シンポジウムの静止画コンテンツ

 研究発表やシンポジウムの動画記録は、発表者のしゃべる内容と身振りの相関を窺わせて、(上手く言えないが)味気ないの反対である。字面以上に、強弱のニュアンスが伝わるのだ(録音だけだと、この効果はない)。画面は小さくてもいい。そこで「シンポジウムの動画記録対応」だ。

 動画のデータ容量や編集はともかく、配信のビットレートも悩みどころだが、試行錯誤してみると、現在の最高の圧縮コーデックなら、音声32kbps+ビデオ64kbpsでも、相当に実用的である。画像サイズはQVGA(320×240)、フレームレートは15fps程度である。96kbpsだと、1時間約44MBになる(ビットレートはあくまで一例)。

 ところで、パワーポイント等のデジタルプレゼンが行われている場合は、プレゼンの生データから公開用の画面を作ることが望ましい。パワーポイントは色々な画面構成があるが、静止画にしてしまえば、やや大きめの画像(VGA相当)なら、1枚平均40KB、平均30枚と仮定して、1.2MB程度で済む。1時間に発表が3本だから合計3.6MB、32kbpsの音声1時間は14MBで済む。合わせて約17.6MB。HTMLと合わせても17.7MB、単純計算で35時間分約620MB。

 #静止画と音声で作るコンテンツだから、いわば「オーマイキー方式」である。

 静止画と音声で作るコンテンツには、いくつかのアプローチがある。広義に言ってしまえば、静止画をスライドショーにして、音声を別に流すわけだが、連動性、製作性で、技術的には多様で興味深い課題である。ここでは下記の3つに絞ってみた。

  1. Javascriptスライドショー
  2. 動画方式
  3. Enhanced Podcast(エンハンスト・ポッドキャスト)

 1はJavascriptでスライドショーを作る方式である。等間隔なら自動再生できるし、画面クリックで次画面というのも簡単だ(HTMLは1ファイル)。音声を聞きながら、ユーザが自発的に資料をめくるのは(あるいは戻るのは)、意外に理にかなっていると思われる。音声とタイミングを合わせて自動再生するのは少し面倒だが、例えば30枚の画面を30秒間隔で更新すれば15分だ(発表の多くは15〜20分)。そんな事でも十分なような気がする。画面をどんどんめくる事で発表の概要が分かり(いわば早送り)、じっくり聞きたいものだけ音声を聞くようにすれば、時間が節約できる。プレゼンの静止画コンテンツが、スクリーニングになるのであれば、重い音声ファイルのダウンロードを必要な場合だけに絞ることが出来る

#スライドショーにはPDFの可能性もあるが、Acrobatの重さがネックだ。まだFlash系の方がいい。

 2の動画方式は、静止画を並べて、文字通り動画コンテンツにしてしまうのだが、オーサリングソフトで編集すれば、音声のタイミングに合わせて画面を切り替えることができる。画面の中で注目してほしい個所があれば、そこを囲むなどの効果を加える事も可能だ。画面の変化が殆どないので、ビットレートが抑えられる可能性はある。

 3のEnhanced Podcast(拡張Podcast)とは、音声ベースのPodcastに、複数の静止画を任意のタイミングで表示させるフォーマットである。画像はチャプタとしても働き、任意のチャプタに飛べる。視聴環境はiTunesまたはiPodになる。2よりエレガントで、容量も節約でき、Podcast自体の快適さも見逃せない(ローカルでの整理がつきやすい)。Enhanced PodcastはXMLで記述し、ChapterToolというOS Xのツールでコンパイルして作成する(ツールはGarageBandサポートの「Podcastをより魅力的に」にリンクされている)。

Sound it! 5.0 for Windowsが拡張Podcastの制作に対応した。

 問題は、オーサリングの手間である。画像サイズの整った静止画を得るだけでも手間なのだが(ファイル名はなんらかの連番に)、それが済めば、後は殆どそれ以上の作業いらずの、Javascriptスライドショーがいいかもしれない。前出のスクリーニング機能も大きなメリットである。なお、画像サイズはVGAより小さくして、容量平均20KBくらいの方がいいかもしれない。