第5章 史跡名勝天然記念物

 (指定)
第69条 文部大臣は、記念物のうち重要なものを史跡、名勝又は天然記念物(以下「史跡名勝天然記念物」と総称する。)に指定することができる。
2 文部大臣は、前項の規定により指定された史跡名勝天然記念物のうち特に重要なものを特別史跡、特別名勝又は特別天然記念物(以下「特別史跡名勝天然記念物」と総称する。)に指定することができる。
3 前2項の規定による指定は、その旨を官報で告示するとともに、当該特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の所有者及び権原に基く占有者に通知してする。
4 前項の規定により通知すべき相手方が著しく多数で個別に通知し難い事情がある場合には、文部大臣は、同項の規定による通知に代えて、その通知すべき事項を当該特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の所在地の市(特別区を含む。以下同じ。)町村の事務所又はこれに準ずる施設の掲示場に掲示することができる。この場合においては、その掲示を始めた日から2週間を経過した時に前項の規定による通知が相手方に到達したものとみなす。
5 第1項又は第2項の規定による指定は、第3項の規定による官報の告示があつた日からその効力を生ずる。但し、当該特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物の所有者又は権原に基く占有者に対しては、第3項の規定による通知が到達した時又は前項の規定によりその通知が到達したものとみなされる時からその効力を生ずる。
6 文部大臣は、第1項の規定により名勝又は天然記念物の指定をしようとする場合において、その指定に係る地域が自然環境の保護の見地から価値の高いものであるときは、環境庁長官の意見を聞かなければならない。

 (仮指定)
第70条 前条第1項の規定による指定前において緊急の必要があると認めるときは、都道府県の教育委員会は、史跡名勝天然記念物の仮指定を行うことができる。
2 前項の規定により仮指定を行つたときは、都道府県の教育委員会は、直ちにその旨を文部大臣に報告しなければならない。
3 第1項の規定による仮指定には、前条第3項から第5項までの規定を準用する。

 (所有権等の尊重及び他の公益との調整)
第70条の2 文部大臣又は都道府県の教育委員会は、第69条第1項若しくは第2項の規定による指定又は前条第1項の規定による仮指定を行うに当っては、特に、関係者の所有権、鉱業権 その他の財産権を尊重するとともに、国土の開発その他の公益との調整に留意しなければならない。
2 文部大臣又は文化庁長官は、名勝又は天然記念物に係る自然環境の保護及び整備に関し必要があると認めるときは、環境庁長官に対し、意見を述べることができる。

 (解除)
第71条 特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物がその価値を失つた場合その他特殊の事由のあるときは、文部大臣又は都道府県の教育委員会は、その指定又は仮指定を解除することができる。
2 第70条第1項の規定により仮指定された史跡名勝天然記念物につき第69条第1項の規定による指定があったとき、又は仮指定があった日から2年以内に同条同項の規定による指定がなかったときは、仮指定は、その効力を失う。
3 第70条第1項の規定による仮指定が適当でないと認めるときは、文部大臣は、これを解除することができる。
4 第1項又は前項の規定による指定又は仮指定の解除には、第69条第3項から第5項までの規定を準用する。

 (管理団体による管理及び復旧)
第71条の2 史跡名勝天然記念物につき、所有者がないか若しくは判明しない場合又は所有者若しくは第74条第2項の規定により選任された管理の責に任ずべき者による管理が著しく困難若しくは不適当であると明らかに認められる場合には、文化庁長官は、適当な地方公共団体その他の法人を指定して、当該史跡名勝天然記念物の保存のため必要な管理及び復旧(当該史跡名勝天然記念物の保存のため必要な施設、設備その他の物件で当該史跡名勝天然記念物の所有者の所有又は管理に属するものの管理及び復旧を含む。)を行わせることができる。
2 前項の規定による指定をするには、文化庁長官は、あらかじめ、指定しようとする地方公共団体その他の法人の同意を得なければならない。
3 第1項の規定による指定は、その旨を官報で告示するとともに、当該史跡名勝天然記念物の所有者及び権原に基く占有者並びに指定しようとする地方公共団体その他の法人に通知してする。
4 第1項の規定による指定には、第69条第4項及び第5項の規定を準用する。

第71条の3 前条第1項に規定する事由が消滅した場合その他特殊の事由があるときは、文化庁長官は、管理団体の指定を解除することができる。
2 前項の規定による解除には、前条第3項並びに第69条第4項及び第5項の規定を準用する。

