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埋文調査事業体の情報化モデル(2) 

歴史的経過

 埋文調査事業体の電子化/情報化は、以下のような経過を辿るだろう。

 では「データベース」はどこにあるかというと、これは最初から最後まで関係してくる。が、その実現のためには多くの課題があり、それらを一つ一つ地道に解決していかなければならない。少なくとも個々のデータを、適切にデジタル化していくことが前提になる。

 道具化は、無論今でも進行中である。コンピュータを道具と見ると、アナログな手法とデジタルな手法を、適材適所で組み合わせて使えばいいことになる(これは一面では真実)。しかし道具論の立場では、役立てばよしとなり、データの配付とか保存していくとか、後の事が浮かばない。

 メディア化は、インターネットによって世間では急速に進行中である。紙ではなく、デジタルメディアで情報をやりとりするという路線である。考古学や埋文の世界でも、デジタル化が資料(文献等)の軽量化と検索性の向上につながる、という認識が、おぼろげながら共有されつつあると考える。

 サイバー化は、まだ憧憬でしかない。サイバー化は、データの再利用可能性と、データ相互の有機的な結びつきが極限化された状態である。それは、データの社会化ともいえる。

道具のシステム

 現時点でコンピュータを導入していくとすれば、どのようなシステムが基準になるだろうか。色々考え方はあるだろうが、ここでは一例として、あまり贅沢しない組み合わせを考えてみた(…00.8.17現在)。これでも合計70万円は越えるようだ。ケーブル類はリストに入れていない。本当は、UPS(無停電電源)も必須である。また(職場の)インターネット接続も、今後は必須と考えたい。

ハードウェア
分類製造元名称備考
本体AppleG4 Cube450Mhz
増設メモリ-128MB標準64+128→合計192MB
ディスプレイApple17' CRT新型純正品
可搬メディア-MO 640MBIEEE1394対応
プリンタEPSONLP-8400PS3ポストスクリプト対応レーザープリンタ
EPSONイーサネットイーサネットインターフェイス
スキャナEPSONGT-8700FA4、1600dpi、フィルム用透過光源セット
ソフトウェア
分類製造元名称備考
編集Adobe SystemsPageMaker 6.5 PlusいわゆるDTP
画像処理Adobe SystemsPhotoshop LEPageMaker 6.5 Plus に同梱されている
文書処理Adobe SystemsAcrobat 4.05校正にも使用できる
フォントAdobe SystemsATMフォントモリサワ系5書体
作図MacromediaFreeHand 9扱いやすい
表計算AppleAppleWorks 6本当は統合ソフト
作動環境整備NortonNorton Utilitiesやはり必需品
文章作成まつもとJeditエディタ(現行バージョンはシェアウェア)

※Excel(Wordと合わせてOffice)は超メジャーなアプリケーションなのだが、(いまやオフィスソフトも無料化という時代に)意外と高価である。Windowsなら、Mac版Officeの実売価格+2万円で、マシンごと買えてしまう(Macでも同様のセットがあればいいのだが...)。ここではOfficeではなく、ワークスソフト系のAppleWorks 6とした。ワープロは、エディタとDTPがあれば、無くても大丈夫である。なおフォントについては、プリンタのハードディスクに格納するのがベストだが、一般に高価だし、フォントの好みもあるし、難しいところである。フォントは、イメージセッタに準備されているかどうか、印刷会社に事前に確認する必要がある。モリサワ系基本5書体(明朝体、中ゴシック体、太ミン A101、太ゴ B101、じゅん 101)ならば100%用意されている。ただしフォントがOCFからCIDへ転換したことは、様々な問題を生じているらしい。CIDで統一すればいいのだが、当分は過渡期が続く。

 DTPを実行するためには、きちんとしたDTPアプリケーションとDTPの知識が必要である。基本的な知識の学習は、独学では難しいかもしれない。事実上、現時点での選択肢は、MacでのPageMaker 6.5 Plusということになる(Photoshop LEとPage Millが付属して4万円程度)。Quarkは高過ぎる。どうせなら、FrameMakerがいいのだが(高価だし)、今後はInDesignが注目される(日本語版発売は2001年2月上旬、約98,000円)。

