株式譲渡制限の設定と株券の発行の定め廃止・募集株式の発行(新株発行)・特例有限会社から株式会社への移行
(メモ)
株式譲渡制限の設定と株券の発行の定め廃止
公開会社(譲渡制限の付かない株式を発行できる会社)から非公開会社(譲渡制限付株式しか発行できない会社)へ移行するメリット
役員の任期伸長
取締役会・監査役を非設置にすることができる
監査役の権限を会計のみに限定できる
事業報告の内容
など
昭和41年の商法改正で譲渡制限可能になった
それ以前の株式会社については、譲渡制限はない
<株式譲渡制限の設定> 公開会社 → 非公開会社
@ 株主総会の特殊決議(309条3項1号)→ 定款変更
A 効力発生日の20日前までにする株主・新株予約権者への通知 又は代用公告
(116条・118条) → 買取請求権の確保
通知をする場合、株主総会の召集通知といっしょに兼ねてすれば便利か → ただし、20日前までにする必要がある
* 株主総会の招集通知は、原則、2週間前までに発する(例外 1週間など)299条
公告は定款所定のもの
B 効力発生日の1ヶ月前までにする株主・登録株式質権者に対する株券提供公告及び通知
(219条)→ 株券の回収、譲渡制限の記載
株式の全部について株券を発行していない場合は、この手続きBは不要
添付書類
@ → 株主総会議事録
A → 手続きとしては必要だが、登記の添付書類にはなっていない
B → 登記には、株券提供公告をしたことを証する書面添付
株券を発行していない場合は不要
株券を発行していない会社とは?
株券を発行する旨の定めのない会社 → 登記簿上から判明
(株券を発行する旨の定めのない会社の場合は、登記簿上から株券不発行が判明するので、株主名簿は不要)
株券を発行する旨の定めはあるけれども実際、株券を発行していない会社
株主から株券不所持の申し出を受け発行していない場合 → 登記には株主名簿添付
非公開会社で、発行していない場合(株主から請求があるまで発行しなくてもよい)
→ 登記には株主名簿添付
旧商法時代は、新株予約権が発行されている会社や、新株引受権・新株引受権付社債・転換社債が発行されている会社は、譲渡制限を付けることができなかった。
新株予約権については、買取請求が認められ、新株予約権が発行されている場合でも譲渡制限を付けることが可能になった(旧商法の時の新株予約権も新法の新株予約権と同様)。
しかし、新株引受権・新株引受権付社債・転換社債が発行されている会社は、新法での手当てはなく、従前の例によるということで、譲渡制限を設けることはできない(新株引受権付社債が発行されている会社で、このままでは株式譲渡制限を設けることができないので、譲渡制限を設けるために、その新株引受権を放棄・新株引受権付社債の登記を抹消した上、譲渡制限の登記をしたことがあります)。
なお、逆に、株式譲渡制限の規定を廃止し、非公開会社 → 公開会社 になる場合(株主総会の特別決議で定款変更)は、取締役・監査役の任期が満了する点に注意。
<株券廃止> − 株券を発行する旨の定めの廃止
@ 株主総会の特別決議(309条2項11号)→ 定款変更
A 効力発生日の2週間前までにする株主・登録株式質権者に対する株券廃止公告及び通知
株式の全部について株券を発行していない場合は、公告又は通知どちらかで足りる
添付書類
@ → 株主総会議事録
A → 登記には、株券廃止公告をしたことを証する書面添付
株券を発行していない場合、手続きとしては、公告又は通知どちらか必要であるが、登記の添付書類としては不要
株券を発行する旨の定めのない会社 → 登記簿上から判明
株券を発行する旨の定めはあるけれども実際、株券を発行していない会社
株主から株券不所持の申し出を受け発行していない場合 → 登記には株主名簿添付
非公開会社で、発行していない場合(株主から請求があるまで発行しなくてもよい)
→ 登記には株主名簿添付
添付書類(注意点)
通知及び公告が必要 → 公告をしたことを証する書面
