2003年1月前半
1月 1日(水)  
明けましておめでとうニャアー。本年もよろしくニャアー。やはりきのうの夜は大変だったな。ニャアー、ニャアー鳴くし、そこいらじゅう歩き回わるし、YとK代のフトンの上をウロウロするし。Yもゆっくり寝られなかったろう。ワタシもおかげで便秘になったよ。でもけっこう順応性があるんだな。午後にはウンチが出たよ。おっ、お正月用の甘エビがでたな。甘くて、おいしいよ。でも、タコがないな。なんだ、ここでもカンヅメは食べるのか。あーあ、今年もカンヅメで始まったよ。
2日(木)
YもK代もワタシの仕事ぶりにビックリしただろうな。なにしろ夜中じゅう部屋の中を動き回わって、ニャアーニャアー、鳴くんだからな。そうだよ、みんなが寝ているときに活動しているんだよ。やはりいっしょに生活してみないと、わからないもんなんだよ。だから、昼間は疲れて寝ているんだな。YとK代も昼は寝て、夜活動するようにすれば、ワタシと同じリズムになるんだけどな。
3日(金)
どうも冷え込むと思ったら、お昼から粉雪が降ってきたな。店にくらべると、この部屋は少し寒いな。でも、YとK代のふとんの上で寝ると、フカフカして、気持ちいいんだな。二人が出かけてしまうと、あまりの静けさで、ついついグースカばかりしているな。さあ、今夜もガンバルか。
4日(土)
きのうの夜は不覚だったな。YとK代にナデナデされて、おまけに夜食のマグロをもらって、すっかり気持ちよくなって、そのまま寝てしまったんだ。夜警の仕事をまったく忘れてしまったよ。朝、YとK代はすがすがしい顔をしていたので、二人も気分よく寝たんだろうな。それはそうと、店はだいじょうぶかな。ワタシがいないのをいいことに、まさか、ネズミたちがノンビリと歩き回わっていないだろうな。心配だな。それを考えると、今夜は眠れないな。
5日(日)
またも突然だったな。昼のカンヅメを終え、ノンビリとグースカしていたら、Yが起こすんだ。なんだ、もう夕方のカンヅメの時間か、今日は時間のたつのが早いな、と思ったら、カゴのなかに入れられ、なんだ、なんだ、と鳴いているまに自転車にのせられて、あっというまに店に着いたよ。そうか、正月休みはもう終わりか。でも、楽しかったな。YとK代の部屋で過ごした、このお正月はワタシにとって最高の思い出になるな。いつか、またあの部屋で暮らせることがあればいいな。そうしたいな、きっと。
6日(月)
やはり、店は落ち着くな。それはそうだよ、ここに三年住んでいるんだからな。Yの部屋だって、あと一カ月住んだら落ち着くだろうな。ひさしぶりにほんの少しヒナタボッコをして、あとはグースカしていたよ。やっぱり緊張していたんだろうな。疲れがどっとでたようだな。でも、夜の巡回はきちんとやるよ。
7日(火)
どうもいけないな。この冷え込みと環境が変わったせいか、また便秘になってしまったよ。ワタシはあんがいデリケートにできているんだな。そうだな、おいしそうな匂いにはすぐに反応するしな。そう考えると、そう、いろいろな環境がワタシを進化させてきたのかもしれないな。そうだな、きっと。あれっ、むずかしいことを考えてしまったな。いけない、いけない。やはり、寝よう。
8日(水)
いやになっちゃうな。便秘はなんとか解消したのだけれど、ひさしぶりに吐いてしまったんだ。ここのところまったく吐いていないし、調子もそんなに悪くなかったんだけどな。反省しようと思ったんだが、午後はすっかり気持ちよくなってグースカしてしまったんだ。そんな自分がイヤになることもあるんだが、すぐに忘れてしまうんだよ。だってけっこう単調な毎日なんだよ。まあそれがワタシに合っているといえば合っているんだな。おやっ、夜食はエビフライのエビか。これはウマイ。まあ単純なんだな。
9日(木)
今日はたっぷりヒナタボッコができたよ。おかげで体調も上向きになったな。でも、よく考えてみると、ワタシがたっぷりヒナタボッコができるというのは、それだけお店がヒマということだな。電話も少ないしな。それは困るな。お店あってのワタシだからな。まあ、玄関に陽が射している時間だけはお客さんに遠慮してもらって、あとはドンドンお客さんに来て欲しいな。ワタシの夜食に影響してくるからな。頼むよ。
10日(金)
夕方のカンヅメの時間が終わってから、おかしな雰囲気になったな。K代がワタシに「先に行って待ってるからね」と言うし、Yはなかなか帰らない。これは、もしかして、と思った瞬間、カゴに入れられたんだ。やはり。一人と一匹、冷たい外気にあたりながら、自転車でYのアパートへ。もうネグラやトイレの場所はわかっているが、それでもYの部屋の隅々を念入りに嗅ぎまわったよ。またか。なんだろうな。まさか。ある深い疑念がワタシの胸中をよこぎった。そうか、そういうことかもしれないな。
11日(土)
年末とお正月に来ているから、もう慣れたものだが、やはり落ち着かないな。それに仕事がひとつ増えてしまったんだ。朝Yを起こす仕事だよ。朝六時にニャアー、ニャアー鳴いて起こしてあげるんだ。ワタシは夜中じゅう活動しているから、いつでも起こせるのだけど、六時まで待ってあげているんだよ。眠そうな顔して起きて来たな。ワタシをナデナデして、またフトンに入ってしまったな。そうか今日は休みか。ゴメン。
12日(日)
今朝Yの部屋のジュータンで爪をといでいる時、急に思い出したことがあるんだ。リリィ。そう、生まれてすぐ車にはねられた、ワタシとマリーの妹の名前。なぜ今まで思い出せなかったのかな。トラ、マリー、リリィ。ワタシ達は野良ネコ三姉妹だった。でもこうして並べてみると、ワタシのトラという名前はいかにも平凡だな。まったく安易に名づけてくれたな。しかし、平凡こそが幸せなのかもしれないな。単調だけど、マズイカンヅメの後においしい夜食が食べられる、そして毎日を生きていける、これこそが幸せなんだな。そうだな、きっと。おっ、今夜はエビだ。ムシャ、ムシャ、感謝。
13日(月)
予感はあったよ。朝からYとK代は優しかったし、カンヅメの時もゆっくり時間をかけて食べさせてくれたからな。やっぱり、夕方、Yの自転車に乗せられて、店に戻ったよ。ゆっくり水を飲んで、じっくり頭を働かせたよ。そして結論。まあ、考えようだな。本宅と別宅があると考えればいいんだな。どっちにも慣れてしまえばいいんだよ。住む家が二つもあると思えば、こんなステキなことはないな。これからが楽しみだよ。
14日(火)
店は店で、やはりいいな。朝、シャッターが開いてYが入って来て、Yにナデナデしてもらって、お昼にお客さんの合間をぬってヒナタボッコをして、午後はグースカだ。ちょっと足りないな。そうだ、母の膝の上に乗ることがなくなってだいぶたつな。どうしたんだろうな。母のイビキが聞こえない日々は寂しいよ。
15日(水)
おかしいな。やっぱり、おかしい。いくら数字に弱いワタシでも人が少なくなったことはわかるな。ネグラのそばのイスにいるのはY。ちょっと離れてK代。朝、ちょいと来てすぐいなくなったのは社長のM。今日見たのは三人だけだな。母もいないし、もっと他にもいたような気がするが、気のせいかな。このことはだいぶ前にも感じたことだけどな。こう寒さが厳しいと、人も冬眠するのかな?