2000 - 2001 シーズン以前に私の見た作品

 2000年以前に観た作品
 「ナブッコ」 - 2001
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2000年以前に見た作品

私がメットを始めて訪れたのは1991年のことだった。 アメリカ合衆国は治安が悪いと言うステレオ・タイプから来る恐れと、英語に対する自信の無さがアメリカ行きを逡巡させていたのだ。
1991年始めて合衆国を訪れた。 しかも当時治安がすこぶる悪いと恐れられていたニュー・ヨークを訪れたのだ。 オペラが引け深夜のマンハッタンを42ndストリートを越え、37丁目のシェラトン・パーク・アヴェニュー・ホテル(現在のシェラトン・ラッセル・ホテル)までこわごわ歩いて帰った。 このことがニューヨークに対する恐れをおおいに払拭し、その後頻繁にこの地を訪れる事となるのである。 そして私のメット詣でも始まったのである。
この1991年に3本のオペラを見たが、いずれも心に残るような公演ではなく、全く記憶に残っていない。

1991年2月15日 ヴェルディ「ルイザ・ミラー」
     Luisa Kallen Esperian   Rodolfo Luchiano Pavarotti
Miller Leo Nucci Wurm Sergei Koptchak
指揮 Nello Santi 演出 Nathaniel Merrill
美術 Attilio Colonnelo 衣装 Charles Caine
1991年2月16日 ベートーベン 「フィデリオ」
     Leonore Elizabeth Connell   Florestan Gary Lakes
Rocco Kurt Moll Marzelline Helen Donath
指揮 Christof Perick 演出 Otto Schenk
美術 Boris Aronson 衣装 Boris Aronson
1991年2月22日 モーツアルト 「フィガロの結婚」
     Figaro Samuel Ramey   Susanna Helen Donath
Count Almaviva Jorma Hynninen Countess Almaviva Pamela Coburn
指揮 James Conlon 演出 Jean-Pierre Ponnelle
美術 Jean-Pierre Ponnelle 衣装 Jean-Pierre Ponnelle
1993年4月24日 ドニゼッティ 「ランメルムーアのルチア」 マチネー
      Lucia Sumi Jo   Edgardo Alfred Klaus
Enrico Haijing Fu Arturo Richard Drews
指揮 Michelangelo Veltri 演出 Francesca Zambello
美術 John Conklin 衣装 Martin Pakledinaz
1993年4月24日 ワーグナー 「神々のたそがれ」
      Siegfried Wolfgang Schmidt   Brünhilde Gwyneth Jones
Gunther Alan Held Hagen Matti Plette
指揮 James Levine 演出 Otto Schenk
美術 Günther Schneider-Siemssen 衣装 Rolf Langenfass

この時代にはクレジット・カード会社がチケット手配のサービスを開始していたが、私はいつもニュー・ヨークに着くと出来るだけ早くメットのボックス・オフィスに飛んでいき、チケットを購入したものである。 劇場前の大型立て看板に「ソルド・アウト」と書いてあってもいつもボックス・オフィスでチケットを手に入れることが出来た。 どの公演のことか忘れたが1度だけボックス・オフィスはすごい人ごみで、立見席のみしかないと言われ、その立見席のチケットを購入したが、粘っていたところキャンセル・チケットが出て席に座れたことがある。
1993年の「神々のたそがれ」についてはチケットの入手は困難だと言われていたし、ホテルのコンシエルジュにチェックしてもらっても売り切れだと言われたが、ボックス・オフィスで難なく買えた。 しかし演奏についてはギネス・ジョーンズの大音声のみが記憶されるだけで、不満足なものであった。

1996年の「真夏の夜の夢」は全く期待をせずに見に行ったのであったが、なかなか良い舞台で、私にとってメットでの始めての満足できる公演となった。

1996年2月10日 ヴェルディ「ファルスタッフ」
  Sir John Falstaff Bruno Pola   Mrs. Meg Page Margaret Lattimore
Mrs. Alice Ford Barbara Daniels Ford Haijing Fu
指揮 James Levine 演出 Franco Zeffirelli
美術 Franco Zeffirelli 衣装 Franco Zeffirelli
1996年11月29日 ブリテン 「真夏の夜の夢」
  Oberon, King Jochen Kowalski   Tytania, Queen Sylvia McNeil
Puck Nick Stahl Bottom Peter Rose
指揮 David Atherton 演出 Tim Albery
美術 Anthony McDonald 衣装 Anthony McDonald
1996年11月30日 モーツアルト 「コジ・ファン・トゥッテ」
  Ferrando Paul Groves   Guglielmo Dwayne Croft
Fiordiligi Renée Fleming Dorabella Susanne Mentzer
指揮 James Levine 演出 Lesley Koenig
美術 Michael Yeargan 衣装 Michael Yeargan
1998年1月3日 ムソルグスキー 「ボリス・ゴドノフ」
  Boris Godunov Samuel Ramey   Grigory Sergej Larin
Marina Olga Borodina Pimen Paul Plishka
指揮 Valery Gergiev 演出 August Everding
美術 Ming Cho Lee 衣装 Peter J. Hall
2000年4月1日 ワーグナー 「ヴァルキューレ」
  Siegmund Placido Domingo   Sieglinde Deborah Voigt
Wotan James Morris Brünnhilde Jane Eaglen
指揮 James Levine 演出 Otto Schenk
美術 Günther Schneider-Siemssen 衣装 Rolf Langenfass
2000年12月8日 ワーグナー 「さまよえるオランダ人」
  The Dutchman James Morris   Senta Sue Patchell
Daland Peter Rose Erik Roland Wagenführer
指揮 Valery Gergiev 演出 August Everding
美術 Hans Schavernoch 衣装 Lore Haas

