プンタ・ペニア Punta Penia 3,343m を頂点とするマルモラーダ Gruppo dell Marmolada はドロミテの最高峰である。 広大なマルモラーダ氷河 Ghiacciaio della Marmolada を有し、真夏でもスキーの楽しめる別天地である。 しかしながらその広大な氷河を有する丸やかな山容は、他の荒荒しくダイナミックな形状をしたドロミテの山々とは異なり、そのために「ドロミテの女王」とも呼ばれるのであろう。
マルモラ−ダの北側のアビージオ川 T. Avisio に沿って走る国道641号線からではマルモラーダの山容を見ることは出来ない。 サッソルンゴ鞍部からは観ることは出来るが、距離がありすぎる。 マルモラーダを眺めるのにはおそらくポルドイ峠からロープウェイでセッラ・グループのサッス・ポルドイに登るのが一番だろう。
 サッス・ポルドイ
 ホテル・バイタ・ドビッチ
 マルガ・チアペラからマルモラーダへ
 フェダイア小屋からマルモラーダへ
 カレッツァ湖(カレル湖)
 この地域の旅のヒント集

サッス・ポルドイ

ポルドイ峠 Passo Pordoi / Pordoi Joch 2,242m はファッサ谷 Val di Fassa / Fassa Tal のリゾート、カナツェイ Canazei から国道48号線をアラッバ Arabba、ファルツァレーゴ峠 Pass di Falzarego、コルチナ・ダンペツォ Cortina d'Ampezzo 方面に12kmほど行ったところ、サッソルンゴの鞍部への登山口であるセッラ峠 Passo di Sella から242号線、48号線経由で13kmほどのところにある。 コルチナからだと47kmほど。 このポルドイ峠はこの近辺一の人気観光地とあって、特に夏のシFunivia Sass Pordoiーズン中は駐車スペースを探すのが大変だ。
ポルドイ峠のロープウェーは大人往復18,000リラ(2000年夏)。乗車券売り場ビリエッテーリアのブースは戸外にあり、その背後から動く歩道のようなエスカレーターで登っていく。 ここのゴンドラは大型で上のサッス・ポルドイ Sass Pordoi / Pordoi Spitze 2,950m まで一気に豪快に登っていく。
サッス・ポルドイにはセルフ・サービスのレストランと大きなテラスがある。 まず東側のテラスに出てみよう。 南側の下方を見ると今登ってきたポルドイ峠や国道48号線のつずれ折れがすばらしい眺めだ。 セッラ・グループ Sella Gruppe は裾野からほとんど垂直に立ちあがっており、これまた一度見たら忘れられない山容が特徴だ。 ここポルドイも同じで、峠から急角度で700mも登ってきたわけであるから、下界の眺めがすばらしいのは当然だ。

視線を上げてみるとマルモラーダだ。 下の写真は1999年10月のもので、一面の銀世界である。左上のなだらかなピークがそのマルモラーダだ。
Marmolada and Passo Pordoi from Ropeway in October 1999セッラ・グループは下から見ると頂上部分がほとんど平坦なたらいを裏返しにしたような形状が想像できるが、このサッス・ポルドイまで登ってくるとその実態が良くわかる。サッス・ポルドイの一帯は一つの台地になっているがその北側には北東から南西に500mものきりたったラスティエス谷 Val Lasties がピッツ・セッラ Piz Sell 2941m ピッツ・グラルバ Piz Gralba 2974m などのセッラの北西側のやはり台地状の山群との間を隔てており、また東側にも谷があり、ピッツ・ボーエ Piz Boe 3152m との間を隔てている。
まず、木製の床を持つ広大なテラスから東北方面、ピッツ・ボーエに向って歩いていくことにしよう。 この台地の先端の谷の際まで歩いていくと谷を隔てて、ピッツ・ボーエが実に良い山容を見せてくれる。 これが下の写真で、2000年8月に撮影したものだ。 頂上にかすかに見えるのが、ピッツ・ファッサ小屋 Rif. Piz Fassa のようだ。 テラスの一角にある案内板によると往復約3時間ほどで行けそうである。 ただしいったん谷を下り、かなり急な斜面を登ることになる。 特に頂上付近は地図によると難しいようだ。 なおピッツ・ファッサ小屋の近くにもう一つ、ボーエ小屋 Rif. Boe 2873m というのがあるが、こちらは通常の登山道であるようだ。 私も次回は挑戦してみたいと思う。 Piz Boe from Sass Pordoi次に反対側の西側に行って見よう。 出口はロープウェー駅の中にある。 こちらの南面には途中まで鉄製のフェンスがある。 フェンスがなくなった辺りからは崖の先端を歩くのは危険なので台地の内側を歩くことにしよう。 程なく鉄製の大きなな十字架がある。 このあたりからはサッソルンゴが眺められる。 (下左側写真)
Sassolungo from Sass Pordoi in October, 1999天気が良ければこの一帯をブラブラ歩きながらすばらしい景色を堪能しよう。 ここでは最低1時間くらいはとりたい。 またセルフ・サービス・レストランで昼食を取るのも良いだろう。 値段もリーゾナブルである。
蛇足ではあるが、このロープウェー山上駅と、山麓駅(改札の手前)には水洗トイレがある。 ちなみに峠のみやげ物店兼レストランのトイレは料金を取るところも多く、余り気分が良くないのでこのような施設を利用すると良い。
ホテル・バイタ・ドビッチ

