作業は、国民の側で申請するという形をとったため、不正確さが生じることになるが、所有と一致するように土地を区分し、そして地番で特定した。ここで、地番で特定された土地の境界というものができ、これが、公的な絶対的な境界とされたのである。しかし、これが実はあいまいで、その時に境界標の設置を義務づけたわけでもなく、境界標があっても、その後なくなってわからなくなったり、きっちとした正確な図面が作られたわけでもない。現在、これを示す図面として公図(旧土地台帳付属地図)というものが残っているが、距離や面積の点で、あまり信用性がないといわれている。

そして、これは所有に基づいて、区分したので、「所有の範囲としての境界」と「地番の境としての境界」は一致していたはずである。しかし長い年月が経ち、それがかならずしも一致しない状況が生じる。

例えば、隣接する40番の土地と41番の土地があり、それぞれ甲さんと乙さんが所有していたとする。境界があいまいなため、甲さんの相続人である丙さんが、知らずに乙さんの土地(41番)に割り込んで家屋を建ててしまった、その状態で10年以上が経過したので、取得時効の成立により41番の土地の一部が丙さん側の所有となってしまった。こうなると「所有の範囲としての境界」と「地番の境としての境界」は一致しなくなる。一致させるためには、41番の土地の丙さん側所有の部分を分筆・所有権移転登記をし、そして、40番の土地と合筆すれば、一致するということになるが、もともと40番と41番の土地の境界があいまいなため、丙さんとしては実際は割り込んでいても「もともと40番の土地の境界はここだ」ということになってしまい、問題が複雑となる。

・「地番の境を示すものとしての境界」

客観的に存在しており、私人が勝手に動かせないもの。絶対的な公的な境界。

明治時代、地租改正の際、全国の土地を検査・測量し、所有者を確定し人為的に区画した。そして、この区画ごとに「地番」という番号をつけ特定した。これが、登記簿上の地番である。この検査・測量は、国民の手に委ねたため、測量技術の稚拙さや、課税を少しでものがれるため過少申請されるケースもあり、正確さにかなり欠けることとなる。図面の作成もずさんで、広く測量し、そしてその中を細かく測量し、作成するという方法をとらず、一筆ずつの図面作成であるため、つないでいくとどうしても合わなくなり、無理にくっつけてしまうということもあったそうである。この図面は、現在、公図(旧土地台帳付属地図)ということで受け継がれているが、距離・面積の点であまり信用できないものである(形状はかなり正確ということだが)。

境界争いの多くは、「地番の境を示すものとしての境界」がどこなのか(それは多くの場合、「所有権の範囲を示すものとしての境界」と一致する)ということで争われる。それは客観的に存在するものであり、公図や登記簿、使用形態、地形、人の記憶などが判断資料となる。「境界確定訴訟」というのはこの境界を確認するためのものである。

・「所有権の範囲を示すものとしての境界」

当事者が納得すれば、自由に決めることができる。境界争いがあっても、当事者で納得し合意をすれば、一応争いは解決するが、それで合意された境界は、あくまでも所有権の範囲を示すものとしての境界であり、「地番の境を示すものとしての境界」と異なっている場合は、原則、登記簿上の手当として、分筆・移転・合筆などの登記を要する。

時効取得などを主張する場合は、「所有権の範囲を示すものとしての境界」の争いということになる。

・「公図」(旧土地台帳付属地図)zumennmemo.htm

公図というのは、土地に対する税金の課税台帳であった土地台帳の付属地図として、登記所に備えられているもの。明治時代、地租改正のために作成された。公的な図面として貴重なものであるが、精度は高くなく、距離や面積は不正確といわれている。

・「地積測量図」

土地の分筆登記などをする際、作成されるもの。

土地の分筆登記する場合、現在では、永続性のある石標や金属標などを基準として距離や角度等の位置関係を明らかにするとされているため、分筆によって作られた地籍測量図はかなり正確だといえる。(昭和52年以降)。

参考)図面(メモ) zumennmemo.htm