1998年の「ボリス」あたりから、スケジュールが立てられるときにはインターネットでチケットを予約することとした。 2000年4月の「ヴァルキューレ」はドミンゴが歌うと言うことで期待をして行ったのだが、見事に期待を裏切られてしまったし、12月の「オランダ人」は途中で休憩も無く、最後まで不完全燃焼のまま幕が降りてしまった。
このように、メットにはいつも期待をして出向くのだが、ほとんどの場合満足に至らず、それがこのところシティー・オペラに足を向かわせることとなった原因である。

「ナブッコ」 - 2001 

インターネットで調べたところ、この日の公演は全席ソルド・アウト。 それでも最近の定宿ミレニアム・ヒルトンに昼過ぎにチェック・インするとすぐに地下鉄でボックス・オフィスを訪れた。 窓口の男はいつに無くつっけんどんにソルド・アウトと言うだけだった。 開演1時間半前に再びリンカーン・センターを訪れると、すでにチケットを求めるかなりの人数の人々がてぐすねを引いて待っており、チケットを持っている人が現れるとわっと人だかりが出来る。 指輪の公演のときすらこのような光景を目にしたことは無かったので、その異常な人気に驚く。 開演15分前となっても全くチケットを入手できそうに無いので、ニューヨーク・フィルにでも行こうかと思いはじめ、まさに立ち去ろうとしたとき1人の中年の女性が声をかけてきた。 チケットを2枚持っている人がいるのだが、あなたはチケットを探しているのかと聞く。 そうだと答えると、1人の老人を連れてきた。 その女性が1枚購入し、残りの1枚を私に回してくれるという。 その老人は自分の席のほか、今はチケットを持っていないが、オーケストラに席が2つあるという。 かなり胡散臭い話だと思ったが、詐欺にあわないよう細心の注意を払いながらその話に乗ることにする。 老人に連れられ私達2人はチケットもぎりを無事通りぬけ、案内されたのはオーケストラ最後列のEE列の席。 右前方にテレビ・カメラがすえつけられてはいたがほぼ中央の席であった。 念の為、その引換券と交換に正規料金の90ドルを支払う。 そのテレビ・カメラのおかげで演奏をアップで見ることが出来ると言う幸運にも恵まれた。 しかしそのモニターが白黒と言うのにはいささか驚いた。

2001年4月6日 ヴェルディ 「ナブッコ」
  Nabucco Juan Pons   Fenena Wendy White
Abigaille Maria Guleghina Zaccaria Samuel Ramey
指揮 James Levine 演出 Elijah Moshinsky
美術 John Napier 衣装 Andreane Neofitou

ところで、その中年の女性はブラジル人で、よくメットにはやってくると言う。 奇しくも前の日には私と同じくシティー・オペラで「エイシスとガラテア」を見たといい、チューリッヒ歌劇場も好きなオペラ・ハウスだと言う。
演奏の方は鳥毛立つと言った表現が適切かどうか、とにかくそれまでメットで体験した演奏とは全く次元の違うすばらしいものだった。 歌手陣ではフェネーナのウェンディー・ホワイトが少し弱い感じで、一方アビゲイルのマリア・グレギーナは圧倒的な歌唱で非の打ち所が無い。
Nabucco多少「レ・ミゼラブル」チックなジョン・ナピーアの舞台もなかなか面白い。 彼はこのナブッコでメット・デビューを果たしたが、何とプログラムを読んでみるとブロードウェーで150本以上の作品を手がけ、5回もトニー賞を獲得していると言う。 その中には「キャッツ」や、「サンセット・ブルバード」に混じって何と「レ・ミゼラブル」もあった。 私の目もまんざらではないとほくそえむ。
第1幕の終わりにはナブッコの命令でユダヤ人の神殿が破壊されるのだが、何とその神殿が焼け落ちるのだ。 これは明らかに実際に火が燃えており、舞台上でものすごい勢いで燃え落ちるのだから驚いてしまう。 わが国では絶対に認可されないだろうと、変な感心をしてしまった。