UNTER− WERT 1999/03/09に更新
第1編 使徒、襲来 α
「あそこにあるのね?」 「ああ、間違いない。」 「でもどうして今まで見つからなかったのか不思議だわ。」 「おそらく今までは古代の魔力遮断封印がなされていたが  その効果が切れたのだろう。」 「ま、当たりなら良いんだけど。」 「ふむ、それは実物をあの方に渡すまではわからんな。  さあ、お喋りはやめて行くぞ。」 「別にアンタの力を借りるまでもないわ。 ・ ・ ・  人間がいくら集まろうと所詮は烏合の衆。」 「だが二人で行けとの命だ。」 「堅いわねぇ。向こうの方向に大きな魔力は感知されないわ。  フフフ・・・アタシが死んだら代わりに任務を遂行してちょうだい。」 「ふ、”死んだら”か。ま、わたしは楽ができるのだから構わんがね。」 ジーナス・・・ここエイプ王国の最大の城下町であり、王都である。 また周りを堀と塀で囲まれている要塞都市でもある。 当然重要な拠点であり兵士、宮廷魔術師も相当数いる。 王は聡明であり、慈悲深く、民衆からの支持も高い。 野盗や暴力をふるう兵士が出没する他国と比べれば安定していると言えよう。 その日ジーナスは雨だった。 見張り台にいた兵士達はその任務の退屈さを紛らわすために お喋りに興じていた。 「・・・だよな。」 「ああ、この辺りで一番質がいいからな。あそこのは。」 「ただ値段もはっちまうのが玉に瑕だな。」 「まぁ、それはしかたあんめぇ。何せあれだけの店はなかなか無いからな。」 「そりゃそう・・・。」 ドガァッ! 「な、なんだぁっ!?」 「も、門だ!何かが体当たりしていやがる!」 「で、伝令だ。」 兵士の一人が筒を取り出し、空へ向けてかざした。 ヒューーー パ〜ン 火の玉が空へあがっていき大きな音と共にはじけて消えた。 テル・ファイヤ マジックアイテムの 信号砲 だ。 その間にも門へ体当たりする何かは激しさを増していた。 ドガァッ! ドガァッ! ドガァッ! ズゴーーーーン! 轟音と共についに門が破られた。 煙がもうもうと立つ。 それと同時に中へ入り込んできたのは・・・ 「水!?川の氾濫か!?」 「バカ野郎!川は東だぞ!だいたいあの音は意志を持って・・・」 (ゾクゥッ) モンスター 「ま、まさか水の怪物!?」 「おい、あの水!蛇みたいに動いてるぞ!」 「くそっ!俺達みたいな兵士には無理だ!撤収するぞ!」 「おうっ!」 ヒュオッ その時、煙の向こうから柱状の物体が放たれ、 ザクッ ザクッ 「ゲェッ!?」 「ガァッ!?」 逃げようとしていた兵士の胸を貫いた。 煙がおさまった後、そこには水の怪物と女が立っていた。 おそらく、兵士を殺したのはこの女の方だろう。 「フフフ・・・美しく、散りなさい。」 女は残忍な笑みを浮かべながら水の怪物と共に歩き出した。 彼女の目指す場所は――王城! この町で一番の安宿・・・そこの部屋のベッドに彼はいた。 「――来た。」 彼はそうつぶやくとベッドから起きあがり、 雨の降りしきる外へと出ていった。 蒼いマントとまだ幼い顔立ちが印象的だった。 「王よ、ご覧下さい。」 「うむ。」 この国の王は宮廷魔道士から差し出された水晶球をじっと見つめた。 そこには今現在この町の中心部で繰り広げられている戦いの模様が見られた。 「この女か?この町へ攻めは行ったというモノは。」 「はい。何が目的かはわかりませぬが・・・おそらくは・・・。」 「聖杯か。」 「はい。しかし、我が魔術師部隊50名と兵士20名が出ております。  いくら、彼女が凄腕でもここにたどり着くのは無理でしょう。」 「そうか。だが、私はどうもイヤな予感がするのだが・・・。」 水晶球の中では今、まさに戦いが始まろうとしていた。 「フ、ククク人間が何匹集まろうと同じだというのに。」 「魔術師部隊!前へ!」 一人の男が手際よく指揮する。 「構え!詠唱開始!」 ローブを着た魔術師軍団は一斉に呪詛を唱え始める。 「おい!」 指揮者は女に向かって最後通告を勧告する。 「我々エイプの国の者は争いは好まない!  今引き下がり、二度とこの地へ現れなければ  何も危害を加えるつもりはない!」 「ふ、」 女はバカにしたようにフフンと鼻を鳴らした。 「それは我々の警告を無視することと受け取って良いのだね!?」 指揮者はイライラとした口調で言った。 「そんな木偶のぼうさん達でアタシを殺せるのかしら?」 「狙えぇ!」 取り囲んだ40人の魔術師が女へ一斉に手を向ける。 「撃てぇ!」 