 DTPは、ポストスクリプトというベースがあるとは申せ、OSやフォントなど様々な問題があり、一様なソリューションを提示できない。(今後変わる可能性があるが)王道としては、モリサワの基本5書体を搭載した、ポストスクリプトレーザープリンタが基本になる(プレインストールでない限り、プリンタフォントは結構高価である)。

 CADなら一般にWindowsが強い(何にでも例外はあるが...)。一例をあげるとすれば、AutoSketchだろう(1万円程度、ただし既に廃番)。トータルステーションとの連繋の都合上、Windows環境を余儀無くされる場合も多いだろう(何にでも例外はあるが...)。図化ソフトには、CAD系とポストスクリプト系があるが、イラスト作成を考えると、後者ということになる。そもそもDTPでは、ベクター画像は本来EPSしか受け付けない。

 なお、イラストレータとDXFやDWG等のフォーマットとの相互変換を行うコンバータもある(アプリクラフトのCADgateなど)。

データベースのトレンド

 パソコン活用の観点から、MS-DOSの時代から各種のデータベースアプリケーションが利用されてきた。今ならAccessやFileMaker Proなどが有名どころである。実際には、台帳作成には表計算ソフトをお薦めする。リレーショナルデータベースは本来、正規化など、理論的なアプローチが欠かせない。

 データベースが有効なのは、ある程度以上大規模な場合で、データの一元性によって、かえってデータのメンテナンスが容易になる場合である。

 データベースをめぐる最近のトレンドとしては、

 などが挙げられる。グループウェアは、情報共有のシステムである。これを拡大すると、ナレッジマネジメントにつながってくる。Webアプリケーションは、Webブラウザが、アプリケーションのインターフェイスになることである。サーバがしっかりしていれば、ユーザのマシンにはブラウザだけがあればいいという代物である。

 XML(eXtensible Markup Language)はテキストベースのデータフォーマットであるが、情報共有の最終兵器である。純粋なXMLデータベースはまだ限られているようだが、データフォーマットとして、あるいは異なるシステム間のデータ交換用のフォーマットとして、XMLのサポートは必須となりつつある。性能を最適化するのは、常にクローズドなシステムだが、XMLによってこそデータの社会化が実現されるのだと思う。やはりオープンスタンダードが重要である。

 ただし本格的なXML化について、特に、考古学的に意味のある情報単位(エレメント)を盛り込んでいく場合、タグの設定について社会的な取組みが必要になる。そうした気運は、残念ながら(XMLの存在すら殆ど意識されてない状況では)未だ希薄である。

情報公開のデジタル化

 埋文の行政としての立場は、はっきりしている。(考古資料としての)文化財保護である。そのための埋文情報の戦略的普及である(その限りでは、紙メディアでやるべきことはいっぱいある)。そして、インターネットという技術が存在し、すでにかなり普及していることは、今や埋文行政の大前提である。僅か数年前とは、全く技術の状況が異なるのだ。早急に、本格的なインターネット対応を図り、まともな情報デザインの元、埋文情報を出していくべきである。無論、在来型の印刷物との平行作業である(その場合にPDFが有効なことは知っておいて欲しい…HTMLは必ずしも印刷を前提としなくてもよい速報的な情報に有効である)。

 印刷や郵便、FAXなどの在来型の手段は、コスト消耗的である。一方、本格的なインターネット化のコストは如何ほどだろうか。少なくとも、情報を享受する側のコストは下がる。インターネットやCD-ROMは、ユーザの側に情報コストを転嫁しているともいえるが、コスト構造は全体で見るべきで、埋文の情報化に関わり無くエンドユーザの電子化は進行していく。

 情報公開のデジタル化は、企業のように凝る前に、簡単にできることがいっぱいある。その点に気付けば、本格的なインターネット対応を図ったとしても、大したコストはかからない。むしろ情報デザインにこそ、コストをかけるべきである。


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