第5章の2 伝統的建造物群保存地区

 (伝統的建造物群保存地区)
第83条の2 この章において「伝統的建造物群保存地区」とは、伝統的建造物群及びこれと一体をなしてその価値を形成している環境を保存するため、次条第1項又は第2項の定めるところにより市町村が定める地区をいう。

 (伝統的建造物群保存地区の決定及びその保護)
第83条の3 市町村は、都市計画法(昭和43年法律第100号)第5条の規定により指定された都市計画区域内においては、都市計画に伝統的建造物群保存地区を定めることができる。この場合においては、市町村は、条例で、当該地区の保存のため、政令の定める基準に従い必要な現状変更の規制について定めるほか、その保存のため必要な措置を定めるものとする。
2 市町村は、前項の都市計画区域以外の区域においては、条例の定めるところにより、伝統的建造物群保存地区を定めることができる。この場合においては、前項後段の規定を準用する。
3 都道府県知事は、第1項の伝統的建造物群保存地区に関する都市計画についての都市計画法による同意に当たっては、あらかじめ、当該都道府県の教育委員会の意見を聴かなければならない。
4 市町村は、伝統的建造物群保存地区に関し、地区の決定若しくはその取消し又は条例の制定若しくはその改廃を行った場合は、文化庁長官に対し、その旨を報告しなければならない。
5 文化庁長官又は都道府県の教育委員会は、市町村に対し、伝統的建造物群保存地区の保存に関し、必要な指導又は助言をすることができる。

 (重要伝統的建造物群保存地区の選定)
第83条の4 文部大臣は、市町村の申出に基づき、伝統的建造物群保存地区の区域の全部又は一部で我が国にとってその価値が特に高いものを、重要伝統的建造物群保存地区として選定することができる。
2 前項の規定による選定は、その旨を官報で告示するとともに、当該申出に係る市町村に通知してする。

 (選定の解除)
第83条の5 文部大臣は、重要伝統的建造物群保存地区がその価値を失つた場合その他特殊の事由があるときは、その選定を解除することができる。
2 前項の場合には、前条第2項の規定を準用する。

 (管理等に関する補助)
第83条の6 国は、重要伝統的建造物群保存地区の保存のための当該地区内における建造物及び伝統的建造物群と一体をなす環境を保存するため特に必要と認められる物件の管理、修理、修景又は復旧について市町村が行う措置について、その経費の一部を補助することができる。  

第5章の3 文化財の保存技術の保護

 (選定保存技術の選定等)
第83条の7 文部大臣は、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術又は技能で保存の措置を講ずる必要があるものを選定保存技術として選定することができる。
2 文部大臣は、前項の規定による選定をするに当たっては、選定保存技術の保持者又は保存団体(選定保存技術を保存することを主たる目的とする団体(財団を含む。)で代表者又は管理人の定めのあるものをいう。以下同じ。)を認定しなければならない。
3 1の選定保存技術についての前項の認定は、保持者と保存団体とを併せてすることができる。
4 第1項の規定による選定及び前2項の規定による認定には、第56条の3第3項から第5項までの規定を準用する。

 (選定等の解除)
第83条の8 文部大臣は、選定保存技術についての保存の措置を講ずる必要がなくなつた場合その他特殊の事由があるときは、その選定を解除することができる。
2 文部大臣は、保持者が心身の故障のため保持者として適当でなくなつたと認められる場合、保存団体が保存団体として適当でなくなったと認められる場合その他特殊の事由があるときは、保持者又は保存団体の認定を解除することができる。
3 前2項の場合には、第56条の4第3項の規定を準用する。
4 前条第2項の認定が保持者のみについてなされた場合にあってはそのすべてが死亡したとき、同項の認定が保存団体のみについてなされた場合にあってはそのすべてが解散したとき(消滅したときを含む。以下この項において同じ。)、同項の認定が保持者と保存団体とを併せてなされた場合にあっては保持者のすべてが死亡し、かつ保存団体のすべてが解散したときは、選定保存技術の選定は、解除されたものとする。この場合には、文部大臣は、その旨を官報で告示しなければならない。

