新・闘わないプログラマ No.125

インストール


コンピュータシステムの構築などという仕事をやっていると、大量のコンピュータに、OSやらアプリケーションやらのインストールをしなければいけない、という事態にしばしば遭遇します。
最近、一番よくあるのが、ユーザが使うクライアント機にWindowsNTを入れたPCを使うので、それのインストールを行いたい、というやつです。昔はクライアント機にUNIXワークステーションを使う、というのも結構あったのですけど(いやまあ、もっと昔は、メインフレームのダム端末やら、そのエミュレータ、というのもありましたが)、最近はクライアントにUNIXワークステーションを使うようなシステムはほとんど無いですね。
一つの理由には、値段が高い、というのもありますけど、それ以外にも、こんな状況がしばしばあるわけです。
「今度入れるシステムで、一人一台のクライアントを入れるわけだけど、一人分のスペースって限られているから、何台もパソコンを入れたくないんだよね。今度入れる奴に、オフィスとかさあ、インターネットとかさあ、そんなのも使えるようにしれくれないかなあ」
んで結局、OSはWindowsNTになったりするわけです。まあ、Windows9xという選択肢も無いわけじゃないですけど、ユーザにあれこれ弄られちゃって、それでもって動かなくされちゃって、ヘルプデスクの仕事を増やすだけなので、そういうのは選択肢に入れたくない、というのが本音です。
あ、これは完全な余談ですけど「選択肢」で思い出した。先週、ある会議があって、某社の某部長さんが、「せんたくぎ」という言葉を連発していたのですけど、「へ? 『せんたくぎ』ってなあに?? 『洗濯機』のことかいな?」と、初めのうちはなんのことかさっぱり分からなかったのですね。そうか、そういうことだったのねー。

余談はともかく、大量のコンピュータにOSやらアプリケーションやらをインストールする、というのは非常によくあるわけです。
あるシステムで、大量のクライアントPCに、WindowsNTを入れて、アプリケーションをてんこ盛りに入れて、などという場合、まあ非常にありがちな場合なわけですけど、1台1台にバカ正直にOSとアプリケーションをCD-ROMからインストールする、なんていうことは出来ないわけです。
いやまあ、出来ないこともないですけど、手間が非常にかかる上に、インストール時の設定を間違いやすい……というか、人間のやることですから、まあ何台かに一台は確実に間違うことでしょう。
それに「手間がかかる」=「費用がかかる」ということですし、PCの値段の下落ぶりに比べて、人件費はそういうわけには行きませんから、クライアントPC一台10万円、設置調整費20万円、などというシャレにならない事態にもなってしまうわけで、そんなの客が納得するはずもありません。
そこでよくやる手、というのが、一台だけ、とりあえず全部インストールして、そのオリジナルハードディスクを、別のハードディスクにまるまるコピーしてしまう、というやり方です。これなら、全く同じインストール条件でインストールしたのと同等のディスクがいくらでも作れるわけで、かなり楽ですね。
で、実際にはどうやってコピーするか、ということですけど、一番簡単なのが、ディスクを物理的に外して持ってきて、マスター(コピー元)のディスクが付いているPCに付けて、ディスクの内容をまるまるコピーしちゃう、という強引なやりかたです。この場合、ファイル単位でコピーするんじゃなくて、ディスクの内容をセクタ単位でそのままコピーしちゃいます。
今なら、CD-Rにマスターディスクの内容を焼いて、それを持っていって、という手も取れそうです。コピー先のPCではフロッピーブートして、そのCD-Rの内容をハードディスクにコピーする、ということになりますが、最近のCD-Rライティングソフトウェアには、その機能が付いているものもあるそうなので(私は試したことは無いですが)、このやり方も便利かも知れません。
案外、出来そうで出来ない、というか面倒なのが、ネットワーク越しのディスクコピーですね。私も、DOS/Windows3.1の頃には、フロッピーにDOSとLAN Managerクライアントを入れて、ファイル単位のコピーはやったことがあるのですけど、NTはファイル単位でコピー、というのがうまく行きませんし、そもそもNTFSだったらどうすればいいの? という感じですね。
それに、LAN Managerクライアントは、プロトコルをNetBEUIにしたから一枚のフロッピーになんとか入りきったような気も……ルータ越えだったりしたら、TCP/IPを使わざるを得ないけど、それだと一枚のフロッピーに入りきらないはず、などと考えていたら……そうか、今ならわざわざフロッピーに拘らなくても、CD-ROMブートという手も取れるなあ。それに、よくよく考えたらDOSに拘る必要も無くて、Linuxあたりでやる手もある、ということに気づきました。Linux(というかUNIX)ならraw deviceが簡単に扱えるからディスクのまるまるコピーも簡単だし、TCP/IPは標準で付いてくるし。今度試してみよっと。
まあこうやってディスクのコピーをやると、すべてのPCで、設定が全部が完全に同じになってしまいますが、例えばIPアドレスとかコンピュータ名とか、そういったやつは個別に違う値じゃないといけませんから、そういったところは後で設定しなおすわけです。これでも、まっさらから全部をインストールするよりは遥かに楽だったりします。

