第2節 国に関する特例

 (国に関する特例)
第86条 国又は国の機関に対しこの法律の規定を適用する場合において、この節に特別の規定のあるときは、その規定による。

 (重要文化財等についての国に関する特例)
第87条 重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物が国有財産法に規定する国有財産であるときは、そのものは、文部大臣が管理する。ただし、そのものが文部大臣以外の者が管理している同法第3条第2項に規定する行政財産であるときその他文部大臣以外の者が管理すべき特別の必要のあるものであるときは、そのものを関係各省各庁の長が管理するか、又は文部大臣が管理するかは、文部大臣、関係各省各庁の長及び大蔵大臣が協議して定める。

第87条の2 前条の規定により重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物を文部大臣が管理するため、所属を異にする会計の間において所管換え又は所属替えをするときは、国有財産法第15条の規定にかかわらず、無償として整理することができる。 第88条 国の所有に属する有形文化財又は有形の民俗文化財を国宝若しくは重要文化財又は重要有形民俗文化財に指定したときは、第28条第1項又は第3項(第56条の10第2項で準用する場合を含む。)の規定により所有者に対し行うべき通知又は指定書の交付は、当該有形文化財又は有形の民俗文化財を管理する各省各庁の長に対し行うものとする。この場合においては、国宝の指定書を受けた各省各庁の長は、直ちに国宝に指定された重要文化財の指定書を文部大臣に返付しなければならない。
2 国の所有に属する国宝若しくは重要文化財又は重要有形民俗文化財の指定を解除したときは、第29条第2項(第56条の11第2項で準用する場合を含む。)又は第5項の規定により所有者に対し行うべき通知又は指定書の交付は、当該国宝若しくは重要文化財又は重要有形民俗文化財を管理する各省各庁の長に対し行うものとする。この場合においては、当該各省各庁の長は、直ちに指定書を文部大臣に返付しなければならない。
3 国の所有又は占有に属するものを特別史跡名勝天然記念物若しくは史跡名勝天然記念物に指定し、若しくは仮指定し、又はその指定若しくは仮指定を解除したときは、第69条第3項(第70条第3項及び第71条第4項で準用する場合を含む。)の規定により所有者又は占有者に対し行うべき通知は、その指定若しくは仮指定又は指定若しくは仮指定の解除に係るものを管理する各省各庁の長に対し行うものとする。

第89条 重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物を管理する各省各庁の長は、この法律並びにこれに基づいて発する文部省令及び文化庁長官の勧告に従い、重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物を管理しなければならない。

第90条 次に掲げる場合には、関係各省各庁の長は、文部大臣を通じ文化庁長官に通知しなければならない。
一 重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物を取得したとき。
二 重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物の所管換えを受け、又は所属替えをしたとき。
三 所管に属する重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物の全部又は一部が滅失し、き損し、
若しくは衰亡し、又はこれを亡失し、若しくは盗み取られたとき。
四 所管に属する重要文化財又は重要有形民俗文化財の所在の場所を変更しようとするとき。
五 所管に属する重要文化財又は史跡名勝天然記念物を修理し、又は復旧しようとするとき(次
 条第1項第一号の規定により文化庁長官の同意を求めなければならない場合その他文部省令の定める場合を除く。)。

六 所管に属する重要有形民俗文化財の現状を変更し、若しくはその保存に影響を及ぼす行為をし、又はこれを輸出しようとするとき。
七 所管に属する史跡名勝天然記念物の指定地域内の土地について、その土地の所在、地番、地目又は地積に異動があつたとき。
2 前項第一号及び第二号の場合に係る通知には、第32条第1項並びに同項を準用する第56条の12及び第75条の規定を、前項第三号の場合に係る通知には、第33条並びに同条を準用する第56条の12及び第75条の規定を、前項第四号の場合に係る通知には、第34条及び同条を準用する第56条の12の規定を、前項第五号の場合に係る通知には、第43条の2第1項及び第80条の3第1項の規定を、前項第六号の場合に係る通知には、第56条の13第1項の規定を、前項第七号の場合に係る通知には、第72条第2項の規定を、準用する。
3 文化庁長官は、第1項第五号又は第六号の通知に係る事項に関し必要な勧告をすることができる。

