新・闘わないプログラマ No.487

シンプル


先日、ある人の携帯電話の交換に付き合いました。いままで持っていた電話機はもう5年以上も前の機種で、バッテリもほとんどもたなくなっているし、あちこち調子が悪くなっていて、かと言っていまさらもう修理も……というわけで、新しく買うことになったわけです。
持ち主は、この種の機械の操作にまったく向いてなくて、操作を間違えて私のところにも(自分では掛けたつもりがないのに)夜中や早朝に電話がかかってくることがあるくらいで、新しく買う電話機の選択にもかなり慎重を期さなければなりませんでした。

で、とりあえず製品情報を調べてみたら、X社には「らくらくホン」とかいうのがあり、Y社には「簡単ケータイ」とかいうのがあるのですが、都合でどうしてもZ社の契約を継続する必要があり、そのZ社の製品を調べてみたところでは、それに類する電話機はありませんでした……って、こんな書き方したらXとかYとかZとか伏字にしても意味無いですね。
で、Z社のカタログを眺めていたところ「シンプルモード」とかいうモードのある製品があるようです。別に高機能の製品は必要ないので、できるだけ安く上がる製品を、ということで3機種ばかり目星をつけました。
と、ここまで調べてから、店へ。本人が店に行けない事情があるため、委任状などを書いてもらう必要もあり店を何度か往復して、やっと機種変更を行うことが出来ました。残念ながら目星をつけていた3機種のうち2機種に在庫が無くて(というか製造中止?)、残りの1機種にするしかなく選択の余地がありませんでした。そんなわけで、できればストレートタイプのほうがよかったのですが、折り畳み型に。

この種の機械の操作が不得手な人は「状態」というのを理解していない(理解できない)ところにあるんじゃないか、と思っています。前にも書いたことがあるのですが、同じボタンを押しても「状態」によって違う意味がある、ということが理解できないようなのです。電話機なら、そのディスプレイの表示からいまどういう状態にあるのかを認識して、それに応じた操作をする必要があるのですが、それができないわけです。
「最初の画面で十字ボタンの左を押すと電話帳が出る」と説明すると、いまの状態にお構いなしに左ボタンを押して「電話帳が出ない」と言ってパニック状態になってしまいます。「まず、わからなくなったら、その赤色のボタン(終話ボタン)を押して、最初の画面に戻してから操作してね」と言っても「???」なんですね。
でもって「『電話機の使い方教えて』って言っても、ぜんぜん教えてくれない」って言われたりするわけです。いや、何度も何度も、同じことを説明しているんですが。
「○○をする場合には、まず○○を押すと画面に○○と表示されるから、そこから上下ボタンを使って、いま○○したい○○を選んで、真ん中のボタンを押して……」
「わかった、わかった」
「じゃあ、一人でやってみて」
「……」

いや、別に揶揄しようとこんなことを書いているわけじゃなくて、「状態」というのを理解して、それに応じた操作ができない人もいるので、「状態」を出来る限り作らないようなユーザーインターフェースが必要なのでは、と言いたいわけです。
そういう意味では、今回機種交換した電話機は……シンプルモードなのに、不要とも思える状態がありまくりです。単に「文字を大きくしとけば高齢者向けでいいだろう」くらいにしか思ってないのかも知れません。着信があって、その電話を受けないと「着信あり」の表示が出るのは今どきの電話では普通でしょうが、この電話機のシンプルモードは「着信あり」の状態になると、十字キーの中央のボタンを押して着信履歴を一旦表示させないことには、他の操作をすることができません。
こんな「状態」は不要なんじゃないかな、と。「着信あり」のアイコンくらいは表示されてもいいでしょうが、そこで着信履歴を見たい人は見ればいいし、「着信履歴」なるものを理解できない人は無視できるようにすればいいわけで、無駄に状態を作ってややこしくしているのは「大きなお世話」だと思います。
他にも、電話帳で名前を選択するのに上下左右キーを駆使しないといけなかったり、選択した名前の人に電話を掛けようとして中央ボタンを押しても、その人の詳細情報が表示される(これも「状態」ですね)だけで、電話をかけるには、ここで左上のボタンを押す必要があったり、「○○します。いいですか?」みたいな表示が頻繁に出たり(これも「状態」)、なんか無駄に「状態」が多すぎます。このユーザーインターフェースを作った人は親切で、間違った操作をしても途中で確認して取り消しできるように、とか考えているのでしょうけど……たぶん。
そんなわけで、この機種に交換したのは失敗だったかも。

なお、その電話の持ち主は親です。

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