第3章 有形文化財

第1節 重要文化財

第一款 指定

 (指定)
第27条 文部大臣は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。
2 文部大臣は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。

 (告示、通知及び指定書の交付)
第28条 前条の規定による指定は、その旨を官報で告示するとともに、当該国宝又は重要文化財の所有者に通知してする。
2 前条の規定による指定は、前項の規定による官報の告示があった日からその効力を生ずる。但し、当該国宝又は重要文化財の所有者に対しては、同項の規定による通知が当該所有者に到達した時からその効力を生ずる。
3 前条の規定による指定をしたときは、文部大臣は、当該国宝又は重要文化財の所有者に指定書を交付しなければならない。
4 指定書に記載すべき事項その他指定書に関し必要な事項は、文部省令で定める。
5 第3項の規定により国宝の指定書の交付を受けたときは、所有者は、30日以内に国宝に指定された重要文化財の指定書を文部大臣に返付しなければならない。

 (解除)
第29条 国宝又は重要文化財が国宝又は重要文化財としての価値を失った場合その他特殊の事由があるときは、文部大臣は、国宝又は重要文化財の指定を解除することができる。
2 前項の規定による指定の解除は、その旨を官報で告示するとともに、当該国宝又は重要文化財の所有者に通知してする。
3 第1項の規定による指定の解除には、前条第2項の規定を準用する。
4 第2項の通知を受けたときは、所有者は、30日以内に指定書を文部大臣に返付しなければならない。
5 第1項の規定により国宝の指定を解除した場合において当該有形文化財につき重要文化財の指定を解除しないときは、文部大臣は、直ちに重要文化財の指定書を所有者に交付しなければならない。  

第二款 管理

 (管理方法の指示)
第30条 文化庁長官は、重要文化財の所有者に対し、重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。

 (所有者の管理義務及び管理責任者)
第31条 重要文化財の所有者は、この法律並びにこれに基いて発する文部省令及び文化庁長官の指示に従い、重要文化財を管理しなければならない。
2 重要文化財の所有者は、特別の事情があるときは、適当な者をもっぱら自己に代り当該重要文化財の管理の責に任ずべき者(以下この節及び第6章において「管理責任者」という。)に選任することができる。
3 前項の規定により管理責任者を選任したときは、重要文化財の所有者は、文部省令の定める事項を記載した書面をもって、当該管理責任者と連署の上20日以内に文化庁長官に届け出なければならない。管理責任者を解任した場合も同様とする。
4 管理責任者には、前条及び第1項の規定を準用する。

 (所有者又は管理責任者の変更)
第32条 重要文化財の所有者が変更したときは、新所有者は、文部省令の定める事項を記載した書面をもって、且つ、旧所有者に対し交付された指定書を添えて、20日以内に文化庁長官に届け出なければならない。
2 重要文化財の所有者は、管理責任者を変更したときは、文部省令の定める事項を記載した書面をもって、新管理責任者と連署の上20日以内に文化庁長官に届け出なければならない。この場合には、前条第3項の規定は、適用しない。
3 重要文化財の所有者又は管理責任者は、その氏名若しくは名称又は住所を変更したときは、文部省令の定める事項を記載した書面をもって、20日以内に文化庁長官に届け出なければならない。氏名若しくは名称又は住所の変更が重要文化財の所有者に係るときは、届出の際指定書を添えなければならない。

 (管理団体による管理)
第32条の2 重要文化財につき、所有者が判明しない場合又は所有者若しくは管理責任者による管理が著しく困難若しくは不適当であると明らかに認められる場合には、文化庁長官は適当な地方公共団体その他の法人を指定して、当該重要文化財の保存のため必要な管理(当該重要文化財の保存のため必要な施設、設備その他の物件で当該重要文化財の所有者の所有又は管理に属するものの管理を含む。)を行わせることができる。
2 前項の規定による指定をするには、文化庁長官は、あらかじめ当該重要文化財の所有者(所有者が判明しない場合を除く。)及び権原に基く占有者並びに指定しようとする地方公共団体その他の法人の同意を得なければならない。
3 第1項の規定による指定は、その旨を官報で告示するとともに、前項に規定する所有者、占有者及び地方公共団体その他の法人に通知してする。
4 第1項の規定による指定には、第28条第2項の規定を準用する。
5 重要文化財の所有者又は占有者は、正当な理由がなくて、第1項の規定による指定を受けた地方公共団体その他の法人(以下この節及び第6章において「管理団体」という。)が行う管理又はその管理のため必要な措置を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。
6 管理団体には、第30条及び第31条第1項の規定を準用する。
第32条の3 前条第1項に規定する事由が消滅した場合その他特殊の事由があるときは、文化庁長官は、管理団体の指定を解除することができる。
2 前項の規定による解除には、前条第3項及び第28条第2項の規定を準用する。
第32条の4 管理団体が行う管理に要する費用は、この法律に特別の定のある場合を除いて、管理団体の負担とする。
2 前項の規定は、管理団体と所有者との協議により、管理団体が行う管理により所有者の受ける利益の限度において、管理に要する費用の一部を所有者の負担とすることを妨げるものではない。