第91条 次に掲げる場合には、関係各省各庁の長は、あらかじめ、文部大臣を通じ文化庁長官の同意を求めなければならない。
一 重要文化財又は史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするとき。
二 所管に属する重要文化財を輸出しようとするとき。
三 所管に属する重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物の貸付、交換、売払、譲与その他の処分をしようとするとき。
2 各省各庁の長以外の国の機関が、重要文化財又は史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、あらかじめ、文化庁長官の同意を求めなければならない。
3 第1項第一号及び前項の場合には、第43条第1項但書及び同条第2項並びに第80条第1項但書及び同条第2項の規定を準用する。
4 文化庁長官は、第1項第1号又は第2項に規定する措置につき同意を与える場合においては、その条件としてその措置に関し必要な勧告をすることができる。
5 関係各省各庁の長その他の国の機関は、前項の規定による文化庁長官の勧告を十分に尊重しなければならない。

第92条 文化庁長官は、必要があると認めるときは、文部大臣を通じ各省各庁の長に対し、次に掲げる事項につき必要な勧告をすることができる。
一 所管に属する重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物の管理方法
二 所管に属する重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物の修理若しくは復旧又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置
三 重要文化財又は史跡名勝天然記念物の環境保全のため必要な施設  
四 所管に属する重要文化財又は重要有形民俗文化財の出品又は公開
2 前項の勧告については、前条第5項の規定を準用する。
3 第1項の規定による文化庁長官の勧告に基いて施行する同項第二号に規定する修理、復旧若しくは措置又は同項第三号に規定する施設に要する経費の分担については、文部大臣と各省各庁の長が協議して定める。

第93条 文化庁長官は、左の各号の一に該当する場合においては、国の所有に属する国宝又は特別史跡名勝天然記念物につき、自ら修理若しくは復旧を行い、又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置をすることができる。この場合においては、文化庁長官は、当該文化財が文部大臣以外の各省各庁の長の所管に属するものであるときは、あらかじめ、修理若しくは復旧又は措置の内容、着手の時期その他必要な事項につき、文部大臣を通じ当該文化財を管理する各省各庁の長と協議し、当該文化財が文部大臣の所管に属するものであるときは、文部大臣の定める場合を除いて、その承認を受けなければならない。
一 関係各省各庁の長が前条第1項第二号に規定する修理若しくは復旧又は措置についての文化庁長官の勧告に応じないとき。
二 国宝又は特別史跡名勝天然記念物がき損し、若しくは衰亡している場合又は滅失し、き損し、衰亡し、若しくは盗み取られる虞のある場合において、関係各省各庁の長に当該修理若しくは復旧又は措置をさせることが適当でないと認められるとき。

第94条 文部大臣は、国の所有に属するものを国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物若しくは史跡名勝天然記念物に指定するに当たり、又は国の所有に属する国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物若しくは史跡名勝天然記念物に関する状況を確認するため必要があると認めるときは、関係各省各庁の長に対し調査のため必要な報告を求め、又は、重要有形民俗文化財に係る場合を除き、調査に当たる者を定めて実地調査をさせることができる。

第95条 文化庁長官は、国の所有に属する重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物の保有のため特に必要があると認めるときは、適当な地方公共団体その他の法人を指定して当該文化財の保存のため必要な管理(当該文化財の保存のため必要な施設、設備その他の物件で国の所有又は管理に属するものの管理を含む。)を行わせることができる。
2 前項の規定による指定をするには、文化庁長官は、あらかじめ、文部大臣を通じ当該文化財を管理する各省各庁の長の同意を求めるとともに、指定しようとする地方公共団体その他の法人の同意を得なければならない。
3 第1項の規定による指定には、第32条の2第3項及び第4項の規定を準用する。
4 第1項の規定による管理によつて生ずる収益は、当該地方公共団体その他の法人の収入とする。
5 地方公共団体その他の法人が第1項の規定による管理を行う場合には、重要文化財又は重要有形民俗文化財の管理に係るときは、第30条、第31条第1項、第32条の4第1項、第33条、第34条、第35条、第36条、第47条の2第3項及び第54条の規定を、史跡名勝天然記念物に係るときは、第30条、第31条第1項、第33条、第35条、第72条第1項及び第2項、第72条の2第1項及び第3項、第76条並びに第82条の規定を準用する。

