愚行連鎖

■私的もののけ考

  1. 西洋もののけ

    有翅少女について

    1. ピクシー、ピスキィ(Pixie,Pixies,Piskie)

      洗礼を受けないうちに死んでしまった子ども達の魂−それがピクシー。
      普通彼らは体は掌に載るほど小さいが(体の大きさを変えられる)姿は大抵美しい。(かの伝説?のイラストレーター、B.フロウドは醜い姿をその著書で具現しているが…)トンボや蜂のような透明な羽を持ち、服はいつも緑色である。
      棲息地域はイングランド南西部サマーセット、デヴォン、特にコーンウォールでよく見られると言う。
      その名の由来は"Puck"に愛称語尾"-sy"が付いた"Pucksy"から派生したと言う説と、小人を現すピグミー"Pigmy"からと言う説がある。
      "Puck"はかのシェークスピアの真夏の夜の夢でもお馴染みであるが、古語"Pouke"が語源で元の意味は悪魔・魔神(デモン)・悪霊を表したらしい。
      悪戯とダンスが主な娯楽で、コオロギ、バッタ、カエルの音楽に合わせて踊る。
      その舞踏会は常に夜行われ、朝になるとその場所には「フェアリーの輪」が残る。ピクシーは群れを成して生活し、その住処は普通岩の中であるとされ、月の輝く夜に野原、または岩の中で彼らの王は御前会議を開き一族に指示を与える。
      彼らは大変義理堅く、よくしてくれた人には必ずお礼をし、その人が死んでからは墓守まですると言うことである。

    2. ラナンシー(Leanhaun shee,Ir:Leanhan sidhe)
      (ラナン・シーには羽は有りませんが…)

      <C.Y.氏からの手紙>

      W・B・イェイツの“ケルト妖精物語”筑摩文庫の付録に、Leanhaun shee(Ir.Leanhan sidhe、リャナン・シー、すなわち、妖精の愛人)という解説がありました(pp.324-325)。
      彼女は霊(sprit) で人間の男の愛を探し求める。ほんでもって、男が拒めば、奴隷のように男にかしづき、男が受け入れると、男は彼女のものになり、別の男が現われまで、男は彼女から逃れられず、弱り衰える、と。これは、ティルナノグ(これはケルトの「常若国」ではなく、懐かしいPC9801の名作ゲームのことだ!)の酒場での情報のひとつでしたね。吸血鬼というのはこのことだったんだ。イェイツは更に続けて、この悪の妖精、という。分らない。この悪の妖精は自分の虜になったものに霊感を与えるゲールの詩神(ミューズ)なのであるという。次の三行も謎のような表現で、“彼女の恋人であるゲールの詩人たちは年若くして死ぬ。
      彼女の心は騒ぎだし、詩人を別の世界に連れ去ってしまう。というのは、死も彼女の支配力を妨げることはないからだ”と。ふぅむ、GB500さん、解説してくださいな。彼女の心は騒ぎだし、という説明が唐突でわからない。ティルナのII(おなじくPC9801のゲームだ!)で例示されますけど。

      ……

       ps: 霊=悪、なんだろうか。

       ps: 詩人は死なない?...

      ラナンシーは死の世界と別のところに愛人をさらうのであって、その世界って、どんな世界のことなんだろう。これも分らない。

       でもってどなたか調査を継続してくださいな。


      伝承の場合、現代語古語入り乱れ、スペルや発音も一定しないし、さらにカタカナに直した場合の問題もある。

      レプラコーン、クルラコーンもレプラホーン、クルラホーンと表記する場合があり、混乱の元ですね。
      正しくはレプラホーンLepracaun、クルラホーンCluricaunに近いものらしいのですが、かの山室靜先生はレプリカウン、クルーリカウンと表記しています。

      で、肝心のラナンシーですが…
      山室先生ですら、

      ラナウン・シー

      彼女はマン島では血を吸うヴァンパイア(吸血鬼)ですが、アイルランドでは詩人の守護者です。彼女に鼓舞された物は、短命ではあるけれど、輝かしい生涯を送るのです。

      こんだけです。

      他の資料では、
      ラナン・シー(アイルランド)
      ”妖精の恋人”と言われる妖艶な女の妖精。集団ではなく、1人で孤独に暮らしているが、例えようもない美しさを備えていて多くの男達を惑わしてきた。
      彼女に抱かれると男はどんどん痩せ衰えていきついには死んでしまう。しかし一方では詩の女神としても慕われ彼女に見込まれた詩人は短命だが素晴らしい詩を残すとも言われている。彼女の正体は実は吸血鬼であるとも言う。