ライト・ノヴァ 破の閃光 さすがに40人の力となると相当なものである。 即座に後ろで待機していた10人の魔術師達が別の魔法を唱える。 ライト・ウォール 光の防壁 光属性のバリアが展開される。 どうやら、ライト・ノヴァによる爆発、閃光を女の周りにだけ、 最小限に止めるためのものらしい。 ライト・ウォールが発動すると同時に、すさまじい光と爆発が起こる。 グォォォォォォォォォン 「どうやら片づきましたな。」(ニヤリ) 水晶玉を眺めていた宮廷魔道士は満足そうに笑みを浮かべた・・・が、 光がおさまった後、彼は信じられないものを目にする。 女はまだそこに立っていた! 彼女の前には赤い正8角形型の結界とおぼしきものが出きていた。 「え、ATフィールド・・・・!?」 「バ、バカな!」 水晶玉を見ていた二人は愕然とする。 「フフフ、これで歓迎は終わりかしら?」 「ちっ、魔法がダメなら剣だ!」 「おぉっ!」 いきり立った兵士20名が特攻をかける。 「バ、バカ!隊長の指示無く・・・。」 もっとも足の速いものが女の前へとたどり着いた。 「死ねぇぇぇぇぇぇ!」 しかしその剣が届くことは永遠になかった。 ヒョォッ 空気を切る音と共に水の腕がこの兵士に振り下ろされたのだ。 「!?」 ガコッ まともにくらった兵士は絶命した。 「あらあら、アビス。こんな羽虫たちに本気になること無いのにね。」 アビス・・・これがこの水蛇の名らしい・・・は、そのまま 近くにいる兵士や魔術師を次々となぎ倒していく。 「バ、バケモノ・・・。」 「ひぃっ!」 一人の魔術師が逃げ出した。 これをきっかけにして皆、次々と逃げ出そうとする。 「うるさい羽虫は始末しきゃねぇ。」 そう女は呟くとこの国の言葉ではない呪詛を唱えだした。 女の周りに次々と柱状の水が出来ていく。 アクアスピア 「水槍」 次々と水の槍が逃げ出そうとしていた者達の背中に突き刺さる。 先程の兵士を殺したのもこの魔法だろう。 30秒後町の通りは死体と血で埋まっていた。 エンシェント マジック 「あの魔法は・・・古代 魔法!」 「やはり・・・ヤツは」 王と、宮廷魔道士は一つの結論に達した。
使徒
「ククク、この国も他愛ないわね。」 チャプッ 「・・・?」 死体の向こうに一人の少年が立っていた。 蒼いマントを羽織り、手には何も持っていない。 ブルーファング そう 蒼 牙・・・シンジ=イカリだ。 「な、何だあの子供は!?  殺されるぞ!」 水晶玉に突如映った少年を見て狼狽する王。 ただその驚きは最後には別のモノに変わることになるのだが・・・・ 「何かよう?坊や?」(ニタリ) 女はしたたかな笑みをシンジに投げかける。 「アナタに聞きたいことがあるんです。」 「そう、悪いけど質問には答えられないわ・・・。」 笑いながら呪詛を呟く女。 「あなた、ここで死んじゃうから」 アクアスピアだ。 鋭い先端がシンジに迫る。 「―――――」 バシュッ バシュッ しかしその全てはシンジに達する前に打ち砕かれる。 何かで一瞬のうちに粉砕したようだ。 「へぇ・・・・・。」 「質問してもいいですか?」 「さっきの兵士達よりもおもしろそう。ねぇ、アビス・・・!」 ガスッ 女の言葉が終わるか終わらないかの内にアビスの巨躯がシンジを叩く。 だが既にシンジの姿はそこにはなく女の目の前まで迫っていた。 そして、その手にはいつの間にか一振りの片刃の剣が握られている。 シンジの剣が素早く振り下ろされる。 ガキィッ しかしその攻撃は赤い壁――ATフィールドによって阻まれとどかない。 「・・・・。」 「無駄よ、無駄。どんなに頑張ってもこの壁は・・・。」 ベリッ ATフィールドが音を立てて曲がっていく。 「な、まさかその剣!」 エヴァンゲリオン 「・・・ぁぁぁぁああああ!」 ベリ ベリッ 遂にその切っ先ががATフィールドを貫く。 シュッ だがその剣は女には辛うじてとどかず、 わずかに肩先を出血させるだけに留まった。 「アビス!」 シンジの後ろにいたアビスが素早い動きで迫る。 しかし彼の方が圧倒的に早かった。 シンジは振り向きざま、剣を振り下ろす。 ズシャァァァァ!――一刀両断! アビスの体は上下二つに分かれ、地に落ち、ただの水と化した。 「質問します、まず・・・・」 「それで勝ったつもり?」 シンジの足下の水が意志を持ったかのように渦巻いた。 「 ! 」 水はシンジを取り込みそのまま再びあの水蛇の形容をとった。 ガボッ シンジの口から泡が漏れる。 「さぁ、何秒持つかしらぁ?