 (滅失、き損等)
第33条 重要文化財の全部又は一部が滅失し、若しくはき損し、又はこれを亡失し、若しくは盗み取られたときは、所有者(管理責任者又は管理団体がある場合は、その者)は、文部省令の定める事項を記載した書面をもって、その事実を知った日から10日以内に文化庁長官に届け出なければならない。

 (所在の変更)
第34条 重要文化財の所在の場所を変更しようとするときは、重要文化財の所有者(管理責任者又は管理団体がある場合は、その者)は、文部省令の定める事項を記載した書面をもって、且つ、指定書を添えて、所在の場所を変更しようとする日の20日前までに文化庁長官に届け出なければならない。但し、文部省令の定める場合には、届出を要せず、若しくは届出の際指定書の添附を要せず、又は文部省令の定めるところにより所在の場所を変更した後届け出ることをもって足りる。  

第三款 保護

 (修理)
第34条の2 重要文化財の修理は、所有者が行うものとする。但し、管理団体がある場合は、管理団体が行うものとする。  (管理団体による修理)
第34条の3 管理団体が修理を行う場合は、管理団体は、あらかじめ、その修理方法及び時期について当該重要文化財の所有者(所有者が判明しない場合を除く。)及び権原に基く占有者の意見を聞かなければならない。
2 管理団体が修理を行う場合には、第32条の2第5項及び第32条の4の規定を準用する。

 (管理又は修理の補助)
第35条 重要文化財の管理又は修理につき多額の経費を要し、重要文化財の所有者又は管理団体がその負担に堪えない場合その他特別の事情がある場合には、政府は、その経費の一部に充てさせるため、重要文化財の所有者又は管理団体に対し補助金を交付することができる。
2 前項の補助金を交付する場合には、文化庁長官は、その補助の条件として管理又は修理に関し必要事項を指示することができる。
3 文化庁長官は、必要があると認めるときは、第1項の補助金を交付する重要文化財の管理又は修理について指揮監督することができる。

 (管理に関する命令又は勧告)
第36条 重要文化財を管理する者が不適任なため又は管理が適当でないため重要文化財が滅失し、き損し、又は盗み取られる虞があると認められるときは、文化庁長官は、所有者、管理責任者又は管理団体に対し、重要文化財の管理をする者の選任又は変更、管理方法の改善、防火施設その他の保存施設の設置その他管理に関し必要な措置を命じ、又は勧告することができる。
2 前項の規定により命令又は勧告に基いてする措置のために要する費用は、文部省令の定めるところにより、その全部又は一部を国庫の負担とすることができる。
3 前項の規定により国庫が費用の全部又は一部を負担する場合には、前条第3項の規定を準用する。

 (修理に関する命令又は勧告)
第37条 文化庁長官は、国宝がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、所有者又は管理団体に対し、その修理について必要な命令又は勧告をすることができる。
2 文化庁長官は、国宝以外の重要文化財がき損している場合において、その保存のため必要があると認めるときは、所有者又は管理団体に対し、その修理について必要な勧告をすることができる。
3 前2項の規定による命令又は勧告に基いてする修理のために要する費用は、文部省令の定めるところにより、その全部又は一部を国庫の負担とすることができる。
4 前項の規定により国庫が費用の全部又は一部を負担する場合には、第35条第3項の規定を準用する。

