UNTER−
WERT
1999/04/23に更新
「君が?本当に?」
「フン!なんならアンタの命で試してあげよーか?」
ここはウィル陸運送貿易会社事務所。
この近隣の食料、風土品、宝石等を貿易する会社・・・
ということに表向きはなっているが、実際に運んでいるものは
麻薬、奴隷、禁制品、といった非合法な物品であることは
裏の世界ではあまりにも有名な話である。
この事務所の社長、ウィル・バーモンドは強欲な男で
ありとあらゆる方法をもって金をつかみ続けてきた。
さて、今日ウィルは事務所の社長室である人物と対峙していた。
「いやいや、私はこの通り金勘定しか取り柄のない男なもんでねぇ。
今回は遠慮しておこう。では本題に入ろう。」
スッと相手に向かってウィルは絵姿を差し出す。
「コイツは・・・・!?」
「そう君もこいつの名前ぐらいは知っているだろう?
いや名前というより、あだ名みたいなものだが。」
「で?まさかコイツと仲良くなりたいとかいう依頼じゃないでしょうねぇ?」
「彼を殺して欲しい。」
ウィルは恐ろしい言葉を事もなにげに言い切った。
その顔は返って笑みを浮かべているようにすら見えた。
「で?報酬は?」
「これでどうかね?」
ウィルはサラサラと小切手に金額を書く。
「これは前金だ。成功すればこの額の10倍払おう。」
「フフン、まぁいいわ。
でもコイツがどこにいるかアタシ知らないわ。
調査期間の日当も上乗せして・・・・」
「そのことなら心配いらない。
もうすぐリング・バレーを通るという確かな情報がある。」
「チェッ、」
「残念だったな。
じゃ、健闘を祈るよ。」
その人物と入れ替わりにウィルの秘書が部屋へと入ってくる。
この秘書はウィルが若い頃からの部下で
ウィルにとって会社で唯一絶対の信頼のおける人物であり、
かつ適切な助言を与えるアドバイザーでもある。
彼がここまでこれたのはこの人物によるところも大きいだろう。
「社長、契約を結ばれたのですか?」
「ああ、成功したら前金の10倍払うといってやったよ。」
「な?そんな大金を・・・。」
「払うわけないだろう?」
「では・・・?」
「アイツがいくら強いといってもあの男程の強さは秘めてはいまい。
返り討ちが良いところだ。」
「では何故契約を・・・?
そもそも何故アイツを殺そうとしておられるのですか?
確かにクライアントの報酬は多額です。
しかしリスクがあまりにも大きすぎます。」
「ふ、確かにクライアントの報酬も魅力だがな、
それよりもっと大きな利益を得ることが出来るのだよ。」
「と、言いますと?」
「これを見てみたまえ。」
ウィルは秘書に一つの書類を差し出す。
「!・・・こ、これは――?」
アサシン
「そうさ、暗殺集団のブラックリストだ。
そこに載っているのは裏切り者等でかつ、
今も逃げ続けている者達だ。
だがこのリストに載ると今までにない程の多額の報酬がかけられ
暗殺者の餌食となり1ヶ月でリストから名前は消える。
だが、あの男はもう2年間リストから名前が消去されていないのだ。
もしここで我々があの男を殺したとしよう。
アサシンからどんな利益が得れる?ン?」
「・・・・!
なる程!多額の報酬だけでなく、アサシンとのコネもでき
今後の商売がより潤滑になる!」
「その通り。立派にビジネスとして成り立つのだよ。」
「ですが社長、ブラックリストに2年も載っているような男を
あの者に殺せるとも思えませんが・・・?」
「先程も言ったようにおそらく返り討ちにあうだろう。
だがヤツも傭兵の端くれ、手傷ぐらいは負わせることができよう。
ま、ヤツが傷ついても傷つかなくともアレを使う。
もしその時までアイツも生きていたら一緒に殺せばいい。
アイツは一種の保険でしかない。」
「・・・アレはいつでも動かすことができます。」
リング・バレーはこの辺りでも一番の難所である。
道程の約50キロ間は周りが切り立った崖となっている。
そのため、落石がよく起こる。
また、崖の上から奇襲をしかけてくる盗賊も多い。
だが、それでもジーナス(前回の街のコトね)から
次の街まで最も早く行ける道ため通行者がいなくなるということはない。
さて、今もこの谷底を歩いてくる人物がいる。
もちろん、シンジ=イカリだ。
彼は前回の事件の後再び旅に出ることにした。
ジーナスからもはや聖杯が奪われた以上、使徒が再び襲来する可能性は皆無。
また彼には同じ場所にあまり長い間止まっていられない理由もある。
最もこれでも最近は少しはマシになったのだ。
ま、それはおいおい話すとして現在シンジは町へ向かってと北上していた。
とりあえず、現時点で封印の解かれている聖器物は感知されない。
従って自力で探さなければならない。
何も当てはないがとにかく北へと足を向けてみることにしたのだ。
危険といわれているリング・バレーもシンジにとってはまったく関係ない。
つい先刻も襲ってきた盗賊を返り討ちにしたばかりである。
ガラリ
崖上から小石が足下へと落ちてきた。
(――!落石か?)
