Queen&Paul Rogers

2005/10/27    さいたまスーパーアリーナ    【セットリスト】 →こちら



Queen+Paulのライブは感動的だった

QueenとPaul Rogersのライブは、予想以上に素晴らしかった。
武道館の1.5倍あると思われるスーパーアリーナは満員状態。
40代の男性が多かったが、子供連れの女性も多かった。

フレディがいないから、これはQueenじゃないと言われているが、当たり前だ。
これはブライアン+ロジャー+ポールのライブなのだ。

ステージには、ふたつのスクリーンが吊り下げられていた。さらに、ステージから5段ほど階段がついていて、それを降りると観客席まで花道が伸びている仕組みだ。
テレビ番組の収録もあるらしく、クレーンが上がったり下がったりしていた。

1曲目のReaching Out、さらにTie Your Mother Downが始まると、感激と懐かしさと感慨のため、目がうるんでしまった。
Queen、Queen。
これにはワケがある。→ワケへ



そんな素直でない、複雑な私なのに、ライブでは涙が止まらなかった。
特にブライアンがひとりで歌った「Love Of My Life」。これには絶句。「ここに来れなかったフレディのために」とブライアンが言ってから歌ったからだ。
優しく、大きな声で、しっかりとフレディの魂に届くように、心を込めて。
周りじゅう、たくさんのオヤジも泣いていた。あまりに感動的で。

なぜここにフレディがいない?残された者達は何を想う?何を願う?
だけど、フレディがいなくても、これだけ多くの人が集まり、フレディの作品を残されたメンバーで精一杯演奏し、歌い、楽しんでいる。
もう聴くことがないはずのQueenが今ここで演奏されている奇跡。
命は大切。作品には命が宿っている。魂が籠められている。フレディは作品と共に生き、歩んでいるのだ!!
これが感動せずにいられようか??
自分が積み重ねた年月の尊さを実感し、生きてることに感謝した。
深い思い入れもまた、一ファンとしての証なのだ。
。。。私が書くと大げさだが、この場にいた人たちは多かれ少なかれ同様に感じたんじゃないか!?
人に感動を与えるのは、人を想う心、一生懸命さなのだ!


PaulはQueenにマッチしていたか?

していた。
フレディの歌唱法は声にビブラートを加えず、伸ばしきっている。それに対し、Paulの歌唱法はソウルフルで抑揚をつけ、フェイクしている。根本的に違う。
けれどPaulはフレディに敬意を表し、フレディの歌い方を実践していた。
その歌声は、伝説のチャンピオンやKind Of Magicで本人のの声を流しているかと間違うくらいだった。
スローな中域の声はよく似ていた。
が、そこはPaul Rogers、高音や低音は自分の声でしっかり歌い、フレディのまねではなく、自分の声で歌うことをアピールしていた。
ポールは高音が苦しい場面もあったが、概ね衰えを見せずに美声を聴かせてくれた。
音程が完璧だし、リズムもいい。フレディとは違うんだという存在感があった。

なぜPaulをヴォーカリストにしたかがわかった。歌がうまいのだ。説得力があるのだ。自分の確固としたスタンスを持っているのだ。
Queenをいう確立された存在に新風を持ち込んでいた。
フレディでなくても、Paulでいいと、後半には思っていた。

それでもPaulは抑え気味だったんだなと気付いたのは、「We Will Rock You」でだ。
これは、Paulの個性が一番出ていた。土着的なリズムに洗練された歌声。違和感を感じた。
一緒に合唱する雄たけびソングだと思っていたのが、なんと聴いてしまったのだ。合唱はしたが。

Paulの個性が炸裂したのは、当然FreeやBad Companyの曲でだった。
まるで水を得た魚。ノリが違う。
Feel Like Making LoveやCan't Get Enough、All Right Nowなど、反復の多い曲では、一緒に歌い、拳を振り上げたが、乗れていない人達が女性を中心に1/4くらいいて、Paulがかわいそうだった。
Queenとは違うが、シンプルでRockの醍醐味を味わえるじゃないか!
しっかし、その時の演奏、ブライアンはともかく、ロジャーはやっつけ仕事みたいで笑えた。
Can't Get Enoughのツインギターの場面では、サポートギタリストのレスポールときれいにハモって、Queenにない良さも感じた。