 (文化庁長官による国宝の修理等の施行)
第38条 文化庁長官は、左の各号の一に該当する場合においては、国宝につき自ら修理を行い、又は滅失、き損若しくは盗難の防止の措置をすることができる。
一 所有者、管理責任者又は管理団体が前2条の規定による命令に従わないとき。
二 国宝がき損している場合又は滅失し、き損し、若しくは盗み取られる虞がある場合において、所有者、管理責任者又は管理団体に修理又は滅失、き損若しくは盗難の防止の措置をさせることが適当でないと認められるとき。
2 前項の規定による修理又は措置をしようとするときは、文化庁長官は、あらかじめ、所有者、管理責任者又は管理団体に対し、当該国宝の名称、修理又は措置の内容、着手の時期その他必要と認める事項を通知しなければならない。
第39条 文化庁長官は、前条第1項の規定による修理又は措置をするときは、文化庁の職員のうちから、当該修理又は措置の施行及び当該国宝の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。
2 前項の規定により責に任ずべき者と定められた者は、当該修理又は措置の施行に当るときは、その身分を証明する証票携帯し、関係者の請求があったときは、これを示し、且つ、その正当な意見を十分に尊重しなければならない。
3 前条第1項の規定による修理又は措置の施行には、第32条の2第5項の規定を準用する。
第40条 第38条第1項の規定による修理又は措置のために要する費用は、国庫の負担とする。
2 文化庁長官は、文部省令の定めるところにより、第38条第1項の規定による修理又は措置のために要した費用の一部を所有者(管理団体がある場合は、その者)から徴収することができる。但し、同条第1項第2号の場合には、修理又は措置を要するに至った事由が所有者、管理責任者若しくは管理団体の責に帰すべきとき、又は所有者若しくは管理団体がその費用の一部を負担する能力があるときに限る。
3 前項の規定による徴収については、行政代執行法(昭和23年法律第43号)第5条及び第6条の規定を準用する。
第41条 第38条第1項の規定による修理又は措置によって損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
2 前項の補償の額は、文化庁長官が決定する。
3 前項の規定による補償額に不服のある者は、訴をもってその増額を請求することができる。但し、前項の決定の通知を受けた日から3箇月を経過したときは、この限りでない。
4 前項の訴えにおいては、国を被告とする。

 (補償等に係る重要文化財譲渡の場合の納付金)
第42条 国が修理又は滅失、き損若しくは盗難の防止の措置(以下この条において、「修理等」という。)につき第35条第1項の規定により補助金を交付し、又は第36条第2項、第37条第3項若しくは第40条第1項の規定により費用を負担した重要文化財のその当時における所有者又はその相続人、受遺者若しくは受贈者(第二次以下の相続人、受遺者又は受贈者を含む。以下この条において同じ。)(以下この条において、「所有者等」という。)は、補助又は費用負担に係る修理等が行われた後当該重要文化財を有償で譲り渡した場合においては、当該補助金は又は負担金の額(第40条第1項の規定による負担金については、同条第2項の規定により所有者から徴収した部分を控除した額をいう。以下この条において同じ。)の合計額から当該修理等が行われた後重要文化財の修理等のため自己の費した金額を控除して得た金額(以下このにおいて、「納付金額」という。)を、文部省令の定めるところにより国庫に納付しなければならない。
2 前項に規定する「補助金又は負担金の額」とは、補助金又は負担金の額を、補助又は費用負担に係る修理等を施した重要文化財又はその部分につき文化庁長官が個別的に定める耐用年数で除して得た金額に、更に当該耐用年数から修理等を行った時以後重要文化財の譲渡の時までの年数を控除した残余の年数(1年に満たない部分があるときは、これを切り捨てる。)を乗じて得た金額に相当する金額とする。
3 補助又は費用負担に係る修理等が行われた後、当該重要文化財が所有者等の責に帰することのできない事由により著しくその価値を減じた場合又は当該重要文化財を国に譲り渡した場合には、文化庁長官は、納付金額の全部又は一部の納付を免除することができる。
4 文化庁長官の指定する期限までに納付金額を完納しないときは、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。この場合における徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
5 納付金額を納付する者が相続人、受遺者又は受贈者であるときは、第一号に定める相続税額又は贈与税額と第二号に定める額との差額に相当する金額を第三号に定める年数で除して得た金額に第四号に定める年数を乗じて得た金額をその者が納付すべき納付金額から控除するものとする。
一 当該重要文化財の取得につきその者が納付した、又は納付すべき相続税額又は贈与税額
二 前号の相続税額又は贈与税額の計算の基礎となった課税価格に算入された当該重要文化財又はその部分につき当該相続、遺贈又は贈与の時までに行った修理等に係る第1項の補助金又は負担金の額の合計額を当該課税価格から控除して得た金額を課税価格として計算した場合に当該重要文化財又はその部分につき納付すべきこととなる相続税額又は贈与税額に相当する額
三 第2項の規定により当該重要文化財又はその部分につき文化庁長官が定めた耐用年数から当該重要文化財又はその部分の修理等を行った時以後当該重要文化財の相続、遺贈又は贈与の時までの年数を控除した残余の年数(1年に満たない部分があるときは、これを切り捨てる。)
四 第2項に規定する当該重要文化財又はその部分についての残余の耐用年数
6 前項第二号に掲げる第1項の補助金又は負担金の額については、第2項の規定を準用する。この場合において、同項中「譲渡の時」とあるのは、「相続、遺贈又は贈与の時」と読み替えるものとする。
7 第1項の規定により納付金額を納付する者の同項に規定する譲渡に係る所得税法(昭和40年法律第33号)第33条第1項に規定する譲渡所得の金額の計算については、第1項の規定により納付する金額は、同条第3項に規定する資産の譲渡に要した費用とする。