ところでこれには、思わぬ落とし穴があります。
ディスクをまるごとコピー出来るのは、基本的に同一メーカの同一機種に限られる、ということです。機種が違えば、部品が違っているわけで、それに応じたデバイスドライバが必要になるわけで……そもそもディスクの容量が違えば、まるまるコピーが出来なくなってしまいます。
あるシステムで、全部のクライアントPCを同一製品に出来ればいいのですけど、まあそこは、いろいろな柵(←「しがらみ」ってこう書くんだ、知らなかった)があって、なかなかそういうわけにはいかないこともあります。メーカやら代理店やらのお付き合いとか、そういった…。
しかも、同一メーカの同一機種だから、といって必ずしも安心できない。同一機種でもロットによっては、グラフィックチップが違っていたり、ハードディスクのメーカが違っていたり、まあメーカも仕入れとかコスト面とかでいろいろ苦労しているのねー、と思わせるものはありますが、こちらにとっては大変迷惑だったりするわけです。
あと、結構困るのが、最近のソフトウェアって、インストール時に「シリアルナンバー」のようなやつを入れさせるのが多いかと思うのですけど、同一シリアルナンバーでインストールされているコンピュータが2台以上あると、ネットワーク上でその情報をやり取りしていて、「こらー、同じシリアルナンバーで複数台にインストールしただろー。不正使用だぞー」と言って、使えなくなっちゃうやつ。
以前、私が経験したやつもこれでした。ある(あまり一般的じゃない)ソフトで、これが出たのですけど、このソフト、新規インストール時にしかシリアルナンバーを入れることが出来なかったので、一旦アンインストールをしてから、再インストールしないといけなくて、面倒でした。シリアルナンバー自体は、レジストリのどこかに持っていると推測されるのですけど、暗号化されていて、どこにあるやらさっぱり分からないし、そもそも暗号化されているから、レジストリ書換えの技が使えませんでした。
このソフト、アメリカ製のやつなのですけど、あちらの、しかもあまり一般的で無いソフトって、けっこうこういうプロテクトの掛かっている奴が多いような気がします。これがまだ日本製なら「まあまあ、うちもそのソフト何千本も買ってあげるんだからさあ、そのプロテクト、なんとかしてくれないかなあ、インストールが面倒でかなわんのですよ」などと交渉することも可能なのですけど…。

あれ? 今回は、書いているうちにだいぶ長くなってきたなあ。
まだ、初期インストールの話しかしていないのに……ソフトのバージョンアップの話とか、そういったこともしようか、と思っていたのですけど、それはまたの機会にします。
というわけで、今回は前編ということで、オチはありません、悪しからず ←って、別に毎回オチをつけないといけない義理も無いのですけどね。

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