愚行連鎖 決して脱線ではない

GB楽器博物館

その他の楽器類/ウクレレ:5

バンジュレレ(バンジョー・ウクレレ)とウクレレの歴史について

Banjo string band 1917

Gibson UB-1 バンジュレレ(バンジョー・ウクレレ)を手に入れたりしたら、あたかも変わり者のような言われ方をした。

実は、この楽器はウクレレ発祥とそう変わらない歴史を持つそこそこ伝統のある楽器なのである。
1915年(1918年説もあるが1915年の方に信憑性がある:後述)ウクレレがアメリカに渡ったとき、アルヴィン・D・キーチと言う人が音量の不足にジレンマを感じそれを解消しようと考えた。
彼は、バンジョーとウクレレとの融合を思いつき、バンジュレレを製作、それをパテント登録したのが始まり。

その後アメリカでは数百ものバンジョーウクレレが市場に出回った。
バンジョーメーカーのVega等は勿論、かのGibsonもUB-1(写真)を始め、数種類のバンジョー・ウクレレを作っていたのである。

まず、ウクレレの歴史をおさらいしておこう。

ブラギーニャ その原型となった楽器に関しては諸説あるが、誕生の日付ははっきりしている。
1879年8月23日にポルトガルの移民船によってブラギーニャという民族楽器がハワイに持ち込まれたという記録がハワイ州当局に残されているそうである。
単純に考えれば、そのブラギーニャがウクレレになったと言うことになるが、別の説には、ブラジル移民の持ち込んだカバキーニョという民族楽器がウクレレの原型になったのだというものもある。

ブラギーニャ(Braguinha)は鉄弦・4弦あるいは複弦4コースで、標準的な調弦はDGBDもしくはDGBE。


カバキーニョ カバキーニョ(Cavaquinho:調弦GGBDまたはDGBD)はサンバやショーロ等に使われるブラジルの弦楽器だが、そもそもこれもポルトガルからブラジルに渡ってきた移民たちが持ち込んだもの。
1879年にハワイに到着した移民船の乗客は主にマデイラ島からの移民だったという。
小型のギターはポルトガル本土ではカヴァキーニョ、マデイラ島ではブラギーニャと呼ばれていたらしいので、ウクレレの祖先はブラギーニャであると見ても良いかも知れない。
ウクレレのボディサイズはポルトガル及びブラジルでのカバキーニョが元になっていると思われる。
(ちなみにbraguinhaという名前はこの楽器が最初に製造されたポルトガル本土北部の地方Bragaに因むという。)

過酷な船旅を終えて、港に降り立った乗客の一人、フェルナンデスという男は嬉しさのあまり、友人の持っていたブラギーニャを持ち出しホノルル港の埠頭で故郷の曲を弾き、楽しげに歌い踊ったと言う。当時、メロディを持つ音楽や楽器がなかったと言われるハワイ人達には驚愕の出来事だったのだろう。

NUNES 1910年代 更に、この移民船には、オーガスト・ディアス、ホセ・ド・エスプリト・サントス、マニュアル・ヌネスという3人の優秀な木工職人が乗り合わせていた、と言うのもウクレレ誕生に大きく関わる。
ハワイに根を下ろしたマニュエル・ヌネスが1880年半ばに“NUNES”ウクレレを作り始め、ウクレレの原型を確立し、1911年にはクマラエもウクレレ生産を開始。
そのクマラエが1915年に本土アメリカに渡り、サンフランシスコで開催された「パナマ太平洋博覧会」で金賞を受賞したことがきっかけとなりアメリカで爆発的ハワイアンブームが起こったのである。

ポルトガルからカナリア諸島に渡ったブラギーニャは変形してティプレとなり、ブラジルに渡ったものは、ほぼそのままの形状でカバキーニョと呼ばれるようになったという。
ペルーの小型複弦ギター・チャランゴは16世紀にスペイン人が伝えたと言われている。
つまり、「大航海時代」に海を渡ったギター達が各地で根を下ろしたというわけである。

次にウクレレの名の起こり。

Edwerd Purvis ウクレレの語源としてはハワイの言葉で、Uke(蚤)がLele(飛び跳ねる)という説が一般的に語られる。

その「飛び跳ねる蚤」説についても… ハワイ最初のウクレレ奏者、移民のフェルナンデスが軽快な指の動きで弦をつまびき歌い踊る様がハワイの人にはとても珍しく「まるで蚤が飛び跳ねているよう」だったことから…
また…
ハワイを訪れたイギリス軍人エドワード・パーヴィス(Edward Purvis)が得意のウクレレを演奏する姿が「飛び跳ねる蚤」に似ていたので、その彼のニックネームが楽器名になった。
あるいは…
演奏する指や手の動きが指板の上を跳ねる蚤のようであった等々。
ハワイ王朝最後の女王リリウオカラニはUku(贈り物)、Lele(やってくる)という意味があることから「ポルトガルからハワイにもたらせれた贈り物」と解釈していたと言う。
現在ではウクレレのことをUkeという愛称で呼ぶこともある。
カラカウア王(真ん中)とパーヴィス(後列向かって左)

ちなみにハワイでは8月23日をウクレレの日としている。

参考:>日本ウクレレ協会
>クレーン


vega1920s.

バンジョーウクレレについて

Banjo Hybridsにこんな記述があった。

サンフランシスコでの1915年「パナマ太平洋博覧会」、アメリカ本土へのハワイのウクレレの導入の直後、バンジョーボディにウクレレネックをすげたバンジュレレ(banjulele:バンジョー・ウクレレ)が現れた。

当時はバンジョーバイオリンさえ存在した。

つまり、バンジョー・ウクレレは本家ウクレレと30数年しか違わない歴史を持つのである。

写真の様に、ベースまでもバンジョーで揃えたバンジョー・オーケストラが今でもあるのである。


Banjo string band

何だかとても喧しそうなバンドではある…



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