第72条 第71条の2第1項の規定による指定を受けた地方公共団体その他の法人(以下この章及び第6章において「管理団体」という。)は、文部省令の定める基準により、史跡名勝天然記念物の管理に必要な標識、説明板、境界標、囲さくその他の施設を設置しなければならない。
2 史跡名勝天然記念物の指定地域内の土地について、その土地の所在、地番、地目又は地積に異動があつたときは、管理団体は、文部省令の定めるところにより、文化庁長官にその旨を届け出なければならない。
3 管理団体が復旧を行う場合は、管理団体は、あらかじめ、その復旧の方法及び時期について当該史跡名勝天然記念物の所有者(所有者が判明しない場合を除く。)及び権原に基く占有者の意見を聞かなければならない。
4 史跡名勝天然記念物の所有者又は占有者は、正当な理由がなくて、管理団体が行う管理若しくは復旧又はその管理若しくは復旧のため必要な措置を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。

第72条の2 管理団体が行う管理及び復旧に要する費用は、この法律に特別の定のある場合を除いて、管理団体の負担とする。
2 前項の規定は、管理団体と所有者との協議により、管理団体が行う管理又は復旧により所有者の受ける利益の限度において、管理又は復旧に要する費用の一部を所有者の負担とすることを妨げるものではない。
3 管理団体は、その管理する史跡名勝天然記念物につき観覧料を徴収することができる。

第73条 管理団体が行う管理又は復旧によつて損失を受けた者に対しては、当該管理団体は、その通常生ずべき損失を補償しなければならない。
2 前項の補償の額は、管理団体(管理団体が地方公共団体であるときは、当該地方公共団体の教育委員会)が決定する。
3 前項の規定による補償額については、第41条第3項の規定を準用する。
4 前項で準用する第41条第3項の規定による訴えにおいては、管理団体を被告とする。 第73条の2 管理団体が行う管理には、第30条、第31条第1項及び第33条の規定を、管理団体が行う管理及び復旧には、第35条及び第47条の規定を、管理団体が指定され、又はその指定が解除された場合には、第56条第3項の規定を準用する。

 (所有者による管理及び復旧)
第74条 管理団体がある場合を除いて、史跡名勝天然記念物の所有者は、当該史跡名勝天然記念物の管理及び復旧に当るものとする。
2 前項の規定により史跡名勝天然記念物の管理に当る所有者は、特別の事情があるときは、適当な者をもつぱら自己に代り当該史跡名勝天然記念物の管理の責に任ずべき者(以下この章及び第6章において「管理責任者」という。)に選任することができる。この場合には、第31条第3項の規定を準用する。 第75条 所有者が行う管理には、第30条、第31条第1項、第32条、第33条並びに第72条第1項及び第2項(同条第2項については、管理費任者がある場合を除く。)の規定を、所有者が行う管理及び復旧には、第35条及び第47条の規定を、所有者が変更した場合の権利義務の承継には、第56条第1項の規定を、管理責任者が行う管理には、第30条、第31条第1項、第32条第3項、第33条、第47条第4項及び第72条第2項の規定を準用する。

 (管理に閑する命令又は勧告)
第76条 管理が適当でないため史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、衰亡し、又は盗み取られる虞があると認めるときは、文化庁長官は、管理団体、所有者又は管理責任者に対し、管理方法の改善、保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。
2 前項の場合には、第36条第2項及び第3項の規定を準用する。

 (復旧に関する命令又は勧告)
第77条 文化庁長官は、特別史跡名勝天然記念物がき損し、又は衰亡している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、管理団体又は所有者に対し、その復旧について必要な命令又は勧告をすることができる。
2 文化庁長官は、特別史跡名勝天然記念物以外の史跡名勝天然記念物が、き損し、又は衰亡している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、管理団体又は所有者に対し、その復旧について必要な勧告をすることができる。
3 前2項の場合には、第37条第3項及び第4項の規定を準用する。

 (文化庁長官による特別史跡名勝天然記念物の復旧等の施行)
第78条 文化庁長官は、左の各号の一に該当する場合においては、特別史跡名勝天然記念物につき自ら復旧を行い、又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置をすることができる。 一 管理団体、所有者又は管理責任者が前2条の規定による命令に従わないとき。 二 特別史跡名勝天然記念物がき損し、若しくは衰亡している場合又は滅失し、き損し、衰亡し、若しくは盗み取られる虞のある場合において、管理団体、所有者又は管理責任者に復旧又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置をさせることが適当でないと認められるとき。
2 前項の場合には、第38条第2項及び第39条から第41条までの規定を準用する。