だが上を見上げるとそこにあったのは石ではなく人だった。
(人――女?
・・・とりあえず使徒ではないな。)
アタリマエだ。
そんな毎回毎回使徒が出てきたらすぐにネタ切れになる。<作者
女の顔はちょうど逆光になっているために見えない。
だが長い髪がサラサラと風になびいているのがシルエットからわかる。
ブルーファング
「アンタが 蒼 牙 ?」
「あの・・・あなた誰?」
ヒュッ
「いべしっ!?」
女の蹴った石が見事にシンジの脳天に直撃した。
相当強く蹴ったのか、シンジのおでこは赤くなっている。
「質問してるのはアタシよ!
アンタはYESかNOかだけ言えばいいの!」
軍隊か、ここは?と思いながらも
シンジはとりあえず解答する。
「・・・そうだけど・・・だから君は・・・・?」
「そう。じゃ、戦闘開始ね♪」
「ん、な!?」
ストッ
女は崖上から軽やかにシンジのいる谷底へと降り立つ。
目の前に現れた女性が少女・・・自分と変わらぬ年齢
の少女だったことと、思いのほか美しかったことにシンジは驚く。
「・・・・あの・・・僕、女性に知り合いはいないんですけど・・・?」
「さみしいヤツねぇ。」
「!(ムッ)
だいたいなんで僕が君と戦闘しなきゃならない・・・!
まさか・・・アサシンの?」
最後の言葉は小さかったため相手には聞きとれなかった。
「アタシはあるヤツにあなたの殺害を依頼されたの。
残念だけどアンタには死んでもらうわ・・・。」
(・・・違うのか)
シンジはその説明に少しホッとした表情をする。
アサシンよりは金目当ての傭兵の方が相手が楽だからだ。
だがそう思ったのは間違いであったと後で知ることになるのだが・・・・
「そう、アンタはこのアタシ、
ソウリュウ=アスカこと・・・
第2編
クリムゾン
マリア
が殺してあげる。」
そう言い放つと同時に緋の剣閃がシンジに向かって走る。
その剣閃は思った以上に早い!
仕方なくシンジはエヴァをもって捌く。
「フフフフ・・・それが噂に名高いエヴァンゲリオンね?
でも!」
カシィィ
「っく!」
思った以上に重い一撃だ。
やはりこのアスカという傭兵、ただ者ではない。
「でも、アタシもそうなのよ。」
「!」
アスカの剣が怪しく光り輝く。
ATフィールド!
そのまったく予期していなかった衝撃にシンジは吹っ飛ばされる。
「くはっ!?」
そこへまたも緋の剣閃が襲う。
「クッ!」
かろうじてシンジは剣で受ける。
「ブルーファングといっても大したことないのねぇ?」
「・・・・。」
ゾワッ
「!?」
優勢だったアスカが思わず後退するほど彼の目にすさまじい殺気を帯びた。
全身の毛が逆立つような、そんな殺気だ。
「ふ〜ん、ナルホド。ここからがブルーファングの真骨頂ってワケね?」
シンジは無言でペッと血を吐き出す。
「いくよ・・・。」
キィィィン
今度はシンジからしかける。
アスカはそれを鮮やかに捌く。
だが確実にシンジの剣はアスカの死角、死角をとらえていく。
アスカは防御に回らざるを得なくなった。
先程までとは全く逆だ。
遂にシンジの右払いがアスカの守りにスキを作った。
完全に胴ががら空き・・・
「!しまっ・・・」
このチャンスをシンジが逃すはずない。
シンジの剣は確実に胴を真っ二つにせんと捉えた。
シンジは一瞬目の前が揺らいだような気がした。
そして、誰かの囁くような声を聞いた。
(シンジ・・・)
「――――――――!? マ・・・」
それは幻聴だったのかもしれない、ただの空耳だったのかもしれない・・・
. .
