横田<miskij>萬や 着物道楽


2月・寒さが厳しい時こそ とんび
とんび


いわゆる「二重廻し」。英国のインバネスが由来。
ヨハネ・パウロが着込んでいるようなコートと思っていただこう。
あるいは、バットマン。
他には、「お坊さん」「ブラック・ジャック(手塚治虫氏の漫画)」、ひどいのだと、腹にウェストポーチを回していて膨らんでいたのを見て「妊娠5ヶ月」。

私は大阪・日本橋の古着屋さんで8000円で購入。真っ黒なので、色について若干の ためらいがあったものの、奈良の冬を想像してエイヤ、と。

何といっても和洋折衷を見事に実現した防寒着だと思う。
まず、ポケットの数が普通のコートと同じ。 ゆえに、和服姿で問題となる収納性がかなり解消される。
和服の袖を通すために、腋は結構大きくあいている。ゆえに、帯を押し下げ たりするのは難なくできる。
つまり、手をズボンのポケットにつっこむこともできる。 普通のコートでは裾をまくらなければ、ズボンのポケットに入れた財布やハンカチにたどりつけなかったのが、簡単にたどりつける。
もちろん、ウエストポーチを中に装着してても違和感は少ないだけでなく、とんびの中でモゾモゾやってモノを出し入れできるのも愉快。

暑ければケープを跳ね上げて袖を捲ることができる。
とはいうものの、私のはカシミヤ+ウールと保温性が優れており、気温が10度以下でないと10分も歩いただけで暑くなってしまう。
ちょっと地球の温暖化を恨めしく思ったりする。

襟回りには適当なスカーフを当てておくとアクセントにもなるし、襟首の汗で汚れるのも防げる。私はクリーム色のポリ布で短めのマフラーを作り、襟当てとしている。腰に廻せば、夜道でも認知されやすくなる。

とんびの裾は、足首まであった方が面白い。所作が着物とほとんど同じになり、また着物をすっぽり隠すので、着物で歩き回る練習の衣装としても悪くはないだろうか。ズボン姿で歩くときは、リズムよく歩くと裾がまとわりつきにくくなるようだ。そして何といっても醍醐味は風に向かって歩くと「ぶわー」とはためく様ではないか?

購入のヒント:
デパートでは、滅多に見かけないと思われる。見てきた方の情報によると10万円したそうだ。ちなみに、オーダーメードだと20〜30万円は覚悟した方が良いだろう。
なんせ、オーダーでの仕立て代だけでも10万円するそうな。

では、古着、というと、これがまた難しい。ウールは古くなるとゴワゴワと堅くなるという。私のは最近の誂え品だったようで、しなやかさを保っている。

少なくとも、普通のウールのコートを手に取って柔らかさを覚えてから見て回ることをおすすめしたい。

その他:
私が購入したときは、かなりの畳み皺が付いていたので、クリーニング屋に出した。 ら、たったの800円。普通のクリーニングは、プレス込みだそうで、ほとんど新品同様になりました。

お誂え品の質流れ品は、内ポケット上の名前刺繍を取り去った跡があるかもしれないが、適当な布を当てて穴を目立たなくすれば良いだろう。外から見える部分ではないのだし。
ポケットに何か入れるときは、底があるか確実に確認しておかないと、手を突っ込んだのは腋の中で、そのまま下に落としてしまう、なんてことも。実際、傘の袋をそうやって落としてなくしてしまいました。

それにしても、このような便利なコートが昭和30年頃にすたれてきたのは残念に思う。
最近は、若者が着ているのを見かけたり、また古着屋さんでも置いたそばから売れるなど、復権の日が期待できそうな声を聞く。

私も、ならまちをとんびで歩き回ろう。


追記:本家のインバネスには袖が付いています!簡単に言えばコートにマントを縫い付けた形です。つまりズボンのポケットに手を入れるには裾をまくる必要がありますので、さすがに身丈は腰くらいまでで妥協するのが無難かと。


追記2:
4月3日深夜、NHK で「にっぽんの夜」の再放送がありました。場所は山形の銀山温泉。(本放送は2月7日)

嵐山光三郎氏がインバネス姿で登場。しかも、珍しく紺色。
インバネスか、とんびか、どっちかなと見ていたら、旅館に上がって脱いだところで袖付きと判明。
でも、裏地が着物の羽裏によく使われる水色地の山水画とはお見事。


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