木部与巴仁氏 タプカーラの彼方へ



『タプカーラの彼方へ』は、木部氏の伊福部氏に対する
20年もの取材の集大成です。

音楽家の伊福部昭氏は、1914年に釧路に生まれ、
9〜12歳という多感な時期を、音更村で過ごしました。
ここで体験したアイヌの歌と踊りが、のちのちに大きな影響を及ぼしています。

アイヌ音楽や、日本の民謡に浸りながら、本人はヴァイオリンを弾くという柔軟な姿勢が彼のクラシックという枠を超えた、自由奔放な作風に見られるようです。

木部氏の『タプカーラの彼方へ』は、そんな伊福部氏の魅力を余すことなく伝えています。
伊福部氏の作品をテーマごとに区切って、その作品が作られた背景と伊福部氏の言葉による説明が、
これでもかというほどの膨大な資料をふんだんに使ってとても丁寧に表現されています。
たとえば、「ギリヤーク族の古き吟唱誦歌」では、アジア北方の先住民族であるギリヤークの説明に、服部健氏の「ギリヤーク 民話と習俗」を引用しています。
また、数あるバレエ音楽が書かれている『題七章 舞踏の心』では、実際のバレエが公演された時の状況、公演の批評文、関係者の述懐などがたっぷり書かれています。
その量にまず驚いてしまいますが、それよりも遥かに感動的で驚嘆してしまうのが、伊福部氏の言葉による説明です。丁寧で奥深くて、どうしたらここまでお話してもらえるんだろうというほど掘り下げてあります。
熱意を持って取り組んだ木部氏だからこそ聞けたのではないかと思えるエピソードばかりです。

この本を読むと、今まで聴こえてこなかった伊福部氏の音楽の新たな部分が聴こえてくるようです。
ここまで伊福部氏を追ったという心意気に胸を打たれます。
伊福部氏の音楽には、トラッドやエキゾチックな匂いもするので、
クラシックはちょっと〜という人にもぜひ聴いてほしいです。
そして、その音楽をより良く理解するためにも、
この『タプカーラの彼方へ』を読むことをお勧めいたします。
で、この本を読むと、伊福部氏の音楽がさらに聴きたくなっちゃうんですよ〜。(((((((;^▽^)

2002.6.23


4月18日に無事発刊されました。
オンデマンド本で、3200円です。
(申し込みは、ディーボ 03-5414-3101へ)



【2002.2.23に書いた案内文】
この本には、音楽家『伊福部昭』氏の音楽活動が木部氏の綿密な取材をもとに、小説仕立てでわかりやすく、しかも詳しく記されている。
すっすっと読み進むことができるので記録小説だということを忘れさせてくれる。

失礼ながら、私は伊福部昭氏のことはなにひとつ知らなかった。
戦前からアイヌや日本の伝統的な音楽と西洋音楽をミックスさせた画期的な手法で、オリジナリティ溢れる攻撃的で力強い音楽を産み出したとか、東京音楽大学の学長をしていたと聞いてもピンとこなかった。

が、一度その音楽に触れてみたら、なんだかわからないけれど、その凄みははっきりと感じることはできた。様式にとらわれないので、なかなかなじめなかったが、その場面展開の自然さ、メリハリの利いた旋律、他に比較するものが見当たらない独自性に驚いた。

木部与巴仁氏の『タプカーラの彼方へ』は、伊福部昭氏の音楽性に惚れ込み、その素晴らしさをみんなに知ってほしいという意気込みが伝わってくる、濃い内容の価値ある本だ。
そんな木部氏の熱意ににもかかわらず、出版業界の落ち込みにより、なかなか出版されないという憂き目にあっている。

だが、木部氏はあきらめない。
各出版社を周り、売り込み、それがダメだったらと購読予約をとるオンデマンド方式を考え出した。
私はその熱意とネット上の小説に心を打たれ、購読予約をした。
が、出版されるには今以上の購読予約が必要だ。
そこで、この私のサイトでも木部氏の『タプカーラの彼方へ』を紹介することにした。
微力ながらも、木部氏の出版に役立つのであればうれしく思う。
彼の創作活動を心から応援する!!


(写真は、『タプカーラの彼方へ』の電子本の表紙です。)


  木部氏のサイトです。購読予約の方は、ここから予約してください。
         小説 『風に聴いた話』 や毎日更新する「タプカーラの彼方へ」製作日誌が読めて
            内容満載です。ぜひ一度訪れてみてください。 



木部与巴仁氏の「タプカーラの彼方へ」の発刊にあたってのトークショーが4月20日、東京ビッグサイトの国際ブックフェアで行われました。その模様を書いてみました。 こちら

朝日新聞の書評はこちら (2002.6.23付)