だが確かにこの瞬間シンジは彼女の声を聞いた。
それはシンジの剣の振りを鈍らせた。
そしてアスカに反撃のスキを与えた。
ザクッ
「ンッ!」
「・・・!」
シンジの剣はアスカの腹部を僅かにかすめただけに止まった。
アスカの剣はシンジの左肩へ突き刺さった。
お互いに剣をひき、離れる。
明らかにシンジの傷の方が深かった。
肩先からは紅の液体が噴き出している。
しばらく硬直状態が続く。
その均衡を破ったのは・・・
「クッ、クッ、クッ・・・やれやれ
なかなか終わらないのでしびれを切らして出てきてしまったよ。」
「アナタが黒幕か・・・・。」
「んなんであんたがココに来るのよ!?」
「いや、いや、どちらか勝ち残った方を始末しようと待っていたんだがな。
なかなか終わらないもだからつい・・・・な?」
そう、先程アスカがいた崖上からこちらを見下ろす男が1人
・・・ウィル=バーモンドである。
その後ろには巨大な影が見えるが、またも逆光のためよく見えない。
「しまつぅ?アンタがぁ?」
「いや、別に私が殺るわけではない。
前も言ったと思うが私は金勘定しか能のない男でね・・・。
君達を始末するのはこの・・・・。」
後ろの影がぎこちなくガクンと沈み込む。
「”ヴェルンドの石傀儡”でね!」
と、同時に巨大な影が跳躍し、二人の目の前へ降り立つ。
ドズン
超重量級の破壊モンスター ストーンゴーレムだ。
「ククク、高かったんだぞぉ、ソレ。
ま、クリムゾン・マリアに支払う報酬と比べればまったく経済的だがな。
これで君達を始末すれば・・・」
「アンタ、アタシをバカにしてんのぉ?
ターンマテリアル
意志無機物還元の魔法ぐらい唱えられるわよ。」
「なら、唱えてみろ。君にこれを止められるとは到底思えないがねぇ。」
小バカにしたように笑うウィルにアスカは激怒した。
「うっっきいいいいい!!!!!!・・・言ったわねぇぇぇ!?」
「人の忠告は素直に聞くものだが・・・。」
「我が名アスカの名の元に
縛められしこの者を本来の姿に解放せよ
不浄なる意志を廃しあるべきカタチへと
ターンマテリアル
意志無機物還元!」
オレンジ色の光がアスカの手より発せられ、ストーンゴーレムを包み込む。
だがストーンゴーレム自身にはなんの変化もない。
「!? 呪文は完璧のはず・・・?」
「”ヴェルンドの石傀儡”はな、石に反魔法コーティング
をほどこし作られている。そのぐらいの魔法では効かんのだよ。」
「・・・なら、剣だ!」
シンジが肩から血を流しながら
ストーンゴーレムへと突進する。
ストーンゴーレムの腕がそれを待っていたかのように振り下ろされる。
身をひねってギリギリのところでかわす。
ギュュッ
シンジのブーツが鈍い音を立てる。
そしてそのまま遠心力いっぱいの剣撃を
裏拳の要領でゴーレムへとたたきつける。
キィィィ
「ククク、お前の剣は確かに石をも切り裂く破壊力を持っていえる。
しかしこの石は特別製で、なんでもダイヤモンド並の高度を保持している。」
ゴーレムの体はもうしわけなさ程度の傷が付いただけでほとんど無傷だった。
「ハハハ、もはや君たちに勝ち目は ない。」
「ならアンタを殺すわ!