 (現状変更等の制限)
第43条 重要文化財に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない。ただし、現状の変更については維持の措置又は非常災害のために必要な応急措置を執る場合、保存に影響を及ぼす行為については影響の軽微である場合は、この限りではない。
2 前項但書に規定する維持の措置の範囲は、文部省令で定める。
3 文化庁長官は、第1項の許可を与える場合において、その許可の条件として同項の現状の変更又は保存に影響を及ぼす行為に関し必要な指示をすることができる。
4 第1項の許可を受けた者が前項の許可の条件に従わなかったときは、文化庁長官は、許可に係る現状の変更若しくは保存に影響を及ぼす行為の停止を命じ、又は許可を取り消すことができる。
5 第1項の許可を受けることができなかったことにより、又は第3項の許可の条件を付せられたことによって損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
6 前項の場合には、第41条第2項から第4項までの規定を準用する。

 (修理の届出等)
第43条の2 重要文化財を修理しようとするときは、所有者又は管理団体は、修理に着手しようとする日の30日前までに、文部省令の定めるところにより、文化庁長官にその旨を届け出なければならない。但し、前条第1項の規定により許可を受けなければならない場合その他文部省令の定める場合は、このかぎりでない。
2 重要文化財の保護上必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項の届出に係る重要文化財の修理に関し技術的な指導と助言を与えることができる。

 (輸出の禁止)
第44条 重要文化財は、輸出してはならない。但し、文化庁長官が文化の国際的交流その他の事由により特に必要と認めて許可した場合は、この限りでない。

 (環境保全)
第45条 文化庁長官は、重要文化財の保存のため必要があると認めるときは、地域を定めて一定の行為を制限し、若しくは禁止し、又は必要な施設をすることを命ずることができる。
2 前項の規定による処分によって損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。
3 前項の場合には、第41条第2項から第4項までの規定を準用する。

 (国に対する売渡しの申出)
第46条 重要文化財を有償で譲り渡そうとする者は、譲渡の相手方、予定対価の額(予定対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積った額。以下同じ。)その他文部省令で定める事項を記載して書面をもって、まず文化庁長官に国に対する売渡しの申出をしなければならない。
2 前項の書面においては、当該相手方に対して譲り渡したい事情を記載することができる。
3 文化庁長官は、前項の規定により記載された事情を相当と認めるときは、当該申出のあった後30日以内に当該重要文化財を買い取らない旨の通知をするものとする。
4 第1項の規定により売渡しの申出のあった後30日以内に文化庁長官が当該重要文化財を国において買い取るべき旨の通知をしたときは、前項の規定による申出書に記載された予定対価の額に相当する代金で、売買が成立したものとみなす。
5 第1項に規定する者は、前項の期間(その期間内に文化庁長官が当該重要文化財を買い取らない旨の通知をしたときは、その時までの期間)内は、当該重要文化財を譲り渡してはならない。

