新・闘わないプログラマ No.384

PCの廃棄


先日、仕事である職場に行ったところ、部屋の片隅にうずたかく積み重ねられている中古PCの山を見かけました。5年くらい前の省スペースデスクトップPCと、あとノートPC。ざっとみたところ100台以上はありそうです。よく見ると、数ヶ月前に発売になったと思われるノートPCも20台くらいホコリをかぶっていました。
5年くらい前のPCはともかく、ほとんど新品のノートPCまで打ち捨てられるように放置されているのは……もったいないと言うか何と言うか。

「あの、あそこに積み重ねられているPC、あれはいったいどうしたんですか?」
「ああ、あれですか。半年ほど前にこの職場のPCをほとんど全部、一斉に新しくしたんです。あそこに積んであるのの大部分は、交換していらなくなったやつなんですよ」
「廃棄はしないで置いてあるんですか?」
「いや、それがですね、最初はそのまま業者に廃棄を依頼しようと思ったんですけど、『ハードディスクの内容を消去してからじゃないと廃棄業者に渡してはならん』っていう通達がちょうどその頃に出ちゃいまして……」
「ああ、そうですね。最近どこでもそういう流れのようですよ」
「それはいいんですけど、『じゃあ、どうやって消去したらいいんだ』と担当部署に当時聞いてみたのですが、消去用のソフトの選定や運用方針の策定をいまやっているから、そのまま待て、と」
「ああ、それでずるずると」
「いや、もう大体やり方は決まったんですけどね。ただ、消去用ソフトの借り出しやら、確実に消去したという証明の取り方やら、手続きがやたら面倒なんですよ。役員のハンコまで必要でして。消去用ソフトだって1組しか貸してくれないから、消去にやたら時間がかかるし」
「なんか、ややこしそうですね」
「しかも、しかも、中には故障していて起動しないPCがあって、起動しないとディスクの消去もできないですから、しょうがいないので他のPCにディスクを付け替えて消去しようとしたら、PCからディスクを外すのにもまた申請書が必要だという話になって……ディスクを外して持って行かれると大変ということなんでしょうけど」
「でも、外して持って行ってしまうような奴は、申請が必要だろうななんだろうが、あまり関係ないと思うんですけど」
「そして、やっとのことでディスクの消去をしたPC、これは一度、○○事業所の倉庫に集めて、そこで再度検査した後、廃棄にまわすことになっているのですよ」
「聞いているだけで面倒くさそうな話ですね」
「その○○事業所まで廃棄PCを送るのはこちらで費用負担しないといけなかったり、あとこのビルから外に出すためには搬出申請書を出さないといけなかったり」
「いや、もう……」
「そのうえ、PCを搬出する場合には、搬出の直前にウイルススキャンをしないといけない、という決まりもあるんですよ。社内からウイルスが外に出た、ということになると問題だということで」
「ハードディスクを消去しちゃったのに、ウイルスも何もないですよね」
「形だけでもやってくれないと困る、と言われまして」
「なんでそんなにややこしいんですか?」
「それぞれの申請の担当部署がばらばらで、統一性がないってことなんですよね」
「でも、そんなにややこしいと廃棄しようっていう気が起こらなくなりません?」
「だから、めんどうくさいので、あそこにああやって積んだままになっているわけでして」

「ところで、やたら新しいノートPCもあそこに積んでありましたよね」
「あ、見つかっちゃいました? 実は、先日から『指紋認証のないノートPCは一切使ってはならない』という通達がありまして、それで使えなくなっちゃいました」
「じゃあ、あれはどうするんですか?」
「やっぱり廃棄しないといけないらしいのですが、新品を廃棄するのは心苦しいし、会社の資産になっている、それも買ったばかりのものを廃棄する手続きはこれまた結構大変でして」

だったら秘密にしておきますから、2〜3台でいいので私に下さい、そのノートPC。

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