日本仕様

それは、アンコール1曲目の「Born To Love You」だろう。
アンコールで暗闇の中、何者かが花道に出てきたのがわかる。
それは、ブライアンとロジャーだった。
ぱっと照明が照らされ、椅子とマイクスタンドが用意され、ブライアンとロジャーが歌う。アンプラグドだ。
途中からロジャーだけが歌い、ブライアンは12弦ギターに専念していた。
ここでのロジャーはすごかった。フレディの高音をものともせず、きれいに声を張り上げて歌いきった。
ロジャーの音域も、フレディの3オクターブに負けないくらい広い。信じられない。
今回のライブもDVD化されるのだろうか?このアプラグドはもう1度見たい。

フレディの曲ではあるけれど、アンプラグド化することによって、完全にブライアンとロジャーのものになっていた。
この曲を聴いて、今回のツアーはフレディのトリビュートだけでなく、Queen+Paulのカラーを色濃く出すという目的を達成したと思った。

それは、ボヘミアン・ラプソディでも感じた。
フレディの写真がスクリーンに写され、フレディのピアノと声が流れた。
フレディの声にうっとりする。プロモビデオが流れる。いい時代だったなぁ。
が、フレディだけじゃ終わらない。第3楽章の“So you think you can stone me〜”ではPaulが登場し、熱唱した。
そうだ、これが今のQueenの姿なのだ!
フレディのパターンの呪縛があるから、やりづらいだろうに、プレッシャーをものともせずに歌いきる!!
いやぁ〜、感動だ。すごいぞ、Paul!!
感傷と感動。

さらに、前に書いた「Love Of My Life」のあとは、「演奏するのは2回目です」という、ブライアンの「手を取り合って」
まさに日本ならでは。
Queenは日本を大切に考えてくれているよ。


ドラムソロ&ギターソロ

う〜ん、ソロはイマイチだった。
ロジャーのテクニカルとは思えないドコドコ叩き。
シングルのバスドラに、これまたシンプルな構成。いつかのプロモビデオの“こんなに使いこなせるのか?”と心配した大量のセットはない。
一通り叩いて、なんとか辿り着いた時はほっとした。ロジャーも疲れていた。

ブライアンのソロは長かった。炎のロックンロールのイントロを思わせる低音のリズミカルな演奏。そればっかりで飽きる。
かと思うと、ブライトン・ロックを思わせる単調なギターソロ。リズムギターとリードギターを同時にできるのはすごいと思うけど、それだけだよ。
ようやく高音の華麗ななめらかな演奏が聴けたのは良かった。
チョーキング多用の高音なので、とにかく音がなめらかできれい。早弾きはしないけど、この美しさとなめらかさがブライアンのギターなのだ。


細かい感想

・Crazy Little Thing Called Loveの「OK、フレディー」と声を掛ける場面では、「Ok、ポール」にしようかと迷ったが、結局「OK、フレディー」にした。周りもみんなフレディーだった。

・不勉強のため、ロジャーとブライアンが単独で歌う曲は半分はわからなかった。
が、どれも今のロジャーとブライアンを明確に伝えているようで、なかなか良かった。

・かなり長いライブで、アンコールでは「Was Born to Love You」と「The Show Must Go On」をやっていないのに気がついたが、「We Will Rock You」「We Are The Champions 」のことは忘れていた。
あらためて、レパートリーの多さに敬服した。

・Paulはマイクスタンド投げがうまい。100発100中!スティック落とした人がいたっけ。

・ジョンのジョの字も出てこなかった。地獄への道連れは演奏したが。
(写真はQueenのライブの看板。みんなこの前で撮影していた。Queenの新しいマークが映える)

・ブライアンとロジャーが目立つライブだった。フレディがいたらこんなに花道に出ることも、歌を歌うこともなかっただろう。
それがかえって余韻を残し、感動へ誘ったと思っている。

・Radio Ga Gaで、ロジャーほとんど歌ったあと、途中からPaulが登場して一緒に肩を組んで歌ったが、一瞬、“このおっさん、誰?”と思ってしまった。それほどまでにPaulは自然体だった。


・ブライアンのギターソロの最後で「さくら」を演奏した。友人がこないだのスコーピオンズみたい。。ぼそっと言ったのが印象的だった。

2005.10.30