 (管理団体による買取りの補助)
第46条の2 国は、管理団体である地方公共団体その他の法人が、その管理に係る重要文化財(建造物その他の土地の定着物及びこれと一体のものとして当該重要文化財に指定された土地に限る。)で、その保存のため特に買い取る必要があると認められるものを買い取る場合には、買取りに要する経費の一部を補助することができる。
2 前項の場合には、第35条第2項及び第3項並びに第42条の規定を準用する。

 (管理又は修理の受託又は技術的指導)
第47条 重要文化財の所有者(管理団体がある場合は、その者)は、文化庁長官の定める条件により、文化庁長官に重要文化財の管理(管理団体がある場合を除く。)又は修理を委託することができる。
2 文化庁長官は、重要文化財の保存上必要があると認めるときは、所有者(管理団体がある場合は、その者)に対し、条件を示して、文化庁長官にその管理(管理団体がある場合を除く。)又は修理を委託するように勧告することができる。
3 前2項の規定により文化庁長官が管理又は修理の委託を受けた場合には、第39条第1項及び第2項の規定を準用する。
4 重要文化財の所有者、管理責任者又は管理団体は、文部省令の定めるところにより、文化庁長官に重要文化財の管理又は修理に関し技術的指導を求めることができる。  

第四款 公開

 (公開)
第47条の2 重要文化財の公開は、所有者が行うものとする。但し、管理団体がある場合は、管理団体が行うものとする。
2 前項の規定は、所有者又は管理団体の出品に係る重要文化財を、所有者又は管理団体以外の者が、この法律の規定により行う公開の用に供することを妨げるものではない。
3 管理団体は、その管理する重要文化財を公開する場合には、当該重要文化財につき観覧料を徴収することができる。

 (文化庁長官による公開)
第48条 文化庁長官は、重要文化財の所有者(管理団体がある場合は、その者)に対し、1年以内の期間を限って、国立博物館その他の施設において文化庁長官の行う公開の用に供するため重要文化財を出品することを勧告することができる。
2 文化庁長官は、国庫が管理又は修理につき、その費用の全部若しくは一部を負担し、又は補助金を交付した重要文化財の所有者(管理団体がある場合は、その者)に対し、1年以内の期間を限って、国立博物館その他の施設において文化庁長官の行う公開の用に供するため重要文化財を出品することを命ずることができる。
3 文化庁長官は、前項の場合において必要があると認めるときは、1年以内の期間を限って、出品の期間を更新することができる。但し、引き続き5年をこえてはならない。
4 第2項の命令又は前項の更新があったときは、重要文化財の所有者又は管理団体は、その重要文化財を出品しなければならない。
5 前4項に規定する場合の外、文化庁長官は、重要文化財の所有者(管理団体がある場合は、その者)から国立博物館その他の施設において文化庁長官の行う公開の用に供するため重要文化財を出品したい旨の申出があった場合において適当と認めるときは、その出品を承認することができる。
第49条 文化庁長官は、前条の規定により重要文化財が出品されたときは、第100条に規定する場合を除いて、文化庁の職員のうちから、その重要文化財の管理の責に任ずべき者を定めなければならない。
第50条 第48条の規定による出品のために要する費用は、文部省令の定める基準により、国庫の負担とする。
2 政府は、第48条の規定により出品した所有者又は管理団体に対し、文部省令の定める基準により、給与金を支給する。

 (所有者等による公開)
第51条 文化庁長官は、重要文化財の所有者又は管理団体に対し、3箇月以内の期間を限って、重要文化財の公開を勧告することができる。
2 文化庁長官は、国庫が管理、修理又は買取りにつき、その費用の全部若しくは一部を負担し、又は補助金を交付した重要文化財の所有者又は管理団体に対し、3箇月以内の期間を限って、その公開を命ずることができる。
3 前項の場合には、第48条第4項の規定を準用する。
4 文化庁長官は、重要文化財の所有者又は管理団体に対し、前3項の規定による公開及び当該公開に係る重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。
5 重要文化財の所有者、管理責任者又は管理団体が前項の指示に従わない場合には、文化庁長官は、公開の停止又は中止を命ずることができる。
6 第2項及び第3項の規定による公開のために要する費用は、文部省令の定めるところにより、その全部又は一部を国庫の負担とすることができる。
7 前項に規定する場合のほか、重要文化財の所有者又は管理団体がその所有者又は管理に係る重要文化財を公開するために要する費用は、文部省令で定めるところにより、その全部又は一部を国庫の負担とすることができる。
第51条の2 前条の規定による公開の場合を除き、重要文化財の所在の場所を変更してこれを公衆の観覧に供するため第34条の規定による届出があった場合には、前条第4項及び第5項の規定を準用する。

