私の「コンピュータ」履歴書 No.3

ピカピカ光るランプのいっぱい付いた箱


我々はやってきました、大型コンピュータの鎮座するマシンルームへ。
まず、マシンルームの中を案内されました。テレビとかでしか見たことのない、ランプがピカピカいっている物体とか(CPUらしい)、目玉のようなものがぐるぐる回っている物体(磁気テープ装置と言うらしい)とか、初めて見るものばかりです。
余談ですけど、当時のコンピュータは派手でしたね。CPUからして、何やらランプやら、訳の解らないツマミやらスイッチやらいっぱい付いていて、見ていて楽しかったものです。今のコンピュータなんか、メインフレームからパソコンまで、見てても全然つまらない。なんか分らないけど、ピコピコ光ってるのって、いいじゃないですか。どっかのメーカーさん、これ読んでたら、作ってくれません、そういうの。バスから線を引っ張り出してきてLEDかなんか付けて・・・あ、でも最近のパソコンってバスクロックが数10MHzもあるから、ピコピコしているところなんて見えないか。
他にも、でかい音を立てているラインプリンタとか、磁気ディスク装置(確か、当時のはリムーバブルだったような)とか、カードリーダとか、その他諸々を見せてもらいました。そうそう、このコンピュータは富士通製で、FACOM-230/25とかいう型番だったように記憶しています。

さて、コーディングシートに一生懸命プログラムを書いてきた我々なのですが、どうやってそれをコンピュータに入力するんだろう、と疑問を持ちました。それまで、そんなこと全然説明されて無かったものですから。
我々はマシンルームを後に、別室に連れて行かれました。そこは、タイプライタのようなキーボードと、その後ろに何やら訳の分からない装置が乗っているテーブルが沢山並んでる部屋でした。そして、ここでコーディングシートからパンチカードなるものを作るのだ、と説明されました。どうやら、そのパンチカードを先ほどマシンルームで見たカードリーダで読み込ませる事によってプログラムを実行させるようです。
パンチカードは、今となってはもう使っているところも無いでしょうし(うちの会社には数年前まではあった)、見たことも無い人も多くなってきていることと思います。今、実物が手元に無いので正確な大きさは分からないのですが、縦が7〜8cm、横が20cm位の紙製のカードです。このカードにカードパンチャで穴を開けることによって、情報を記録します。カード1枚で、コーディングシートの1行分(80文字)をパンチすることが出来ます。要するに、1000行のプログラムだったら、このカードが1000枚必要になるわけです。
それを聞いたとき、私は「いゃ〜、さすが大型コンピュータ、なんたる贅沢な」と思ったものです。しかも打ち間違ったカードは捨てるしかありません。カードパンチャの脇には、そういうカードを捨てるためのごみ箱が沢山用意されていました。

私は、一生懸命パンチしました。しかし私のプログラムはかなりの大作です。数えてみたら2000行位ありました。当時の私はタッチタイピングなど出来ませんでしたから(大学時代に練習した)必死に文字を探さざるを得ません。「なんでアルファベット順にならんでおらんのじゃ〜」しかも打ち間違ったらそのカードはパーです。カードパンチャもいろいろ技術革新されていたようで、私が会社に入ってから使ったやつは、80ケタ先に打っておいて、その後一気にパンチするようになっていました。これなら、打ち間違ってもバックスペースで戻して打ち直すことが出来ます。しかし、私がそこで使ったカードパンチャにはそんな機能はありません。必死に打ち間違わないようにキーを押して行くしかありませんでした。

そんなこんなで、やっと2000枚のカードが完成しました。さて、実行です。カードリーダに今パンチしたカードを乗せて、ボタンを押します。あっと言う間にカードが読みとられて行きます。そして約1分後、オペレータの人から「だめだね、こりゃ。コンパイルエラーだ」との冷たいお言葉。ラインプリンタから出力されたコンパイルリストを元に、プログラムの修正です。
こんなことを何度か繰り返しているうちに、やっとコンパイルエラーが無くなりました。さて、プログラムが実行されます。私は、当時のOSがどんなもので、どんな機能を持っていたのかよく知らないのですが、今のように、プリンタへの出力は一旦スプールにためておいて、なんてことはやっていなかったようです。実行結果をラインプリンタが大きな音を立てて打ち出して行きます。が、しかし、いつまでたっても終わりません(^^;)オペレータからは「これ、終んないんじゃないの?」とまたしても冷たいお言葉。強制的にジョブをキャンセルされてしまいました(;_;)
プログラマなら誰でも陥る「無限ループの罠」、しょっぱなから、この洗礼を受けてしまった私なのでありました。
コンパイルリストを受け取って、私は必死にプログラムを追います。が、悲しいかなスパゲッティ、追えば追うほど何をやっているのか分からなくなってきます。しかも、変数名はAとかAAとかXYZとか、なんのこっちゃの世界。それでもなんとかプログラムを修正して、再挑戦です。今度は・・・・あれ、何にも出ない(^^;)

まぁ、こんな事を夕方まで繰り返していたのですが、結局私の作ったプログラムが正常に動く気配はありませんでした。やはり、あまりの大作に挑戦したのが敗因だったのでしょう。2000枚のパンチカードと、5cm程の厚さのプリンタ出力、それをお土産にもらって、とぼとぼと家路に向かう私なのでありました。

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