PFM / Premium Japan Tuor 2006
5月13日(土)  川崎クラブチッタ
 
セットリスト(CTLさんのパクリ) こちら


PFM3度目の来日だ。
1度目が1975年、2回目が2002年。
前回の2002年のをタナボタで見て、すっかり気に入り、今回はPFMのことを多少は知って乗り込んだ。
客席は超満員。立ち見も出ている。女性は2割。いずれも長年のファンだとわかる、気合の入れようだ。

当日は5月の半ばだというのに、ジャケットを着てても寒かった。
プログラムを買おうとグッズ売り場へ行くと、そこにはグッズとセットで6000円のものしか置いてなかった。
プログラム+Tシャツ+直筆サイン+ステッカー+缶バッヂ+ポスター という、豪華6点。
プログラム以外いらないのだが、仕方ない、購入を決意した。
あとで直筆サインを見比べたら、配置が違っていたので、ホントにホントの直筆なのがわかって、トクした気分に変わってましたぁ。♪

キーボードのフラヴィオ・プレーモリが、神経的なものが原因で来れないと貼り紙があった。
ティモ・トルキ(ストラトヴァリウス)もそんな時期があったっけなぁ〜。ミュージシャンは繊細だ。


素晴らしいステージ
1曲目は“人生は川のようなもの
メンバーがぞろぞろ現れてから挨拶をし、それから始まった。
メロトロンの音を出すシンセがいい雰囲気。ムッシーダの哀愁ある前奏はいつ聴いてもいい。
プレモーリが不参加のためか、ムッシーダのレスポールがやけに大きく聴こえる。ベースの音も前回よりも遥かに大きい。
そもそも音量自体が大きい。大きさのために音が歪んで残念でもあったけど、ギターがフューチャーされてより私好みになっていたから構わない。
今日は黒のTシャツを身につけている人が多い。サブ・ドラマーのピエロ・モンテリージが赤と水色(だっけ?)のシマシマTシャツを着てる以外は全員だ。
早くもPFMの世界観にどっぷりハマった。

2曲目は“幻の映像
この曲は、静と動、陰と陽の対比が見事だ。
叙情的で暗いピアノが内面に食い込み、なのにヴァイオリンが躍動的で、私がPFMで1番好きな曲だ。
プレーモリのボーカルはムッシーダが歌っていた。

が、この
幻の映像”をも上回る曲が出現した。5曲目の“原始への回帰”である。
最初からドライブ感が凄まじい。バスドラとベースの連動からして意気が揚がる。
ルーチョ・ファブリのヴァイオリンとムッシーダのギターのライブならではのスピード感に圧倒される。
メロディ美しさと陽気さと心の底から弾んでくるようなノリが最高!
フラヴィオ・プレーモリの突き抜けるような高音のボーカルが聴けないのは残念だったが、美しさと躍動感と力強さがどうして共存できるのか不思議なほど1曲に集中している。
ムッシーダとファブリの高速ユニゾン演奏は、トリ肌が立つほど迫力があり、キレがあった。
一気に私の中で原始への回帰”がベストソングになった。
この日、初めてのスタンディングオベーションが湧き起こったのも、この曲だった!

新作「Dracula」からの曲も、2002年に演奏した曲も、すべて素晴らしかった。
演奏技術が高く、バンドとしてのまとまりが高く、メンバーが楽しみながら演奏しているのが凄い。
チョッチョは精力的に叩き続けている。この人のドラミングは、音に広がりと抜けの良さを感じさせて好きだ。
MCでゼーハーして笑わすのも、自然で好感が持てる。

休憩を挟んで2部に移っても、彼らのテンションの高さは変わらない。
ムッシーダのまさに“珠玉”のアコギによるギターソロ、その後の“ドラッチシマ・マリア”は、穏やかで癒される。
不勉強の私は、Chocolate Kingsからの曲は知らなかったが(ダンゴ〔Chokolate〕よりも花にして♪)、たくさん楽しめた。
MCで「ブランカ、ブランカ、ブランカ!」とチョッチョが叫んだら「レオン、レオン、レオン!」と答える場面があった。
私は「チョッチョったら、ステージで大声で“バーカ、バーカ、バーカ!”って叫ぶとは、なんて大胆かしらぁ」と思いつつ、せっせと「レオン、レオン、レオン!」と叫び返してましたぁ。

