28MHz 3エレメント八木改造記
目的
 2年連続でCQ WWコンテスト・WPXコンテストに28MHzで参加してきました。この際、従来から使用してきた自作の3エレ八木を組み立ててフィールド運用を楽しみました。コンディションにも恵まれてまずまずの成果があったと感じますが、ここ一番で珍局をのがしたことも多く、もう少し飛べばいいのに・・・・と残念に思ったことも数々あります。
 欲を言えばキリが無いのですが、少しでもアンテナでゲインを稼いでみたいと考えました。そこで、従来のアンテナを改造してみることにしました。
今までのアンテナは?
 従来の八木は手持ちの材料を使用し、8年くらい前に作ったものです。移動用には強風に耐えるような頑丈さは不要です。とにかく軽くて組立が簡単なアンテナであることが大切です。
 ブームはメーカー製の50MHz八木に使用したものを流用しました。エレメントは秋葉原から入手した63S材、昔通販で大量にパイプを購入したものです。
 ブームは32・28ミリ径、エレメントは10・13・16ミリ径を用いました。

 寸法は、過去のアンテナハンドブック等の資料から算出したものです。以前、某アンテナ設計ソフトを用いて寸法をシミュレーションして遊んでみましたが、あまり信用はしていませんでした。
 従来から、いくらエレメント長が同じであってもアンテナは上手く動作しない、エレメント径によって長さも変化するから補正が必要・・・という話を良く聞いていました。これをシミュレーションするソフトを物色していましたが、最新のWinXPで動作するものが見当たらずにインストールを見送っていました。
 そんな折、MMPC Winというソフトを発見しました。このソフトはDOS版時代の話は雑誌で見ていましたが、ループ系を主に設計されているものと思い込んでいました。
 この八木改造の直前までは、デルタループを製作しようと計画していましたので、ループアンテナ設計のためにこのソフトを入手しました。
 ところが、今回はWWコンテストまでにじっくり調整する時間が取れなかったので、八木を改造することでソフトに慣れてみることにしました。
設計
 このソフトは、各エレメントが異なる径のものをつなぎ合わせた場合もシミュレーション出来ます。V/UHFならいざ知らず、HF帯では一般的な方法です。
 今までのアンテナの寸法は以下の通りでした。(ここでは数値のみ)
エレメント長さ参考(片側)
ディレクタ480cm13mm径100cm + 10mm径140cm
ラジエータ500cm16mm径25cm + 13mm径120cm + 10mm径100cm
+ バランまでの配線2mm径5cm
リフレクタ520cm13mm径100cm + 10mm径160cm
間隔長さ
ラジエータ−リフレクタ180cm
ラジエータ−ディレクタ190cm
 この時の利得・FB比・インピーダンスZ=R+jX・SWR(Z=50オーム)の計算値は以下のようでした。
周波数
(MHz)
利得
(dB)
FB比
(dB)
インピーダンス
 R+jX(オーム)
SWR
(Z=50)
28.05.6710.823.2-j33.53.28
28.15.8112.223.2-j29.73.05
28.25.9213.723.2-j25.82.85
28.36.0415.422.6-j21.22.69
28.46.1417.222.3-j17.32.57
28.56.2418.921.8-j13.32.49
28.66.3420.221.3-j 9.32.45
28,76.4420.520.6-j 5.02.46
28.86.5419.619.9-j 0.72.51
28.96.6418.119.1+j 3.92.63
29.06.7416.418.6+j 8.12.77
 共振点(おおよそインピーダンスのリアクタンス成分であるjXが0となるところ)が28.8MHz付近のようです。実際、SWRの最小点はこのあたりにありました。
 ゲインも6dBちょっと、もう少し欲しいところです。
設計し直してみると
 ブームはそのままの長さにしました。少しでも間隔を広げたほうがゲインや帯域の点で有利なので、ラジエータ−リフレクタ間隔を5cm延ばすことにしました。ディレクタ位置は、マストクランプ位置との兼ね合いで決まりました。

 各エレメントの細い部分(10mm径)の長さを変更して検討しました。
 利得とFB比の最良点が一致しないのは、製作上でもシミュレーション上でも分かっていました。また、ゲインを追求しすぎるとリアクタンス成分の周波数変化が大きくなるために帯域が狭くなり、使い物にならないアンテナになります。
 リフレクタ・ディレクタは利得・帯域を重点に試行錯誤を繰り返し、最終値を決めました。最後にラジエータは共振点でjX=0を28.5MHz付近におくように計算しました。

 このようにして出来上がった結果が、下記のようなものです。
28MHz3eleYAGIディレクタ(片側):
 13mm径100cm + 10mm径147cm

ラジエータ(片側):*
 16mm径25cm + 13mm径120cm + 10mm径99cm + バランまでの配線2mm径6cm

リフレクタ(片側):
 13mm径100cm + 10mm径166cm

* 左のラジエータ寸法は全長の実寸値、エレメント値ではない
 この値で前回同様のシミュレーションをした結果を、下記に示します。
周波数
(MHz)
利得
(dB)
FB比
(dB)
インピーダンス
 R+jX(オーム)
SWR
(Z=50)
28.06.6218.517.3-j27.03.83
28.16.7317.416.6-j22.33.68
28.26.8416.015.9-j17.53.58
28.36.9414.615.0-j11.93.55
28.47.0313.114.3-j 6.83.58
28.57.1111.813.6-j 1.53.68
28.67.1510.513.0+j 4.03.86
28,77.169.312.6+j 9.84.14
28.87.128.212.2+j15.74.52
28.97.027.212.0+j21.85.00
29.06.836.212.2+j28.15.47
 計算上、28.5MHz付近で1dB近く利得が上がるのが魅力です。FB比は悪化しますが、この点は後述することにします。
 インピーダンスの純抵抗分Rが以前に比べ低くなります。当然ながらZ=50オーム時のSWRは悪化しますが、ここはマッチングを取って整合を図ります。
その2へ続く