愚行連鎖

野遊びしま専科

■私的オートキャンプ論 序-1-

ブームという渦の中で… -I-

 オートキャンプがわが国に紹介されてはや20年以上経つ。
 広く一般に知られるようになってからでも既に10年以上である。

 かつてはボーイスカウト、あるいは山屋、または浮浪者の専売であった野営も自動車がその道具に加わってから一気にファッショナブルかつ簡便になった。
 数々の有用な道具が紹介されて、本来「不便を楽しむ」物であったはずのキャンピングが、巷に溢れるカタログの商品を網羅すれば自動車という強力な運搬手段を持ってして、徒歩による野営では考えもつかなかったような、極めて快適・便利な「野外生活」を「誰でもが」楽しむことを可能にした。
 これは逆に言うなら、どうやって通常の都市生活と変わらないか、またはそれ以上の利便な生活を「アウトドア」で実現するか、と言う事の追求とも言える。

 汗と足の傷みと引き換えに幕営地まで担ぎ上げた、重く、設営がむずかしい帆布のテントを、熟練を要するロープワークで張り上げ、しかし吹き込み、染み込む風雨に悩まされながら、頼りなげな蝋燭やケロシンランプの明りの下で、とりあえずは“火”である固形燃料や、火の神の降臨の儀式にも似た着火のセレモニーを要するストーブに載せた携帯性を優先させたコッフェルから三徳ナイフでフリーズドライやインスタントの食品を直接食う。等というスタイルは完璧に遠いいにしえの物語となってしまった。
 裸火による照明・調理などは既に単なるイベントと化してしまったかのようだ。

※大体、裸火を焚ける場所は極めて少なくなってしまったのだ。

 多少の風雨などものともしない出来の良い化学繊維のテントやタープに囲まれて、力強く辺りを照らすツーマントルのガソリンランタンの明りの下でゴウゴウと燃えるツーバーナーストーブを使い、大型のクーラーボックスで運んだ食材をふんだんに使って中華料理だろうが本格フランス料理だろうがなんでもござれ。
 洒落たクロスを掛けた食卓でお気に入りの食器を総動員してディナーを摂る。食前・食後酒やデザートもお忘れなく。
 バーナーは別燃料を使ったプレヒート等の複雑な手続きは必要としない。あるいはブタンカートリッジのガス器具等なら、自動点火でマッチやライターすら不要で子供でも不安なく使える。もちろんテントも誰もがたるみ無しに簡単に張れ、快適な居住性を持つる自立式の軽量ドーム形。プラスチックや金属の自在金具や結束具があるのでロープワークなども不要である。


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