貧弱な人間クン。」 アビスの中でシンジはもがくが何の効果もない。 「そんなに動くとすぐ死んじゃうわよ。  長生きしたかったら動かないコトね。  と、言っても1分や2分の差でしょうけどね。」 シンジの動きが止まった。 ピクリとも動かない。 「あーら、もうお終い?息巻いてた割には大したこと無かったわね。」 しかしシンジは完全に動かなくなったわけではなかった。 唇だけがかすかに動いている。 徐々にあの赤い光が呪文と共に体に浮かび上がる。 その不穏な光に女も気付いた、と同時に 「な――」 アトミックフレア  震烈爆衝 すさまじい爆発がアビスの内部から発せられた。 アビスは飛沫となって飛び散る。 魔法を発動したシンジ自身も吹き飛び、 地にたたきつけられそうになるところを かろうじて受け身をとり体勢を立て直そうとする。 だが、今の爆発によるダメージはかなり大きくガクリと膝をついてしまった。 「・・・・・」 「フフフ、所詮エヴァを持っていても使こなせなければただの一介の剣士  と変わりないわ。」 ここでちらりと女はエヴァを見る。 エヴァンゲリオンはコアと呼ばれる赤い宝石の部分を鈍く光らせつつ シンジの手に握られている。 . . 「どうやら、アナタには資格がないようね。」 「・・・・。」 彼はじっと下を向いて、ピクリとも動かない。 「甘いわね、死んだフリをして近づいたところを殺るつもりでしょう?  でも、」 三たび女は呪詛を唱え始める。 「射程距離外から攻撃すればよいことよ。」 「・・・もう射程距離だよ。」 シンジは早口で女と同じような言葉を唱えた と、同時にまたも体中に呪文が現れる。 エンシェント・スペル 「古代呪詛!そんなキサマは・・・!?」 しかし女は言葉を最後まで続けられなかった。 シンジは剣を両手で持ち女に向かってかまえた。 その剣に膨大な魔力が集中する。 ラグナロク 神々の終滅―― 剣の切っ先より現れた淡い緑色に包まれた光は一瞬にして女を飲み込んだ! 「ぎぇぇぇぇぇぇあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!?」 絶叫と共に女の体は見る見るうちに崩れていく。 見開いていた目はつぶれ、腹から臓腑が露出し、 皮膚は焼けただれ、見るも無惨な姿だ。 . . 「消滅しない程度に力は加減しました・・・。  質問します、まず・・・・」 いつの間に立ち上がったのか、シンジは落ち着き払って 先程と同じ事を言った。 「こぁぁぁぁぁ・・・!!」 激痛に女は身をよじらせて悶えている。 ガスッ 「うるさい・・・」 ゾッとするほど冷たい目をしながらうめく女の脇腹当たりを蹴った。 「余計なことは一言も喋って欲しくない・・・。」 女はグッとこらえて呻くのを何とか中断した。 「ゼルエルは何処にいる?」 「あ、ぐき・・きさま、ゼルエル様のコトをなぜ・・・。」 ガキィッ 先程の蹴りとは比べものにならないほど大きな衝撃が女の脇腹に当たった。 女は血を吐きながら1メートル近く吹っ飛ぶ。 「もう一度だけ言っておく・・・余計な言葉はいらない・・・。」 先程よりもさらに増した冷たい視線を女に投げかける。 「もし・・・まだ余計なことを喋りたいなら・・・」 シンジはエヴァンゲリオンを女の胸に突きつけた。 突きつけた女の胸には赤い球状の石があった。 「コレを切る。」 「あ・・・わかった・・・し、知らないんだ。」 シンジはその答えに満足せず、さらにエヴァンゲリオンを近づける。 もう、胸の石と、エヴァの先とは1pほどの間しかない。 「は・・・本当よ・!わ、私たちか、ら  ゼゼルエル様に会え・・・る事なんてい皆無」 先程の魔法で舌も焼けただれている女はうまく喋ることができず やっと上の言葉を言った。 「もう一つ・・・何故、聖器物を使徒は集める?」 「じ、知らない・・・ただ命令、に従わな  ・・・ければこ、ごろされるだ、け。」 「・・・・・・。」 「こ、こ、たえたわ。はやぐくその剣をど、かじて・・・」 「・・・・・。」 「ねぇ゛!早くど、かして!」 「ダメだ・・・」 「が!?」 「・・・アナタは人を殺しすぎたそして、」 「ぞ、して・・・?」 使徒を殲滅することが今の僕の生きる全てだから「じ、やめ・・・」 ガシュッ 懇願も虚しくエヴァンゲリオンは女の胸の石を粉砕した。 その欠片は雨のジーナスに美しく散った。
つづく

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