平成8年第136回国会提出

文化財保護法の一部を改正する法律資料

◎文化財保護法の1部を改正する法律要綱


第一 文化財登録制度の導入

一 有形文化財の登録(第56条の2関係)
 文部大臣は、重要文化財以外の有形文化財(地方公共団体が指定を行っているものを除く。)で建造物であるもののうち、その文化財としての価値にかんがみ保存及び活用のための措置が特に必要とされるものを文化財登録原簿に登録することができるものとすること。

二 告示、通知及び登録証の交付(第56条の2の2関係)
1 登録は官報で告示するとともに、登録有形文化財の所有者に通知することとし、官報の告示があった日又は所有者に通知が到達した時から効力が生ずるものとすること。
2 登録をしたときは、文部大臣は、所有者に登録証を交付するものとすること。

三 登録有形文化財の登録の抹消(第56条の2の3関係)
1 文部大臣は、登録有形文化財について重要文化財に指定したとき、又は地方公共団体が指定を行ったときは、その登録を抹消するものとすること。
2 文部大臣は、登録有形文化財についてその保存及び活用のための措置を講ずる必要がなくなつた場合その他特殊の事由があるときは、その登録を抹消できるものとすること。
3 登録の抹消をしたときは、官報で告示するとともに、所有者に通知することとし、この通知を受けたとき、所有者は登録証を文部大臣に返付しなければならないものとすること。

四 登録有形文化財の管理(第56条の2の4関係)
1 登録有形文化財の所有者は、特別の事情があるときは、適当な者を自己に代わり登録有形文化財、の管理の責に任ずべき者に選任することができるものとすること。
2 登録有形文化財について、所有者が判明しない等の場合には、文化庁長官は、適当な地方公共団体その他の法人を、当該登録有形文化財の保存のため必要な管理を行う団体(以下「管理団体」という。)に指定できるものとすること。

五 登録有形文化財の滅失又はき損(第56条の2の5関係)
 登録有形文化財の全部又は一部が滅失し、又はき損したときは、所有者等は、その事実を知った日から10日以内に文化庁長官に届け出なければならないものとすること。

六 登録有形文化財の修理(第56条の2の6関係)
 登録有形文化財の修理は、所有者が行うものとするが、管理団体がある場合は管理団体が行うものとすること。

七 登録有形文化財の現状変更の届出等(第56条の2の7関係)
1 登録有形文化財の現状を変更しようとする者は、原則として、30日前までに文化庁長官に届け出なければならないものとすること。
2 登録有形文化財の保護上必要があると認めるときは、文化庁長官は、届出に係る現状の変更に関し必要な指導、助言又は勧告をすることができるものとすること。

八 登録有形文化財の管理又は修理に関する技術的指導(第56条の2の8関係)
 登録有形文化財の所有者等は、文化庁長官にその管理又は修理に関し技術的指導を求めることができるものとすること。

九 登録有形文化財の公開(第56条の2の9関係)
1 登録有形文化財の公開は、所有者が行うものとするが、管理団体がある場合には管理団体が行うものとすること。
2 管理団体が行う公開には、観覧料を徴収することができるものとすること。
3 登録有形文化財の活用上必要があると認めるときは、文化庁長官は、その所有者等に対し、必要な指導又は助言をすることができるものとすること。

十 登録有形文化財の現状等の報告(第56条の2の10関係)
 文化庁長官は、必要があると認めるときは、登録有形文化財の所有者等に対し、その現状等につき報告を求めることができるものとすること。

十一 所有者変更に伴う登録証の引渡し(第56条の2の11関係)
 登録有形文化財の所有者が変更したときは、旧所有者は登録有形文化財の引渡しと同時に登録証を新所有者に引き渡さなければならないものとすること。

十二 文化財保護審議会への諮問(第84条の2第1項関係)
 文部大臣は、登録有形文化財の登録及びその抹消について、あらかじめ、審議会に諮問しなければならないものとすること。

十三 登録有形文化財についての国に関する特例(第97条の2〜第97条の5関係)
 国の所有に属する有形文化財である建造物を登録したときの通知又は登録証の交付は各省各庁の長に対して行うものとすること、関係各省各庁の長が登録有形文化財を取得したときの通知の取扱い等、登録有形文化財についての国に関する所要の特例を定めること。

第二 指定都市等への権限の委任等及び市町村の役割の明確化

一 指定都市等への権限の委任等(第98条の3、第99条及び第100条の2関係)
 文化庁長官が行うこととされている重要文化財等の現状変更の許可等及び埋蔵文化財の鑑査等について、都道府県の教育委員会に加えて指定都市及び中核市の教育委員会にも委任できるものとするとともに、発掘調査により発見された文化財について都道府県の教育委員会と同様の処理を指定都市及び中核市の教育委員会にも認めること。

二 市町村の役割の明確化(第104条の2及び第105条関係)
 都道府県の教育委員会と同様に、市町村(市町村の組合及び特別区を含む。)の教育委員会について、文化財の保存及び活用に関する文部大臣又は文化庁長官に対する意見具申及び地方文化財保護審議会の設置に関する規定を整備すること。

第三 重要文化財等の活用の促進

一 重要文化財等の所有者等による公開(第51条第7項、第56条の7第2項及び第3項、第56 条の16、第56条の19第2項並びに第83条の11関係)
 国庫負担により、重要文化財若しくは重要有形民俗文化財をその所有者等が公開しようとする場合、重要無形文化財をその保持者等が公開しようとする場合又は重要無形文化財、重要無形民俗文化財若しくは選定保存技術の記録をその所有者が公開しようとする場合について、文化庁長官への申出及び文化庁長官の承認を要しないものとすること。

二 重要文化財等の所有者等以外の者による公開(第53条第1項及び第2項並びに第56条の15第1項関係)
 重要文化財の公開について、国の機関及び地方公共団体が文化庁長官の承認を受けた博物館等の施設において展覧会その他の催しを主催する場合に加えて、当該博物館等の施設の設置者が主催する場合にも、重要文化財の公開について許可を要しないものとし、観覧に供した期間の最終日の翌日から20日以内に文化庁長官に届け出るものとすること。また、重要有形民俗文化財の公開についても同様とすること。

三 重要文化財の海外への輸出の許可(第44条及び第84条の2第2項関係)
 文化の国際交流のための重要文化財の輸出の許可については、文化財保護審議会への諮問を要しないものとすること。

第四 その他

一 罰則(第106条}第111条関係)
 登録有形文化財の現状の変更等の届出等の規定に違反した等に対する過料を定めるとともに、法に定める罰金、科料及び過料の額の引上げを行うこと。

二 その他関係規定の整備を行うこと。

三 この法律は、公布の日から起算して9月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。


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