ゴーレムのようなヤツは主が死ぬと
同時に活動を停止・・・・・」
だがそれを遮るようにウィルが言葉をかぶせる。
「それはやめた方が得策だな。
ゴーレムには私が死んだら暴走するように仕掛けてあるからね。
ま、この辺り一帯の街の2〜3個はつぶす覚悟があるのなら
それでも良いが?」
「!・・・・どこまでも汚いヤツ!」
「ククク・・・さぁ、せいぜい華々しく残酷に散って私を楽しませてくれ!」
ゴーレムはその長い腕を振り回して襲いかかってくる。
「仕方ないわね・・・アンタ!」
「? 僕?」
「何とか二人でコイツを止めるのよ!」
「そ、そんなぁ無茶だよ・・・。」
「男のクセに文句言わない!」
「・・・・わかった、何とか出来ると思う。
その代わり・・・・」
「?」
「僕が合図するまで邪魔をしないで後ろの方にいてね。」
「んな!(怒)」
それだけ言い残すとシンジはゴーレムへと向かっていく。
「社長・・・。」
「ん?」
いつの間にやら秘書がウィルの横に立っていた。
って言うか先程からいたのだがゴーレムに遮られて見えなかったのである。
「私は心配なのですが・・・。」
ラグナロク
「”神々の終滅”のコトかね?」
「はい。」
「大丈夫だ、ココではやつは唱えられんよ。」
「と、いいますと?」
「唱えれば確かにストーンゴーレムを滅することができるだろう。
だが、それと同時にこの谷も崩壊する可能性が高い。」
「なるほど。
いくらあの男でも何キロか先の人間は守れないと言うことですね?」
「その通りだ。ブルーファングはいつも一般人をなるべく傷つかせないように
立ち回るからな。ふ、それがあの男の命取りだ。
最もキレたときはそんなモノは関係なくなるようだがね。」
ザザザザ・・・
半円の軌道を描きシンジはストーンゴーレムの後ろへと回り込み、
剣を突き立てる。
しかしゴーレムはそれを蚊に刺されたほども思っておらず
無闇やたらに腕を振り回す。
シンジは同じような攻撃を何度も何度も繰り返した。
「フ、”雨垂れ石を穿つ”を地でいくつもりか?
だが雨垂れが石に穴を開けるのは何年もの年月の末のこと。
一朝一夕になりたつモノではない。」
(確かにこのままじゃいつか力尽きるだけ・・・・
やっぱり何か別の方法で・・・・・!)
シンジが一瞬だけこちらを向いたような気がしたのだ。
そしてその顔は大丈夫だと微笑んでいるような顔だった。
(・・・・何を根拠にそんな自信が・・・・!?
これは・・・・まさか!)
アスカがシンジの方を見るとその通りだというように頷いた。
(そう・・・それが狙いだったのね・・・なら次の一撃で全てが終わる!)
ザシィィィ
「やれやれ、何度やっても無駄なのだが。」
「いまだ!」
「!?」
「我が名アスカの名の元に
縛められしこの者を本来の姿に解放せよ・・・・」
「ふ、何かと思えばまたその魔法か。
何度やっても同じコト・・・・・!」
「しゃ、社長!ゴーレムの周りが!」
「こ、これは――!?」
ゴーレムの周りが輝きだした。
それは魔法を使う者でなくとも誰でも知っているモノ・・・
「魔法陣!」
魔力をより高く増幅するのに呪詛と
同様に幾何学模様と呪文をを地面に描く手法・・・。
シンジが先程から駆けずり回っていたのはまさにこれを作るため。
もちろん魔法陣の内容はターンマテリアル。
目標は魔法陣の中心に位置する者、すなわちストーンゴ−レム!
「・・・・不浄なる意志を廃しあるべきカタチへと
ターンマテリアル
意志無機物還元!」
先程よりも強い輝きがストーンゴーレムを包み込む。
ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・
今までストーンゴーレムを形作っていたもの、
すなわち石達が次々と崩れていく。
「ホーホッホッホ!これでストーンゴーレムは倒したわ!
後はウィル!アンタ達だけ・・・・って、あら?」
崖の上にいたはずのウィルの姿は消えていた。
「あ゛あ゛ーーーーっ!逃げられたぁぁぁぁ!
「二人ならもうストーンゴーレムに魔法がかかり始めたときから
逃げてたよ。」
「そ、それじゃぁタダ働きじゃないのぉお!?」
「ま、仕方ないんじゃない?
あんな話にだまされる君も悪いんだし・・・」
ギロリ
「――!?(ビクッ)」
「アンタの責任よ!」
「な、何でだよぉ!」
「アンタがあそこで素直に死んでればよかったのよ!」
ほとんど言いがかりである。
「そ、そんなぁ!」
「アンタが責任もって払いなさいよ!はい!」
そう言って明細書をシンジに突きつける。
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、・・・・い、いちおく!?
そんな大金払えるわけないよぉ!」
「じゃ、借金にしといてあげるわ。
借金が払えるまではアタシの下僕よ!」
「げ、げぼく・・・・(泣)」
数々の伝説を持つブルーファングはこの日・・・・
クリムゾンマリアの下僕に成り下がったのであった。
つづく
さぁ、君も3行で良いから感想・苦情メールを書いてみないかい?
koinuma_173@amy.hi-ho.ne.jp
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第3編 リベンジ ウィズ ヴァンパイア α へ
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