愚行連鎖 続:高きゃいいってもんでは…

GB楽器博物館

その他の楽器類/ウクレレ:8

廉価ウクレレの研究:2

Ala moana UKC400

音楽を楽しむのに楽器の価格は大きな関わりは持たないはずなのである。
じゃ、ウクレレはどの程度をボーダーに考えればいいのか?
と、言うわけで、試しに1万円台のを一本入手してみた。
実は、KALAのテナーをバンジョー・ペグに換装しようと予算を立てていたのだが…
Gotoh製のバンジョーペグ1Setよりもこの楽器の方が安かったのである。


ALAMOANA UKC400【ハイスペック・モデル】
メーカー希望小売価格 \25,200.

Ala moana UKC400 楽器店店頭ではソフトケース付き2万円程度で売られているようだが、ネットショップで安いところを探すと1万円そこそこで手に入る。
(今回は税別10,800円、送料サービス、代引き手数料・税込11,970円で入手)

総単板のコンサートサイズとしては多分、これが最安値。
但し、付属のケースは本当に無いよりマシ程度の袋。売るとしたら実売数百円だろう。
持ち運ぶつもりなら、きちんとしたケースを購入した方が良い。2〜3,000円で買えるのだから。


Ala moana UKC400 ☆Ala moana UKC400 SPEC


(サウンドホール:ImitationAbaloneって…穴ボコが偽鮑貝なのか…?)



Ala moana UKC3800 ちなみに、このメーカーでは、“ハイスペックモデル”の上位を“ハイクオリティモデル”と位置づけをしており、コンサートサイズに次のモデルを用意している。
(ALA MOANA UK-2800も“ハイクオリティモデル”に該当するらしい)

ALAMOANA UKC3800【ハイクオリティモデル】(ハードケース付)
メーカー希望小売価格 \39,900.
楽器店店頭ではハードケース付き3万円一寸で売られているようだが、ネットショップで安いところを探すと2万円位で手に入る。
今回は「1万円で使えるウクレレはあるか?」というテーマだったので候補から外したが…

☆Ala moana UKC3800 SPEC

ボディにはコア材、ペグはGOTOH製など細部に至るまで時間をかけて丁寧に仕上げられたハイクオリティなモデルです。
間違いなくご納得いただけると思います。

だ、そうである。
Koaとはいえ、これは合板。
でも流石希少材Koa、実売価格はマホガニー単板の二倍程度。
一見こちらの方がバインディングがない分地味に見えるが、確かになかなか素敵な楽器ではある。
ヘッドにはロゴの代わりにインレイが入り、なかなか格好良い。



今回入手のAla moana UKC400、幾つかのネットショップの売り文句をまとめるとこんな感じ。

Ala moana UKC400
【ウクレレ-UKC400】
はじめてのウクレレに最適!AlaMoana UKC400。すぐにはじめられる入門用。
今、注目のコンサートタイプ・ウクレレ。
弾き語りやコード伴奏など一般的に良く使われるソプラノ・ウクレレよりネックが長いため、ギタリストにも弾きやすく、ハイフレット付き(19フレット)仕様ですので、演奏曲の幅も広がります。
ソプラノ・ウクレレよりも豊かな音量があり、ロングサスティーンで音にハリと艶があり、コード演奏はもちろん、ソロ演奏に最適なウクレレです。
最近ではコンサート・タイプを愛用する人が増えているようです。
ボデイはオールマホガニー単板を贅沢につかった仕様、サウンドホールとボディの外縁にアバロン貝タイプのインレイが施され、豪華で高級感たっぷりの仕上がりとなったハイスペックモデルです。
マホガニーのオール単板ボディは弾きこむほどに、鳴りが良くなります。
単板ならではの柔らかで軽快なサウンドをお楽しみください。

凄いな、この宣伝文…

後述するが…この糸巻き(ペグ)が…問題である。

Ala moana UKC400 さて、はじめてのウクレレに最適!すぐにはじめられる入門用。
…とショップがのたまうAlaMoana UKC400、早速検証に移る。

ナット接合部に一寸塗装ムラがあるのはご愛敬。
全般的にかなり綺麗に良くできている。

ご多分に漏れず、これもナットの弦溝が浅い。
1フレットを押さえると音が#してしまうのだが…弾けない程ではない。
一般的に楽器は弦高をかなり高めのまま出荷するようである。
つまり、「好みで調整しろ」と…
低い弦高を高くするのは面倒だが、高い弦高を落とすのは比較的楽だからだろう。


Ala moana UKC400 単板の証、側板の木目と、サウンドホールの切り口。

廉価版のウクレレは大抵そうなのだが、サウンドホールは切りっぱなしである。
Ala Moana UK2800の方は【ハイクオリティモデル】を称するだけあって、合板ながらきちんと丸めてあった。
この仕上げも含めて、サウンドホール廻りを少し薄くしてやればもっと鳴るかも知れない。
なお、・ボディバインディング:ImitationAbalone で美しいアバロン(鮑貝)を期待してはいけない。汚くはないが、アバロンとは似つかない柄プラスティックである。
(まぁ、それなりに可愛いけど…)


Ala moana UKC400 このウクレレは優れた職人が手によりを掛け、世界中から銘木を収集しつつ、注意深く作り上げたモノであり、特に棹の部分などは手削りで入念に仕上げられたモノである。その素晴らしく洗練された音色はウクレレ演奏者の信頼に応えることが出来ると確信する。

みたいなことが書いてあるようだ…

まぁ、どーでもいーが…


Ala moana UKC400 ブレーシングの取付は非常に綺麗である。

ハワイ製のように糊がベタベタはみ出したりしていない。
単板ではあるが、表板も裏板もワンピース(ブックマッチではない)である。
ウクレレのような小型楽器ではワンピースは結構多い。