第95条の2 前条第1項の規定による指定の解除については、第32条の3の規定を準用する。

第95条の3 文化庁長官は、重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物の保護のため特に必要があると認めるときは、第95条第1項の規定による指定を受けた地方公共団体その他の法人に当該文化財の修理又は復旧を行わせることができる。
2 前項の規定による修理又は復旧を行わせる場合には、第95条第2項の規定を準用する。
3 地方公共団体その他の法人が第1項の規定による修理又は復旧を行う場合には、重要文化財又は重要有形民俗文化財に係るときは、第32条の4第1項及び第35条の規定を、史跡名勝天然記念物に係るときは、第35条、第72条の2第1項及び第73条の規定を準用する。

第95条の4 第95条第1項の規定による指定を受けた地方公共団体は、その管理する国の所有に属する重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物でその指定に係る土地及び建造物を、その管理のため必要な限度において、無償で使用することができる。
2 国有財産法第22条第2項及び第3項の規定は、前項の規定により土地及び建造物を使用させる場合について準用する。

第96条 文化庁長官は、第58条第1項の規定により発掘を施行しょうとする場合において、その発掘を施行しようとする土地が国の所有に属し、又は国の機関の占有するものであるときは、あらかじめ、発掘の目的、方法、着手の時期その他必要と認める事項につき、文部大臣を通じ関係各省各庁の長と協議しなければならない。ただし、当該各省各庁の長が文部大臣であるときは、その承認を受けるべきものとする。

第97条 第63条第1項の規定により国庫に帰属した文化財は、文化庁長官が管理する。ただし、その保存のため又はその効用から見て他の機関に管理させることが適当であるときは、これを当該機関の管理に移さなければならない。

 (登録有形文化財についての国に関する特例)
第97条の2 国の所有に属する有形文化財で建造物であるものについて第56条の2第1項の規定による登録をしたときは、第56条の2の2第1項又は第3項の規定により所有者に対して行うべき通知又は登録証の交付は、当該登録有形文化財を管理する各省各庁の長に対して行うものとする。
2 国の所有に属する登録有形文化財について、第56条の2の3第1項又は第2項の規定による登録の抹消をしたときは、同条第3項の規定により所有者に対して行うべき通知は、当該登録有形文化財を管理する各省各庁の長に対して行うものとする。この場合においては、当該各省各庁の長は、直ちに登録証を文部大臣に返付しなければならない。

第97条の3 次に掲げる場合には、関係各省各庁の長は、文部大臣を通じ文化庁長官に通知しなければならない。
一 登録有形文化財を取得したとき。
二 登録有形文化財の所管換えを受け、又は所属替えをしたとき。
三 所管に属する登録有形文化財の全部又は一部が滅失し、又はき損したとき。
四 登録有形文化財の現状を変更しようとするとき。
2 各省各庁の長以外の国の機関が登録有形文化財の現状を変更しようとするときは、文化庁長官に通知しなければならない。
3 第1項第一号及び第二号に掲げる場合に係る通知には第32条第1項の規定を、第1項第三号に掲げる場合に係る通知には第56条の2の5の規定を、同項第四号及び前項に規定する場合に係る通知には第56条の2の7第1項の規定を準用する。
4 第1項第四号及び第2項に規定する現状の変更には、第56 条の2の7第1項ただし書及び第2項の規定を準用する。
5 登録有形文化財の保護上必要があると認めるときは、文化庁長官は、第1項第四号又は第2項に規定する現状の変更に関し、文部大臣を通じ関係各省各庁の長に対し、又は各省各庁の長以外の国の機関に対して意見を述べることができる。

第97条の4 文部大臣は、国の所有に属する登録有形文化財に関する状況を確認するため必要があると認めるときは、関係各省各庁の長に対し調査のため必要な報告を求めることができる。

第97条の5 国の所有に属する登録有形文化財については、第56条の2の4第3項から第5項まで、第56条の2の6第2項及び第56条の2の9第3項の規定は、適用しない。


<文化財保護法インデックス