      と言うことで、かなり資料の少ないミステリアスな存在ではあります。
      大体が邦訳されているこの手の本はイエイツかカイトリーの孫引きが多く、殆ど同じ事しか書いていない。
      日本語以外が苦手な私に取ってはこの辺りが苦しいところではあります。

      悪かそうでないかは絶対的な問題ではないと思う。
      精気を吸われて死んだ男に関して言えば、周囲の者に取っては自分の周辺から寿命以前の死者を出すことは悲しみでしかないが、当の男に取ってはそれは

      昇華

      とも言えるのではないでしょうか?
      「死も彼女の支配力を妨げることはないからだ」と言うことは彼の地に於いても彼は彼女と共にあるのだから…
      詩人は死にません。彼の意識下では…
      それを他の人間が死と言うかどうかは別として。


      この時はこう考えましたが、もう少し調べてみるとどうもこれは死生観に関係がある様な気がします。

      死は恐怖ではなくて憧れの旅立ちである。と言う事なのです。
      仏教では極楽浄土へ旅立つし、キリスト教では神の御元へ近付くのですが、やはり、死は関係者にとっては「悲しみ以外」の何者でも有りません。
      しかし、ケルト人たちは常に彼方の常若の国を遥かに憧れながら暮らしていたのではないでしょうか?

      パラレルワールドとしての冥府。

      彼らは別世界の存在を確かに信じていたようです。
      (そして、現在の末裔達もそれを信じているらしいのです)
      この世界はあらゆる所で現世とつながっていて、今でも妖精達が顔を覗かせ、神隠しが起こったりする不思議なポイントになっていると。
      そして、死んだ者の魂や選ばれて、生有るままにそこへ招かれた者たちは安らぎの中で永遠に生きるのだ、とも。

      彼らに取って「現在の生が死と言う甘美な世界のへの準備段階」なのだとすれば、詩人の死はまさしく歓喜の世界への招待と言う他はなく、死は「一つの終わり」ではなく、愛と安息の溢れる生活への単なる(大きな喜びではあるが)連続に過ぎないのではないか、とも考えるのですが…

      ラナンシーは次の獲物を捜しに行ってしまうんだろうけど…
      女って恐い?

    3. バンシー(Banshee)
      Leanhaun shee(Ir.Leanhan sidhe)の項 補足

      アイルランドの妖精はシー(sidheまたはshee)と言う大分類の中で細分される。その中の一支族にレアナイン・シー(leannain sidh)がいる。
      これは「上に乗って横たわるもの」または「息苦しくさせるもの」と訳すことが出来る。
      言い替えれば「悪夢」あるいは「夢魔」である。
      ほかにベアン・シー(Bean sidh)またはバンシー(Banshee)と呼ばれる物もいる。
      これは老婆(!!!!?)の精霊で、死が訪れようとしている家の外で泣きわめくと信じられている。(G.ジェニングス)

      するってえと、ラナンシーはインキュバス・サキュバスと同類と言うことになりますな。

    4. ペリ(Peri)

      ペルシャ(イラン)の高原には白い鳩のような翼を持ったペリ達が住んでいる。
      ペリ(Peri)とは妖精とか仙人、仙女等と訳される。
      ペリス(Peris)と呼ばれることもある。
      その名の通り、彼らは不思議な術を身につけている精霊で、ペルシャのおとぎ話ではよく勇者達に知恵を授けたりする。
      その姿は西洋の天使に似て、鳥の羽を持った人間の形をしているが、この翼は普段は畳んで仕舞っていると言われる。
      ペリは一般的には人間と同サイズのようではあるが、資料によれば小人と言う扱いになっていることもある。
      男のペリ(男女両性いるのだ!新発見)はこうごうしいばかりの威厳に満ち、女のペリの美しさはまばゆいばかりだと言われる。
      彼らは人間と同様に子孫を残し、子供達もそれ相応の年月を経て成長する。
      しかし、彼らの寿命は人間とは比べ物にならないくらい永いのでいつまでも若々しく、しかも生きている内に魔法を含む様々な知識を身に付けることが出来る。