通知又は公告が必要 → 通知をしたことを証する書面・公告をしたことを証する書面は、
添付書類とはされていない
株券提供公告をしたことを証する書面 → 株券を発行していない場合不要
株券不所持申出・非公開会社で株主から請求があるまで未発行215条3項
→ 株主名簿を添付
株券廃止公告をしたことを証する書面 → 同様
株主総会の決議と他の手続きとの先後関係は自由
先に通知や公告を済ませておいて、株主総会決議で効力を発生させることができる。
@株券の発行の定め廃止とA株式譲渡制限の設定を並行して行うメリット
実際に株券を発行している会社については、株券を廃止して、株券を発行していないという前提で、株式譲渡制限の設定をすることとなり、株式譲渡制限設定の手続きにつき、株券提供公告及び通知が不要となる → 株券提供公告をしたことを証する書面は不要・株主名簿も不要
例)事例
実際に株券を発行している会社
株式譲渡制限の定め設定と株券は発行する旨の定め廃止を同時にする → 株券提供公告(及び通知)が不要となる。
2月1日
臨時株主総会開催のため、基準日公告
2月13日
定款所定の官報公告
株券廃止公告 → 2週間前までに
譲渡制限設定の代用公告 → 20日前までに
2月19日
召集通知 → 株券廃止通知を兼ねる
3月6日
株主総会 第1号議案 株券廃止 第2号議案 株式譲渡制限設定
効力発生
募集株式の発行(新株発行)
<非公開会社><特例有限会社>を中心に
非公開会社(譲渡制限付株式しか発行できない会社)
特例有限会社は、非公開会社である
1、第三者割当
(1)
募集事項の決定
非公開会社 → 株主総会の特別決議(199条2項 → 309条)
譲渡制限のある株式会社の第三者割当、旧商法と同様に株主総会で募集事項を決議
募集株式の数の上限、払い込み金額の下限を定めた上、取締役の過半数の一致(又は取締役会設置会社にあっては取締役会)へ委任可能
割当先の決定(割当て決議) → 後記(3)
非公開会社 → 株主総会の特別決議(204条2項 → 309条)
ただし、取締役会設置会社にあっては、取締役の決議。なお、定款による別段の定め可能
募集事項の決定機関と割当先の決定機関が同じ場合、割当先の決定を、申込がなされることを条件にして、募集事項の決定と同一の機会に決議することができる。
* 公開会社 → 取締役会。ただし、有利発行の場合、株主総会の特別決議
(割当先の決定は、代表者)
(2)
株主に対する通知又は公告(不要)
非公開会社 → 払込期日の2週間前の株主への通知又は公告については不要
→ 2週間あける必要がない
* 公開会社が取締役会決議により募集事項を定めた場合は、払込期日の2週間前までに、株主に対して募集事項の通知又は公告をする。
したがって、募集事項の決定の日から払込期日までの間は少なくても2週間必要 → 総株主の同意による期間短縮可能
(3)
申込、割当て
株式を申込しようとする者に対し、募集事項等を通知
申込
割当て決議
割当て決議は、募集事項の決定の際、申込がなされることを条件にして、同時に決議できる。ただし、決定機関が同一の場合。したがって、取締役会設置会社においては、原則、別機関になるので、同時に決議はできない。
払込期日の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければならない(割当て通知)。
205条
総数引受けとは、特定人が会社との契約によって募集にかかる株式の総数を包括的に引き受ける方式であり、特定人は複数であってもよい。
総数引受の契約による場合、申込、割当ての手続きが不要となる。→ 決議日=払込期日にすることが可能
申込、割当の手続きをする場合
もし、取締役会設置会社の場合、募集事項の決定と割当決議を別々にしなければならない
通知 → 申込 → 割当決議 → 割当 → 払込期日の前までに通知
総数引受の場合、これらがすべて省略できる。
なんと、1日で募集株式の手続きが可能となる。