 (補助等に係る史跡名勝天然記念物譲渡の場合の納付金)
第79条 国が復旧又は滅失、き損、衰亡若しくは盗難の防止の措置につき第73条の2及び第75条で準用する第35条第1項の規定により補助金を交付し、又は第76条第2項で準用する第36条第2項、第77条第3項で準用する第37条第3項若しくは前条第2項で準用する第40条第1項の規定により費用を負担した史跡名勝天然記念物については、第42条の規定を準用する。 

 (現状変更等の制限及び原状回復の命令)
第80条 史跡名勝天然記念物に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。ただし、現状変更については維持の措置又は非常災害のために必要な応急措置を執る場合、保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合は、この限りでない。
2 前項但書に規定する維持の措置の範囲は、文部省令で定める。
3 第1項の規定による許可を与える場合には、第43条第3項の規定を、第1項の規定による許可を受けた者には、同条第4項の規定を準用する。
4 第1項の規定による処分には、第70条の2第1項の規定を準用する。
5 第1項の許可を受けることができなかつたことにより、又は第3項で準用する第43条第3項の許可の条件を付せられたことによつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
6 前項の場合には、第41条第2項から第4項までの規定を準用する。
7 第1項の規定による許可を受けず、又は第3項で準用する第43条第3項の規定による許可の条件に従わないで、史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をした者に対しては、文化庁長官は、原状回復を命ずることができる。この場合には、文化庁長官は、原状回復に関し必要な指示をすることができる。

 (関係行政庁による通知)
第80条の2 前条第1項の規定により許可を受けなければならないこととされている行為であつてその行為をするについて、他の法令の規定により許可、認可その他の処分で政令に定めるものを受けなければならないこととされている場合において、当該他の法令において当該処分の権限を有する行政庁又はその委任を受けた者は、当該処分をするときは、政令の定めるところにより、文化庁長官(第99条第1項の規定により前条第1項の規定による許可を都道府県又は市の教育委員会が行う場合には、当該都道府県又は市の教育委員会)に対し、その旨を通知するものとする。

 (復旧の届出等)
第80条の3 史跡名勝天然記念物を復旧しようとするときは、管理団体又は所有者は、復旧に着手しようとする日の30日前までに、文部省令の定めるところにより、文化庁長官にその旨を届け出なければならない。ただし、第80条第1項の規定により許可を受けなければならない場合その他文部省令の定める場合は、この限りでない。
2 史跡名勝天然記念物の保護上必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項の届出に係る史跡名勝天然記念物の復旧に関し技術的な指導と助言を与えることができる。

 (環境保全)
第81条 文化庁長官は、史跡名勝天然記念物の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができる。
2 前項の規定による処分によつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
3 第1項の規定による制限又は禁止に違反した者には、第80条第7項の規定を、前項の場合には、第41条第2項から第4項までの規定を準用する。

 (管理団体による買取りの補助)
第81条の2 管理団体である地方公共団体その他の法人が、史跡名勝天然記念物の指定に係る土地又は建造物その他の土地の定着物で、その管理に係る史跡名勝天然記念物の保存のため特に買い取る必要があると認められるものを買い取る場合には、国は、その買取りに要する経費の一部を補助することができる。
2 前項の場合には、第35条第2項及び第3項並びに第42条の規定を準用する。

 (保存のための調査)
第82条 文化庁長官は、必要があると認めるときは、管理団体、所有者又は管理責任者に対し、史跡名勝天然記念物の現状又は管理、復旧若しくは環境保全の状況につき報告を求めることができる。

第83条 文化庁長官は、左の各号の一に該当する場合において、前条の報告によってもなお史跡名勝天然記念物に関する状況を確認することができず、且つ、その確認のため他に方法がないと認めるときは、調査に当る者を定め、その所在する土地又はその隣接地に立ち入ってその現状又は管理、復旧若しくは環境保全の状況につき実地調査及び土地の発掘、障害物の除却その他調査のため必要な措置をさせることができる。但し、当該土地の所有者、占有者その他の関係者に対し、著しい損害を及ぼす虞のある措置は、させてはならない。
一 史跡名勝天然記念物に関する現状変更又は保存に影響を及ぼす行為の許可の申請があつたとき。
二 史跡名勝天然記念物がき揖し、又は衰亡しているとき。
三 史跡名勝天然記念物が滅失し、き損し、衰亡し、又は盗み取られる虞のあるとき。
四 特別の事情によりあらためて特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物としての価値を調査する必要があるとき。
2 前項の規定による調査又は措置によつて損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
3 第1項の規定により立ち入り、調査する場合には、第55条第2項の規定を、前項の場合には、第41条第2項から第4項までの規定を準用する。


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