 (保持者の氏名変更等)
第83条の9 保持者及び保存団体には、第56条の5の規定を準用する。この場合において、同条後段中「代表者」とあるのは、「代表者又は管理人」と読み替えるものとする。

 (選定保存技術の保存)
第83条の10 文化庁長官は、選定保存技術の保存のため必要があると認めるときは、選定保存技術について自ら記録を作成し、又は伝承者の養成その他選定保存技術の保存のために必要と認められるものについて適当な措置を執ることができる。

 (選定保存技術の記録の公開)
第83条の11 選定保存技術の記録の所有者には、第56条の19の規定を準用する。

 (選定保存技術の保存に関する援助)
第83条の12 国は、選定保存技術の保持者若しくは保存団体又は地方公共団体その他その保存に当たることを適当と認める者に対し、指導、助言その他の必要と認められる援助をすることができる。  

第5章の4 文化財保護審議会

 (設置及び所掌事務)
第84条 文部省に、文化財保護審議会を置く。
2 文化財保護審議会(以下この章において「審議会」という。)は、文部大臣又は文化庁長官の諮問に応じて文化財の保存及び活用に関する重要事項を調査審議し、並びにこれらの事項について文部大臣又は文化庁長官に建議する。

 (審議会への諮問)
第84条の2 文部大臣は、次に掲げる事項については、あらかじめ、審議会に諮問しなければならない。
一 国宝又は重要文化財の指定及びその指定の解除
一の二 登録有形文化財の登録及びその登録の抹消(第56条の2の3第1項の規定による登録の抹消を除く。)
二 重要無形文化財の指定及びその指定の解除
三 重要無形文化財の保持者又は保持団体の認定及びその認定の解除
四 重要有形民俗文化財又は重要無形民俗文化財の指定及びその指定の解除
五 特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の指定及びその指定の解除
六 史跡名勝天然記念物の仮指定の解除
七 重要伝統的建造物群保存地区の選定及びその選定の解除
八 選定保存技術の選定及びその選定の解除
九 選定保存技術の保持者又は保存団体の認定及びその認定の解除
2 文化庁長官は、次に掲げる事項については、あらかじめ、審議会に諮問しなければならない。
一 重要文化財の管理又は国宝の修理に関する命令
二 文化庁長官による国宝の修理又は滅失、き損若しくは盗難の防止の措置の施行
三 重要文化財の現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可
四 重要文化財の環境保全のための制限若しくは禁止又は必要な施設の命令
五 国による重要文化財の買取り
六 重要無形文化財以外の無形文化財のうち文化庁長官が記録を作成すべきもの又は記録の作成等につき補助すべきものの選択
七 重要有形民俗文化財の管理に関する命令
八 重要有形民俗文化財の買取り
九 重要無形民俗文化財以外の無形の民俗文化財のうち文化庁長官が記録を作成すべきもの又は記録の作成等につき補助すべきものの選択
九の二 遺跡の現状変更となる行為についての停止命令又は禁止命令の期間の延長
十 文化庁長官による埋蔵文化財の調査のための発掘の施行
十一 史跡名勝天然記念物の管理又は特別史跡名勝天然記念物の復旧に関する命令
十二 文化庁長官による特別史跡名勝天然記念物の復旧又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置の施行
十三 史跡名勝天然記念物の現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可
十四 史跡名勝天然記念物の環境保全のための制限若しくは禁止又は必要な施設の命令
十五 史跡名勝天然記念物の現状変更若しくは保存に影響を及ぼす行為の許可を受けず、若しくはその許可の条件に従わない場合又は史跡名勝天然記念物の環境保全のための制限若しくは禁止に違反した場合の原状回復の命令
十六 第99条第1項の政令(同項第二号に掲げる事務に係るものに限る。)の制定又は改廃の立案

 (委員等)
第84条の3 審議会は、文化に関し広くかつ高い識見を有する者のうちから、文部大臣が内閣の承認を経て任命する5人の委員で組織する。
2 専門の事項を調査審議するため必要があるときは、審議会に専門委員及び臨時専門委員を置くことができる。

 (政令への委任)
第84条の4 この章に定めるもののほか、審議会の内部組織、所掌事務及び委員その他の職員については、政令で定める。


<文化財保護法インデックス