表側と内部の木目を比較してみたが、これは本当に総単板である。


Ala moana UKC400 ブリッジ廻り。

多分、ブリッジはローズウッド。
カタログ写真では弦止めの部分にクラシックギターに良くある寄木風飾りが付いていたが、この楽器にはなかった。
逆に個人的にはこの方がシンプルで好ましいと思う。
サドルはプラスティック。(サイズはAla Moana UK2800と共通のようだ)
(象牙の端材のストックが結構ある…これは交換してみたい)

表面仕上げは最近多い完全艶消し。
ぴかぴかの方が高級感があり、これは好みの別れるところだが…
実際には指紋や汚れが目立ちにくいので悪くはない。


Ala moana UKC400 ネック、指板廻り。

実に綺麗な仕上がりである。
指板も平滑だし、磨き出しも美しい。
フレット端の処理もきちんと成されており、手を入れる必要はない。

カタログ写真では表板のみ妙に赤くて不思議な色だったが、届いた楽器は、胴体全体が落ちついたマホガニー色であった。カタログの色よりもずっと良い。
その代わりというか、ネックの塗色が非常に赤い。殆どオレンジ色。
結構ばらつきがあるのかも知れない。


Ala moana UKC400 ネックヒール。

こちらも非常にきちんと作られている。文句の言い様はない。
継ぎ目や接合部も綺麗に仕上げられている。

勿論、この価格帯なので、ネックはヘッド部分、ヒール部分(3ピース)の継ぎではあるが…


早速、ストックのまま弾いてみた。
前述したように、若干ナット溝が浅いのでローポジションで音程が#してしまう傾向があるが、そのまま使えない程ではない。
(当然気になるので、後で調整するが…)
ハイポジションでも音程はかなり正確である。
12フレットのオクターブもほぼ正確。
なにより、マホガニーらしい、かなり好ましい音が出る。これ、ホントに1万円?


Ala moana UKC400 さて、問題は、【ハイクオリティモデル】に位置するUKC3800やUK2800の紹介に自慢げに書かれている「ペグはGOTOH製」の部分である。

ALAMOANA UKC400は【ハイスペック・モデル】なので、当然Gotoh製ペグは奢られていない。

写真の上、白いボタンのモノが付いてきた正体不明のペグ。
下の黒いボタンが道具箱に眠っていたGotoh UKA4である。

はっきり言って、この無銘のペグはどうにも使い物にならない。
いくら締めても、弦の張力で弦軸が廻ってしまうのである。


世界に名声轟くGotoh製のペグ。
スタンダードなウクレレ用は3型式のラインナップで定価は次の通り。(Gは金、Cはクローム仕上げ)
UKB :(C)1,890円,(G)2,625円
UKA4:(C)5,985円,(G)6,510円
UKA3:(C)7,350円,(G)7,845円

実売価格は一番安いUKBなら1,500円程度、一番高いものは6,000円程度である。
(メーカーの内緒話…金メッキ仕上げは鍍金層の分だけ厚くなり精度が落ちるのでクロームをお奨め…なんだそうである。)


Ala moana UKC400 楽器メーカーがバルクで購入する場合は更に安くなるはずだが、それでも一番手っ取り早いコストダウンは、このペグと言うことになる。
例えば一番安いUKBを定価の半額で仕入れたとしても、とても実売1万円台の楽器には使えないだろう。
麗々しく「ペグはGOTOH製」と主張している楽器の装着ペグであっても、大抵は一番安価なUKBなのである。
(機能的には必要にして充分だが…)

一つだけ交換してみた。
見た目の安定感だけでも相当違う。


Ala moana UKC400 ペグ全交換したヘッド裏側。

オリジナルのプラスティック・ペグよりかなり重いが、トップヘビーが気になる程ではない。
なにより、オリジナルのプラスティック・ペグでは「楽器としての機能が難しい」のだから…



Ala moana UKC400 こちらはヘッド表。
見た目もかなり良くなる(…と思う)。

ちなみに、この楽器のペグ穴は約8mmφであった。
交換するペグのグレードは一番安いUKBでも問題はないのだが…
UKBのペグ穴(ブッシュ・サイズ)は7.4mmなので、そのままではガタがでて余り好ましくない。
UKAのブッシュサイズは8mmφ、推奨穿孔寸法は7.8mmである。
このサイズ違いは、多分、Gotoh製ペグ同士でグレードアップするときに都合がよいからだと思われる。


結論

はじめてのウクレレに最適!AlaMoana UKC400。すぐにはじめられる入門用。

これは嘘である。

楽器本体としては非常に良くできているが、まず、このペグを使う前提ではそのままはとても薦められない。
弦高も然りである。
信頼出来る楽器屋で調整と部品交換を含めて購入する、あるいは自分で調整するという条件でなら、これは充分に買いである。
コストダウンの影響をもろに受けたペグ以外は非常に良くできた楽器ではあるのだから。

もし、全く手を入れないで使える楽器を安くネットショップなどで、と言うのであれば…
このブランドの品物なら【ハイクオリティモデル】に分類され、「ペグはGOTOH製」と明記されたモノを選べば何とかなるかも知れない。

追記

Grover Champion 3W この楽器に付いていたペグはGrover Champion 3W(Hole size 5/16"=0.79mm)…の模造品と思われる。
模造品と判断した理由はその価格で、このペグは米国で$15程度、日本では\1,500程度で市販されているからである。
つまり、価格的にはGotoh製と大して変わらないこのペグを出荷時に装着することはコスト的に不可能。
更に、本物のGroverを使っているなら、当然の如く「ペグにはアメリカの名品Groverを装備」くらい書くはずである。
多分これは中国製であろう。
(本物であってもこの材質・構造では結果は同じであるが…)


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