      芳香を餌とし、桃源郷に住むペリ

      彼らの食物はジャコウや紫檀、白檀、シトロン等のかぐわしい香だとされている。
      その住処は空を飛ばなければ行かれない峻険たる高山の上や、水に潜らないと入れない深い泉の底などにあり、更に幻術によって人の目から隠されている。ペリの園には色とりどりの草花が咲き乱れ、この世の物とは思えないかぐわしい香に包まれている。ここには宝石が実る樹木がある、とさえ言われ、たとえ日差しが届かなくても光が陰ることはなく、又当たりに満ち満ちた金銀財宝からも夢幻の輝きが一面に溢れている。

      ペリの周辺

      民話に現れるペリは殆どが女性で彼女達の血は固まると美しい宝石になると言われる。
      又、デーウ(Dev)やジン(Jinn)とは因縁的な対立関係にあり、常に戦っている。
      戦いの際に人間の英雄に助力を頼むことが多く、又、日本の羽衣伝説のような「水浴中に衣類を奪われて人間の妻になる」等という伝説も残され、人間との直接的関わりの大きな存在である。
      イスラム教のコーランでは人間を含む森羅万象はすべて
      四大元素(土、水、火、風)から出来ているとされるがペリやジンは火によって造られたとされている。
      ちなみに人間は土と水から出来たのだそうである。

      悪役紳士録

    5. ゴブリン(Goblin)

      −特記事項−

      バグのルーツはゴブリンだった!

      ゴブリンと言うものの存在は殆ど全域の西域世界が信じていた。
      スコットランド語のボーグル(Bogle)ドイツ語の変種コボルト(Kobold)等々これらは全てギリシャ語のコバロス(kobalos)からきたものであると言う。
      このギリシャ語の意味は単なる妖精(sprite)である。
      時代が経つに連れてこの語から更に派生語が誕生するが、全て同じ物を指している。
      ボーギー(bogey)、ブーギーマン(boogey-man)バガブー(bagaboo)バグベア(bugbear)等である。
      バグ(bug:本来は小さな害虫、ばい菌の意)も語源は同じである。

      又、ピクシーの項で、調べた物の異説になるが、アイルランドのゴブリンの内で一番恐ろしいプーカ(pooka)コーンウォールの精霊ブッカ(bucca)、それからシェークスピアの「真夏の夜の夢」のパックは陽気で悪戯好きなイングランドの妖精から生まれた。
      そのパックは小犬の品種パグ(pug)にその名を残している。

      疲れているんで今日はここまで。
      ゴブリンは話題豊富なキャラクターですぞ!

      この項続く…


    6. あう゛ない先生パラケルスス

      練金術師というから「あう゛ない」のであって、「医療化学の祖」と言ってしまえば突然アカデミックになるのですが…

      四大精霊とパラケルススの四大元素

      風のシルフィー
      水のオンディーヌ
      地のノーム
      火のサラマンダー

      かつて物の根元→元素は4つの物質と考えられていた訳ですね。
      エジプト人辺りの発想もそうだったと確か記憶しています。
      (ケルト人はやたらと3という数に拘ったようですが…それはさておき)
      即ち、

       気体・液体・固体があり、静と動があり、冷と熱があり、
       自然界にあって人間に恩恵と災厄をもたらすものが尽くされています。

      その元素は  火、空気、水、土 の4つです。
      更にこれらは 熱、 冷、 湿、乾 の性質をおび、人の気質は体内の4つの「体液(ユーモア)」の比率によって支配されると言うお話です。
      この4つの体液とは  血液、粘 液、黄胆汁、黒胆汁であり、これに対応する気質は 活気、無気力、短 気、憂 欝であると言います。
      (血の気が多いとはよく言ったモノだ)

      更に更に、季節は4つあり、羅針盤には4方位があり、物質にも4つの形態がある、それは動物、植物、金属、石…地上の動物の行動の方法も4種類…歩く、飛ぶ、泳ぐ、這う…全くいにしえのおっさんは何を考えていたんでしょうかねぇ。

△参考文献


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