Killer作戦
この日、偵察任務に赴いた小隊があった。
目的は敵地侵攻の下準備として、その脅威がいかほどのものかを確認することである。
投入された車両はM3ブラットレー、偵察車両としてはもっぱら普通と言えよう。
前線は現在半膠着状態だ。
敵は数を頼みに攻め込んでくる。
おかげで装備更新の折に、折角新規採用となったM1A2もその被害は大きい。
反対の川岸に設置された対空陣地も悩みの種だ。
RAH64ヘリによる空中支援も、この対空ミサイルによってダメージを負っていた。
この辺はハリアー2とて同じ事。
チャフ、フレアを搭載しているので、攻撃ヘリほどダメージは大きくないが、満足な支援が出来ていないというのが実情だった。
敵兵員輸送ヘリに関しては、F16の活躍もあり、第一波第二波を全て撃退させ、以降のヘリによる侵攻は確認されていない。
しかし戦線が防備に廻りつつあるのは確実であり、守り抜く事には絶対の自信があるものの、守っていてばかりでは戦争は終わらせられない。
首脳部は、比較的敵の攻撃が薄いポイントから偵察部隊を潜入させ、敵後方の戦力分布を確認、手薄な個所から一気に、今対面している敵の包囲および、敵司令部近辺へ、一気に戦線を押し上げることを決定。
主に対面している敵の輸送を断ち、包囲殲滅を狙ったこの作戦は、「Killer」と呼ばれ、実行の前段階として、偵察部隊を後方に送り出したのである。

「こちらマッドアングラー1、現在敵前線後方60マイル、現在のところ、対空兵器以外の敵勢力以外確認できない。これより更に奥地に潜入する、通信終了」

偵察小隊を束ねる少尉から通信が入る。
敵も疲労が溜まっているのか、後方は随分手薄のようだと首脳部は判断した。
これに合わせ、突入部隊の編成が開始され、支援車両の到着を待って攻勢に出ることが決定された。
更に2日が経過し偵察部隊には次の定時交信で戻るように指示するはずだった。
その日の定時連絡を待たずに通信が飛び込んだ。

「こちらマッドアングラー1、敵戦闘部隊と交戦状態に入った!現在BRDMと交戦中!今後敵主力も合流する事と思われる。部隊は現在撤退を開始、次の通信は・・・・・・、落ち着いたらかける!!」
ブツっ!

通信が切れ、空しい音がヘッドセットのスピーカから響く。
それ以降、定時の呼び出しに対し返答は無い。
そして通信士は叫んだ。

「くそっ!マッドアングラーがマザー・ファッカー(※1)だ!!」

これに呼応するかのように、統合司令部はKiller作戦を発動。
敵のもっとも手薄な個所に兵力を集中、前線に大穴を開け、一気に敵司令部と最前線基地を結ぶ線を切断。
二次攻撃として味方前線基地防衛に残っていた部隊が、前線基地攻略部隊として前進を開始した。
混乱する敵基地。
そして新たな最前線では、敵司令部防衛部隊との激しい戦闘が開始されていた。
自走砲の榴弾が飛び交い、AH64からヘルファイアが打ち出され、ヘリを撃墜せんが為、敵側から対空ミサイルが飛んでくる。
そして対空戦車めがけてM1A2の120ミリが火を噴き、それに対して敵装甲車から対戦車ミサイルが飛んでくると言う、阿鼻叫喚となっていた。
この間に、UH60による、敵司令部強襲を決定。
迂回しながら敵司令部上空までやってきた部隊は、少なくない犠牲を払いながらも司令部攻略に成功。
そばまでやってきていた味方戦車隊と合流し、掃討作戦に入った。
かくして、戦闘は終了した。
偵察小隊は車両が全て破壊されており、何とか脱出に成功した数名が、無事救助された。

「くそー、終了まで18ターンか・・・・」
液晶モニターを見ていた私がボソリとつぶやく。
会社の知り合いと、同じマップを最短何ターンで終了できるか競っている最中なのだ。
お題は先日ダウンロードしてきた大戦略Win2の体験版の「アイランドキャンペーン」。
(大戦略Fanなら十二分にご存知の名マップ)
最近のものはシステムが複雑になり過ぎた余り、敬遠していたが、今回のは随分楽しめそうである。
しかし、実際の司令部も、部隊をコマとして戦略を考えているのかもしれない。
こう考えないと、怖くて指令は出せないのだろうなぁ・・・・・。
とか、感慨深げに思うのであった。

(※1)所謂お前のかぁちゃんほにゃらほへって事だが、この場合最悪の事態という意味、
例えば全滅等がこれに当たる。



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