新・闘わないプログラマ No.426

インク


少し前に、プリンタ用の詰め替えインクが合法か違法か争った裁判の控訴審の判決が話題になりました。結果としては、メーカー側のキヤノンが勝訴したわけですが、そのことの是非については、私はなんとも言えません。
もともと、この種のプリンタは、「本体価格を安くして、インクで儲ける」というビジネスモデル(って言うの?)で商売しているわけで、詰め替えインクが広まったらプリンタメーカーとしては死活問題であることは確かです。ただし、私のように一般人よりは大量に印刷している人間としては、インク代でより多くのお金をプリンタメーカーに貢いでいる、とも言えるわけで、そういうビジネスモデルはいまいち気分がよろしくないのも確かです。

ところで、プリンタ用のインク(や、レーザープリンタのトナー・ドラム)は、製造終了後いったいどの程度の期間、供給してくれているものなのでしょうか。私が最初に買ったプリンタは、キヤノンのインクジェットプリンタ(記憶をたどって、さらに検索してみたところでは、BJ-130Jというモノクロのインクジェットプリンタでした)で、本体価格は10数万したと記憶しています。当時は、一般向けのプリンタと言えば熱転写プリンタが一般的で、あとはうるさいドットインパクトプリンタもあったかな、という時代でした。このプリンタはWindows用のプリンタドライバが無かった(あれ? Windows 3.1用のドライバはあったっけ?)ため、数年で使い道がほとんど無くなって、その後処分しました。さすがに、このプリンタ用のインクカートリッジは今では手に入らないだろうなあ、と調べてみたところ、ありました。今でもBJI-481という、このプリンタ用のインクカートリッジを買うことができるようです。お値段は2100円(←結構安い)。ちなみに、このページで「対象機種:BJC-130J」とありますが、これはたぶん間違いだと思います。もう20年近く前のプリンタのインクカートリッジがまだ売っていたことは驚きです。
次に買ったプリンタが、(昔の68k)Macintosh専用の、HP Deskwriter 550Cというプリンタです。これも当時10数万で買いました。このプリンタは黒のインクカートリッジと3色カラーのインクカートリッジの2個を入れて使うタイプですが、これも調べてみたところ、HP26とHP25というインクカートリッジを今も買うことができるようです。

ここまで調べた限りでは、意外と昔のプリンタ用のインクも供給されているようですね。昔、職場で大量に導入されたキヤノンのLBP-B406という10数年前のレーザープリンタのトナーもまだ売っているようですし。
よくよく考えてみたら、「プリンタ本体の価格は下げて、インクなどの消耗品……もしかしたらレーザープリンタなどは、その保守も……で儲ける」というビジネスモデルからすると、あまり頻繁に機種交換されるのは、メーカー側の立場からすると望ましくないわけで、長期間にわたって消耗品を供給し続けるのは、そのビジネスモデルに合致しているとも言えるわけですね。
かと言って、旧機種の所有者が新製品を欲しくならないように魅力的な新機種を出さなかったりすると、それはそれで新たなカモ……いやいや、インクを買ってくれるありがたいお客様の数も増えないでしょうし、そのあたりのバランスをどう取るのかとか、この商売は案外難しいのかも知れません。

さて、1ヶ月ほど前に、家で使っているインクジェットプリンタの調子が悪くなったという話をしたのですが、そこで、いっそのことレーザープリンタにしようか、ということを書きました。その件に関していくつか情報をいただきましたが、その中で、「HPからレーザープリンタ並みの印刷速度で、なおかつランニングコストも安い、本体価格も安いインクジェットプリンタが出てますよ」という情報をいただきました。HP Officejet Pro K550という機種で、スペックを見た限りでは、確かによさそうです。この値段なら、メンテナンスどうこう考えるまでもなく「使うだけ使って、壊れたら捨て」でも惜しくないかも知れません。
ついでなので、HPの最近のプリンタの動向を調べてみたら、この機種では採用されてないのですが、最新機種ではスケーラブル・プリンティング・テクノロジーとかいう新しい機構を採用しているようですね。この中で、こんなことが書かれています。

これまでにない画期的な「ムダなし新独立インクシステム」 インクタンク内に発生する気泡はインク吐出不良を引き起こす、印刷品質の大敵です。
このため従来の独立型インクシステムでは、印刷品質の低下を防ぐために頻繁に行われる自動メンテナンス時に、大量のインクを消費していました。HPは新しいインクシステムの開発にあたり、このインクのムダに注目。
メンテナンスの頻度を減らすだけでなく、メンテナンスに使用したインクを全て回収してプリントにリサイクル利用する画期的な「アクティブ・エア・マネージメント」を開発。 インクのムダを徹底的に排除し、効率的なプリントを実現しました。

インクの無駄を極限まで減らす、という思想が(本当にメーカー側のうたい文句どおりならば)すごくよさそうです。
以前、E社(って隠すほどのことも無いですが)のプリンタを使っていて、電源を入れるたびにプリントヘッドのクリーニングと称して、大量にインクを消費するところが非常に不満でした。しかもそれだけ消費しながら、それでも目詰まりをよく起こして、そこでまたクリーニングのために大量のインクを消費する、ってところも。
最近は多少はよくなっているのかも知れませんが、でもそれほど改善されていない、という話も聞きましたし、そんなわけでE社(って隠すほどのことも無いですが)のプリンタはどうも敬遠してしまうわけです。写真を印刷したときの画質や、印刷用紙の豊富さなどで、できたら写真印刷用にE社(って隠すほど(以下略))のプリンタも再挑戦みたいところなのですが。

しかし、HPのスケーラブル・プリンティング・テクノロジーって、1500億円もの開発費をかけた、ってありますが、もし本当にそんなに開発費かけて、その費用を回収できるんでしょうか? そもそも、メシの種のインク消費量を減らして、それでやっていけるのかな、とか。やっぱり何か落とし穴(ユーザーにとって)があるのかな?

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