最近、なんとも落ち着かない・・・
原因はある程度わかっている。
ある程度だけれども・・・
「福沢…祐巳…さま」
瞳子は自室の勉強机の前でゆっくりと体を前に倒した。
額に接した机の天板がひんやりして心地よい。
最近、祐巳さまに接近されると心が掻き乱される。
イライラすると言うわけでもなく、嫌と言うわけでもない。
ただ、なんとなく落ち着かなくなる。
梅雨の時期、彩子お祖母さまが亡くなられる直前に祥子お姉さまとすれ違いしてうじうじしてい
たかと思うと祥子お姉さまが自分の殻に引きこもってしまった時に祥子お姉さまの心をあっさり
引っ張りあげたり・・・
「わからない…」
口に出したところで何かが解る訳でもないけどつい出してしまう。
福沢祐巳さまという人は本当にわからない。
勉強も運動も特に秀でているわけでも無く、失礼な言い方になってしまうけれども
お顔のつくりも祥子お姉さまのようにとてもお美しいということも無い。
けれども、何かが違う。
祥子お姉さまや黄薔薇さま、白薔薇さまたちとは違う「何か」が祐巳さまには、ある。
正直な所、今でも認めたくはないけれども梅雨のときの事件。
あの一件で祥子お姉さまには祐巳さまが無くてはならない存在だと言う事は理解してしまった。
自分は親戚と言う立場以上に祥子お姉さまには近づけなくなってしまった事を。
勝負はついてしまった。
「でも…嫌い。ってことはないし…」
薔薇の館のお手伝いを頼まれたときも、祐巳さまの少し過剰に思える呼び込みが恥ずかしかった
だけで決して祐巳さま自身が嫌だったわけでは無かった。
「…やっぱり解らない・・・」
呟きながら机から体を起こすと時計が目に入った。
午前0時の少し前。
そろそろ寝ないと。
このままだと解らない解らないで寝付けなくなりそうなので勉強机から離れ、ベッドに向かった。
明日、マリア様にお願いしてみよう。
−心穏やかに一日を過ごせますように。と
それが儚い願いだとは瞳子もうっすらと思っていたけれども。
| | NovelTop | | | Next |