ドロミテへ行くと必ずその最高峰のマルモラーダに登ってみようと、国道641号線を行ったり来たりするのが習慣となってしまった。 いつ行ってもロープウェーは休業しており、またどこから登ればよいのか良くわからない。 それでも1999年10月までには国道に沿って3ヵ所ロ−プウェーがあることがわかってきた。 これらのロープウェーはいづれも9月初旬までには休業してしまうようだ。
さて2000年8月にまたまたドロミテを旅行することになり、今度こそはマルモラーダに登るんだということで、ロープウェーの近くに何軒かホテルのあるマルガ・チアペラ Malga Ciapela に宿を取ろうと探し始めた。 ロープウェー駅に近いと思しきホテルは1週間単位でないと予約を受け付けてくれなかった。 苦労した挙句、ホテル・リストランテ・バイタ・ドビッチ Hotel Ristorante Baita Dovich というホテルが、正確な所在地は定かでがマルガ・チアペラにあることがわかり、三ツ星ホテル、ハルプペンション、おまけにハイエスト・シーズンなのに一人90、000リラということなので、どんなホテルだろうと半信半疑で予約をした。
ホテルはロープウェー乗り場から1kmほど北、すなわちカナツェイ方向へ行った左側にあった。 1階がレストランで、そのレジの裏に14室のゲスト・ルームのある小さなホテルだ。 どうも最近出来た建物のようで、室内の水栓などなかなか良いものを使っている。 床が木なのもこれまた良い。 料理もなかなかなもので、これで90、000リラは本当に安い。 2000年夏のローエスト・シーズン(6月23日から7月8日および9月2日から9月23日)だと何と56,000リラということなので3,000円にも満たない。 ただしシングル・ユースの場合には30,000リラ追加。 2000/2001冬季料金はちなみに77,000リラから120,000リラである。 120,000リラというのは12月29日から1月2日までの間だけである。 何とも良心的な価格設定で、感じも良いので次回も利用しようと思う。

Hotel Ristrante Baita Dovich, 32020 Rocca Pietro - Marmolada (BL) Dolomiti Tel & Fax 0437-522974

マルガ・チアペラからマルモラーダへ

マルガ・チアペラ Malga Ciapela 1446m はマルモラーダの東側、カナツェイから641号線を東へ20kmほどのところにある。 ここは山中には珍しいかなり広大な三角形をした平坦地で、大ホテルとロープウェー乗り場を中心にいくつかの宿泊施設が軒を連ねている。
1st Ropeway to Marmoladaマルモラーダにはここから3本のロープウェーを乗り継いで行くのだ。 まず緑色のロープウェーでアンテルモージャ Antermoja に登り、ここで赤色のロープウェーに乗りかえる。 登ったところがセラウタ Serauta 2950m で、ロープウェー駅の中には第一次世界大戦の博物館(無料)がある。 マルモラーダもその熾烈な戦場だったのだ。 この駅から少し南側に下ると氷河の上に出られる。 そこが夏スキー場の終点だ。 ここから今度は青色のロープウェーでマルモラーダ駅Marmolada 3270m 3270m まで登る。 駅の構内にはマドンナの洞窟 Grotta della Madonna、バール、土産物屋がある。 外へ出ると一面の雪野原だ。 なだらかで広い尾根をプンタ・ロッカ Punta Rocca 3309m の近くまで歩いてみた。 北側は険しい崖となっており雪はついていない。 幅広い尾根の南側は急な斜面となっているようで、そこがマルモラーダ氷河である。 氷河は2800m地点あたりまで続いている。 南側正面にはセッラ・グループ、左手かなたにサッソルンゴ、下方にはフェダイア湖 Lago di Fedaia がすばらしい。 夏スキーはマルモラーダ・ロープウェー駅からセラウタ・ロープウェー駅近くまでのなだらかでかなりの幅のある1kmほどのコースで行われる。 下の方にはTバーSummer Ski in Marmoladaリフトも動いていた。

