99.9.19…99.11.14

埋文調査事業体の情報化モデル(3) 

電子化をなぜ実行しないのか

 報告書電子化の可能性は、誰しも認めるところだろう。現実に、印刷報告書の全頁をデジタル化してCD-ROMに収録し、全国配付された例は、1998年以降いくつか存在している。しかし殆どの埋文関係者にとって、電子化は将来の可能性であって、当面の現実問題ではないようだ。その理由は、電子化の進捗度や情報化に対する理解度によって様々であろうけれど、概ね以下のようなものであろう。

  1. 未だコンピュータが導入されていない
  2. コンピュータはあるけれど、データ処理やワープロにしか使ってない。それ以上のこと、特にDTPはやってない
  3. HTMLを一から書くのはともかく、HTMLエディタを使えば作ることは出来る。だから、チャレンジしてみようと思っている
  4. まだ、電子報告書のフォーマットが確立していないのではないか。HTMLやPDFは、分らないでもないが、どうも実例を見てもしっくりこない
  5. コンピュータをデータ処理には使うけれど、コンピュータで本は読めない、読めたものではない
  6. 予算がつかない。あるいは迂闊にCD-ROM化すると、印刷版の廃止を余儀無くされるかもしれない
  7. 電子化・情報化は総合的に進めるので、まだ多少時間はかかるが、いずれ実現する

 いくら挙げてもきりがないだろうし、逐一反論したいが、技術的な問題は本サイト内の他のページに任せることにして、ここで主張したいのは次の点である。

今直ぐ決定すべきこと

 報告書の電子化は、埋文側の技術レベルを、必ずしも必要としない。印刷会社にDTPとPDFを任せればよい。そのことによって、これまでよりコストがかさむことはない。DTPは、印刷業界の必然であり(出来ない方がどうかしている)、DTPを実践していれば、PDF化のコストは殆どゼロである。

 印刷会社のDTPは、Windows上の業務用のものかもしれない。何であれ、ポストスクリプトベースなので、PDFとの親和性は高い。

 今直ぐCD-ROMの作成には踏み切れない、という向きも多いだろう(理由は知らないけれど)。いずれ実現しますよ、という向きも多いかもしれない。そうであっても、後からデータのデジタル化を行うのは、さらに困難なことを知って欲しい。電子書籍コンソーシアムにおける書籍の電子化が、本をスキャンして画像データにすることだったのは、本来的なデータ化のコストが一桁違うからである(文字校正やレイアウト再現性の問題も大きい−PDFでいいだろっ!とは思うのだが)。結局、後から実行する場合は、画像化しかない。その場合、データ容量は肥大化する。文庫本でも400KB/頁になってしまうらしい(A4判報告書で実験したところ170KB/頁であったが)。また目次くらいは載せられるが、テキスト全文検索までは対応できない。

 報告書の作成時(印刷した時)に、データ化も実行しておくべきなのだ。そのための最短コースはPDFである。要するに、印刷の仕様書に、DTP方式の集版と、PDF変換・PDFファイル納入を条件にしておけばいいのだ。版下は在来型入稿で充分である(無論データ入稿が理想的だが)。納入されたPDFは、今直ぐCD-ROM化しなくてもいい。PDFファイルを保管しておくだけでもいい。

 オフセット印刷対応のPDF(写真には最小限の圧縮をかけてよい)と、配付用のPDF(写真は100〜150dpi、線画は300〜600dpi、日本語フォント埋込みはしない)の2種類を、納入してもらったらいい(配付用のファイルは、むやみに肥大化させるべきでない)。また、納入メディアはCD-R、ファイル名・フォルダ名は、ISO9660のレベル1準拠にすべきだろう。

 これを実行するのに、何も余分な事態は発生しない。CD-ROM化や、Webでの配付などは、いずれ取組むことで構わない。とにかく、とりあえず、データ化しておくことだ。


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