28MHz 3エレメント八木改造記(その2)
ビームパターン
 ビームパターンを検証してみます。まず、フリースペース(自由空間)のビームパターンです。

 電波は水平方向(真横)にのみ飛ぶのではなく、必ず上下方向にも放射されます。したがって、地面からの反射成分が合成されます。反射成分は地面の反射効率によって変化し、一律ではありません。
 今回の「フリースペース」とは、「地面が存在しない場合」=「地上高が非常に高い場合」と考えて良いでしょう。水平面より下へ放射されたエネルギーは反射せずに消えてゆくようなものです。
 実際的ではありませんが、アンテナ自体の実力を単純比較する場合には適したものです(アンテナメーカーが出すデータの多くは、これでしょう)

 結果は下左図のようになります。上が水平面、下が垂直面のビームパターンです。周波数が28.5MHzの時の値です。
 青色のパターンが従来のもの、緑色のパターンが今回設計したものです。
ビームパターン(フリースペース)ビームパターン(パーフェクトグラウンド)
フリースペースのパターン パーフェクトグラウンドのパターン
 フリースペース(左)とパーフェクトグラウンド(右)のパターン比較
  青色が設計変更前のパターン、緑色が設計変更後のパターン
  数値は再外周を0dBとしたときの相対利得(dB)  f=28.5MHz
  パーフェクトグラウンドは地上高 8mの値
 フロント方向のローブは明らかに今回のほうが約1dB有利なようです。
 1dBの持つ意味を久しぶりに再考してみました。(一応、大学は電子工学科を卒業したものでHi)1dB UPとは、電力比では約25%UPに相当します。
 バックローブは今回のほうが悪化していますが、サイド方向のローブが押さえられて「サイドが切れる」アンテナになっているようです。
 垂直面でも、バック方向約40度でノッチが存在します。すなおなパターンとも言えるでしょう。

 次に、パーフェクトグラウンドのパターンです。「パーフェクトグラウンド」とは、地面方向へ向かった電波のエネルギーが完全に反射されて再び空間へ放射される場合です。従来のフリースペースでは存在しない反射エネルギーが合成されるので、実質的に利得が向上することになります。もちろん、地面の導電率・抵抗によって反射率が変化するので理想値ということになります。

 給電点の高さを8mとした場合のパターンが右下図です。フロント方向の打ち上げ角は18度ですが、ここでも1dBの利得向上が見られます。バックローブも大きくなりますが、その反面で上部(打ち上げ角60〜90度)のローブが減少します。つまり、頭の上に向かって放射されていたエネルギーが低打ち上げ角方向に放射されるようになったと考えられます。
 いわば、打ち上げ角が高いEs層反射による国内近距離には飛びにくいが、DXには有利ということになります。
周波数特性
 フリースペースとパーフェクトグラウンドのそれぞれで計算した利得(GAIN)・FB比の周波数特性をグラフにしてみました。
 設計変更前のアンテナは、利得のピークがもっと高い29.5MHzにありました。エレメント長が長くなることで1MHz近くピークが下がったことになります。
 さて、利得は設計中心周波数28.5MHzでほぼピークになり満足ですが、FB比はパッとしません。従来28.8MHz付近にあったピークが28.0MHz以下にシフトしたようで、周波数が高くなるほど悪化の一途をたどります。利得最大点とFB比最大点が一致しないという定説通りです。

 後述しますが、今回の変更によってバック方向からの混信が増加することを感じました。
 28MHzの場合、昼間は東南アジアが発信源と思われる違法FM局のQRMが多数出現します。午前中に北米・南米へビームを向けると、バックである東南アジアのQRMが以前より多くなったような感じがします。
フリースペース パーフェクトグラウンド
ゲイン比較 フリースペースのゲイン パーフェクトGNDのゲイン
FB比比較 フリースペースのFB比 パーフェクトGNDのFB比
 この後に設計した21MHzの3エレ八木のほうが、特性のバランスが取れています。まだ改善の余地があります。
 サンスポットミニマムの現在、28MHzでコンテストにエントリーする機会もありません。サンスポットが上昇する時期に再度設計をし直す予定です。

 その3は準備出来次第追加します。