Sella Group from Marmolada

フェダイア小屋からマルモラーダ

Funivia Fedaia Marmolada and Lago di Fedaiaマルモラーダのもう一つの登り口、フェダイア小屋 Rif. Fedaia からマルモラーダ氷河に登ってみよう。 幸いなことにリフトが動いている。
フェダイア小屋はカナツェイからマルガ・チアペラに行く途中のフェダイア湖の南東端にある。 フェダイア湖のダムの上が車道となっているので641号線とわかれ、ダムの上を行く。 ダムを渡りきったところで右折して少し登るとレストランの先にリフトの乗り場があった。 往復大人一人11,000リラで2625mのピアン・デイ・フィアッコーニ小屋 Rif. Pian dei Fiacconi まで登れる。 この2人乗りのリフトが何とも面白い。 下の写真の通りその搬送機は籠状になっていて、立って乗るのだ。 パッソ・セッラからサッソルンゴに登るゴンドラと同じように乗客2人は距離を置いた乗車位置に待機し、かごが来ると係員の助けを借りて飛び乗るのだ。
このかごからの眺めはすこぶる良い。 下方には豊かに水をたたえたフェダイア湖、そして高度を上げていくと後方にセッラ・グループ、前方にマルモラーダ氷河が迫ってくる。
Marmorada and the "car"ピアン・デイ・フィアッコーニ小屋から10分ほど登るとカプ・アル・ジアッチャイオ小屋 Rif. Cap. al Ghiacciaio 2700m に着く。 ここからは上方にマルモラーダのロープウェーも垣間見ることが出来る。
氷河の先端部分にはリフトの頂上駅から20分程度の距離だろう。 かなりの人々が氷河まで行っていたが、にわかに天候が悪くなってきたので私たちは急いで下に降りることにした。
このリフトの山上駅から歩いて下に降りるコースを歩いている人々もかなり見受けられた。
下りのリフトでは上着をはおったのだが、それでも寒い。下に降りるとリフト脇のレストランで暖かい飲み物をすすった。 このレストランはおおらかで、行きにトイレを無料で借りられた。
表に出ると雨がぽつぽつと降り始めた。

カレッツァ湖

フェダイア小屋を出てカレッツァ湖へ向う。 カレッツァ湖 Lago di Carezza / Karersee 1530m はボルツァーノからカナツェイへ向う241号線沿いにある。 カナツェイからは48号線をファッサ谷に沿って12kmほど行ったところのサン・ジョバンニ S. Giovanni で右折して241号線に入り、15kmほど行ったところの左側に位置する。 カナツェイ方面からだと急カーブを曲がったところに駐車場の入口があるので見落とさないようにしないといけない。
そのサン・ジョバンニに近づくころには土砂降りの雨となり、241号線にはいると今度は大粒の雹となった。 見る見る道路は雪道同然となり、恐る恐るの走行となった。 幸いなことにカレッツァ湖までたどり着くころには雨も小降りとなり、駐車場のトイレから戻ると雨はついにあがっていた。
朝は快晴でも午後になると突如雷が鳴り出すということが2000年8月、2日間続いた。 しかもそのうちの1日は土砂降りのあと、雹まで降り、それが積もって路面が真っ白となるということが起こったのだ。 しかも標高は1300mから1700m程度の場所でのことである。 山の天候は本当に怖いということを肝に銘じなければならない。
Lago di Carezzaカレッツァ湖は道路の反対側を下ったところにある。 この湖はその神秘的な深緑の湖水と、その背後の黒に近い濃緑の森、その背後の秀峰ラテマール Latemar 2842m、 そしてカレッツァ湖に映るラテマールで、ミズリーナ湖と並びドロミテの湖の双璧をなす観光地だ。 
足元に気を付けながら湖畔(といっても木の柵があるので、湖からは距離がある。)まで下りると、湖のかなたにラテマールの姿が見えてきた。 どんよりと曇った中でのラテマールなので今一つという感じだったが、とにかくラテマールの全貌が見られるのはめでたい。 私も1984年10月、1999年10月、2000年8月と三度ここを訪れたが、最初の1984年の時に青い空の中にラテマールが、そして湖面に逆さラテマールがくっきりと映ったのを見ることが出来たが、それでも多少ガスッていて、これぼど完全に見えたのは初めてだった。 ただ残念なことに空の色が青でなかったこと、そして天候の関係で湖面が大変暗く、湖面にラテマールが映らなかった。
湖の周りには遊歩道がある。 私も1999年10月にうっすらと雪の残る遊歩道を歩いたが、高低差もほとんどなく、景色を堪能しながらゆっくり歩き、30〜40分位で一周した。 

この地域の旅のヒント集

地図

Casa di Editore Tabacco 社 「Val di Fassa - Alta Badia Val Gardena / Gröden」 (シート番号2) 1:50,000 この地図はドロミテの中心部分、すなわちガルデナ谷、アルペ・ディ・シウーシ、ファッサ谷、サッソルンゴ、プエツ Puezgruppe 、セッラ、マルモラーダ、トファネ Le Tofane、チベッタ Civetta からコルチナ・ダンペッツォまでがカバーされています。 トレチーメ・ディ・ラバレードやミズリーナ湖は含まれません。 なおこの地図は5万分の一。