総数引受契約書が必要
例えば、
平成19年9月5日、株主総会決議
平成19年9月5日、払込期日
平成19年9月5日、総数引受契約
平成19年9月5日、払い込み完了
平成19年9月5日、登記申請
基本的な添付書類
・株主総会議事録
・申込を証する書面 (もしくは募集株式総数引受契約書)
・払込があったことを証する書面
会社名義の預金口座への振込みにより、その通帳のコピーと証明文書を合綴したものでよい。発起設立の場合と同様。
・資本金の額の計上に関する証明書
設立の場合と異なり必ず必要。株式会社の設立では現物出資の場合を除き、不要となっている。
・委任状
募集事項の通知と申込が添付書類上、切り離された
旧商法と異なり、申込書(申込を証する書面)に募集事項等の記載が不要となり、申込書が簡単なものとなった
2、株主割当
(1)
募集事項の決定
非公開会社 → 株主総会の特別決議
ただし、定款の定めにより取締役会(取締役の過半数の一致)にすることができる。
会社法施行前から存在する非公開会社については、経過措置として、定款に、株主に株式の割当てを受ける権利を与えてする募集株式の発行を取締役会の決議によりすることができる旨の定めがあるものとみなされている(整備法76条3項)
* 公開会社 → 取締役会
基準日(割当日)は設定してもしなくてもよい。
株主割当の募集事項を定めたときは、申込期日の2週間前までに、失権予告付催告をする。→ 総株主の同意による期間短縮可能
募集事項の決定の日と申込期日との間に2週間の期間が必要、もしくは総株主の同意書を添付
Q&A(大阪司法書士会)
非公開会社の場合、株主総会決議から払込期日まで2週間以上あける必要はあるのか。
必要はない。ただし、公開会社の場合は必要。
また、非公開会社であっても株主割当の場合は、申込期日の2週間前までに株主に通知することを要する。
基本的な添付書類
株主総会議事録(定款の添付不要)
申込を証する書面
払込があったことを証する書面
資本金の額の計上に関する証明書
委任状
会社の設立が会社法施行日の前後いずれであるかにかかわらず、公開会社でない会社で、募集事項を株主総会で決議した会社は、定款の添付を要しない。ただし、施行前から存する会社で定款に決議機関を株主総会とする定めを設けていなかったものが株主総会で募集事項を決議したときは、瑕疵ある決議(本来、取締役会で決議しなければならないのにそうしなかった)となるので注意が必要。
株主割当の場合で、定款に取締役会となっている場合(みなされている場合、含む)
取締役会議事録 + 定款(みなされている場合も定款の添付が必要)
申込を証する書面
払込があったことを証する書面
資本金の額の計上に関する証明書
委任状
旧商法の時の新株発行 sinnkabu.htm
特例有限会社から株式会社への移行
株主総会の特別決議
登記によって効力が生じる。
移行の効力発生日(登記日)に役員、発行可能株式総数、発行済株式数、資本金、解散事由など登記事項に変更が生じた場合、変更後の登記事項を設立登記として直接記載することができる。
<事例>
移行と同時に、増資と取締役の辞任の登記をした。
同時にするため、変更日を登記日にする必要がある。
払込期日を、移行する日、すなわち登記日にする必要がある。当社が株式会社に移行する日(平成 年 月 日)など
工夫する必要がある。
印鑑届出が必要となるので、代表者の印鑑証明書は必要
株式会社としての印鑑カードがあらたに交付される。
役員の任期に注意
株式会社へ移行すると、役員につき、任期の規定が適用されるようになる。
任期の規定が適用された結果、すでに任期が満了している場合は、移行時に任期満了となる。
すべての取締役・監査役の就任年月日は、登記官の職権で登記される。変更時に退任しない場合は、その就任年月日(会社成立時の役員については会社設立日)を移記し、変更の際、就任した場合は、その就任日(商号変更の年月日)を記録する。
TOP index.htm