PFMが真の実力を見せ付けたのが、2部最後のジャムセッションだろう。
ここでの、ベースとドラムスのリズム隊に乗った、レスポールの歌うようなメロディアスなフレーズと早弾きに、目が離せなかった。
緊張感が高みに持ち上げられてのバトルだった。聴いてる方も緊張してくる。
チョッチョの力いっぱいの迫力のドラミングは献身的で、尽きるのではと心配したほどだった。
パトリック・シヴァスが真ん中に位置して、渋くノッていた。
彼は前回のライブではさほど目立たなかったが、今回はサウンドを底支えしつつ厚みを増していた立役者であった。
PFMは正真正銘のプロ集団。きっちりと寸分の乱れを感じさせない、圧倒的なプレイだった。
すごく満足し、心地いい疲労感を味わった。

アンコールは“9月の憧景”と“Celebration
PFMの真髄を示したステージだった。
高度な演奏技術と、楽曲の素晴らしさと、ライブならではの楽しさ。さらに掛け合いでライブに参加し、メンバーと一体感が持てたという充実感があった。
最高だね!PFM!!!!

ただ、右隣の40代とおぼしき男性は、じっと腕を組んで前を見据えてて、つまんなかった。
プログレに対する、自分なりの聴き方、スタンスがあるんだろうけど、そんなの自室でやってくれ。ここはライブ会場なんだから、ノッてほしいよ!
左隣の30代前半とおぼしき男性は、一緒になって、腕を振り上げたり手拍子したり、声を張り上げたりしてて楽しかった。こうじゃなくっちゃ!
私は右側は無視し、左側と同化するという“器用”なことをやってのけ、最後まで最高潮でめいっぱいPFMを体感し、楽しんだ。
その後のプチオフ会も盛り上がり、素晴らしく充実した1日だった。


Members:

Franz Di Cioccio(Dr、Vo)
 
←一番上  左上→

Franco Mussida(G、Vo)
 
←中央  中央左→

Patrick Djivas(B)
 
←上から2番目  中央右→

Luccio Fabbri(Vi、G、Key
 
←下右  上右→

Gianluca Tagliavini(Key)
 
←左  左下→

Piero Monterisi(Dr)
 
←下から2番目  右下→


個人的所感
私が1番驚き、歓迎したのは、PFMがエレキギター多用でハードになっていたことだ。ベースも畝っていた。
キーボードとギターの両翼の片方がもがれたことによっての苦肉の策かも知れないが、よりライブにフィットしていたと思う。
約60歳という年齢では、枯れていくことの方が自然なのに、逆に元気になっていた。並大抵の決意ではできなかったと思う。
逆境をプラスに転じてしまうしたたかさ、観客を楽しませるエンターテナー性は、イタリア人だからこそ成し得たことだろうか??

いつしか私は、メロディック・ハードとの垣根をあまり感じなくなり、むしろメロディック・ハードとの違いはどこにあるのかと探していた。
それは、リズムギターの存在だった。
リズム・ギターでリフをザクザク刻んでいたら、アンドロメダやSun Gazedあたりの、テクニカルなプログレメタルになってくる。
それと、ギターのディストーション(歪み)だ。
レスポールが生音に近いので、70年代のハードロックになりこそすれ、どうしても80年代以降のメタルにならない。
このことは反対に、リズムギターとディストーションがあれば、現代のメタルとして十分通用するということだ。
PFMがプログレファンのみならず、メタルファンをも取り込んでいるのは、しっかりしたメロディと練りこまれた音楽性の他に、ベース、ドラムがメタルにも通じるからなのだろう。
それから、ギターのメロディ自体と聴かせ方(盛り上げ方)がメタル的なこと。
私はPFMのサウンドに、頭の中でリズムギターを乗せ、別の楽しみも持った。

メタルにならなかったのが残念だと言いたいんじゃない。
PFMはあるがままのサウンドがいい、もちろん。
今回のサウンドは、ハードバージョンとして大いに楽しませてもらったということだ。
気持ち良く、しかもノリノリで聴けた。
プログレにこだわらず、自分たちがいいと思えるサウンドであれば、どんな年代になろうと貪欲に取り入れる柔軟性が素晴らしい。
ここまで自分達の地位を確立してしまったら、ライブでイメージを覆すのは冒険であろうが、躊躇は全く感じられなかった。
そればかりか、今回の“病欠アクシデント”を楽しんでさえいた。

今回、ライブを目にした観客はラッキーだったと思う。同じようなバージョンは、今後出ないかも知れない。
私はこの、“HR寄りライブ”が大いに気に入り、すぐにライブCDなりDVDがリリースされないかと、早くも“待ち”体勢である。