 (損失の補償)
第52条 第48条又は第51条第1項、第2項若しくは第3項の規定により出品し、又は公開したことに起因して当該重要文化財が滅失し、又はき損したときは、国は、その重要文化財の所有者に対し、その通常生ずべき損失を補償する。ただし、重要文化財が所有者、管理責任者又は管理団体の責に帰すべき事由によって滅失し、又はき損した場合は、この限りでない。
2 前項の場合には、第41条第2項から第4項までの規定を準用する。

 (所有者等以外の者による公開)
第53条 重要文化財の所有者及び管理団体以外の者がその主催する展覧会その他の催しにおいて重要文化財を公衆の観覧に供しようとするときは、文化庁長官の許可を受けなけれがならない。ただし、文化庁長官以外の国の機関若しくは地方公共団体があらかじめ文化庁長官の承認を受けた博物館その他の施設(以下この項において「公開承認施設」という。)において展覧会その他の催しを主催する場合又は公開承認施設の設置者が当該公開承認施設においてこれらを主催する場合は、この限りでない。
2 前項ただし書の場合においては、同項に規定する催した者(文化庁長官を除く)は、重要文化財を公衆の観覧に供した期間の最終日の翌日から起算して20日以内に、文部省令で定める事項を記載した書面をもって、文化庁長官に届け出るものとする。
3 文化庁長官は、第1項の許可を与える場合において、その許可の条件として、許可に係る公開及び当該公開に係る重要文化財の管理に関し必要な指示をすることができる。
4 第1項の許可を受けた者が前項の許可の条件に従わなかったときは、文化庁長官は、許可に係る公開の停止を命じ、又は許可を取り消すことができる。  

第五款 調査

 (保存のための調査)
第54条 文化庁長官は、必要があると認めるときは、重要文化財の所有者、管理責任者又は管理団体に対し、重要文化財の現状又は管理、修理若しくは環境保全の状況につき報告を求めることができる。
第55条 文化庁長官は、次の各号の一に該当する場合において、前条の報告によってもなお重要文化財に関する状況を確認することができず、かつ、その確認のため他に方法がないと認めるときは、調査に当たる者を定め、その所在する場所に立ち入ってその現状又は管理、修理若しくは環境保全の状況につき実地調査をさせることができる。
一 重要文化財に関し現状の変更又は保存に及ぼす行為につき許可の申請があったとき。
二 重要文化財がき損しているとき又はその現状若しくは所在の場所につき変更があったとき。
三 重要文化財が滅失し、き損し、又は盗み取られる虞のあるとき。
四 特別の事情によりあらためて国宝又は重要文化財としての価値を監査する必要があるとき。
2 前項の規定により立ち入り、調査する場合においては、当該調査に当る者は、その身分を証明する証票を携帯し、関係者の請求があったときは、これを示し、且つ、その正当な意見を十分に尊重しなければならない。
3 第1項の規定による調査によって損失を受けた者に対しては、国は、その通常生ずべき損失を補償する。 
4 前項の場合には、第41条第2項から第4項までの規定を準用する。  

第六款 雑則

 (所有者変更等に伴う権利義務の承継)
第56条 重要文化財の所有者が変更したときは、新所有者は、当該重要文化財に関しこの法律に基いてする文化庁長官の命令、勧告、指示その他の処分による旧所有者の権利義務を承継する。
2 前項の場合には、旧所有者は、当該重要文化財の引渡と同時にその指定書を新所有者に引き渡さなければならない。
3 管理団体が指定され、又はその指定が解除された場合には、第1項の規定を準用する。但し、管理団体が指定された場合には、もっぱら所有者に属すべき権利義務については、この限りでない。


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