後ろ髪を引く
GB楽器博物館
世に愚かの種ぞ尽きまじ…
いえ、私が悪いんです、ホントに全く…
衝動は、全てに優先し…
限りなく、無限に、連鎖す。
我が行状ながら、些かの諦観ありて…
久々に、本当に久々に、行きつけの楽器屋を覗いた…
これが僥倖だったのか不運だったのか…私には分からない。
いましも店頭では中古楽器の整理中。
林立する中古ギター。
そのなかで、この子が一本だけ、私を見て微笑んだ。
なんだ?これ?聞いたこともないブランドだな。
作りはそこそこ、中級品の下だろう。
TOPはまぁまぁ綺麗なスプルース。おや、単板だよ。
かなり大きな打痕があるが、シンプルな作りのマホボディ。
ベネチアン・カッタウェイもなかなかオシャレだ。
全体的デザインにはかなり好感が持てる。
少々弦高が高い(弾けるぎりぎり限界かな)が、ネックに狂いはないようだし、サドル調整で何とかなる程度だ。
フレットはそれほど減っていない。打痕にさえ目をつぶればそこそこコンディションは良い。
一寸待て?
FISHMANのプリが入ってる…
値段は??
なんと、プリアンプユニットのの半額位でないかもしかしたら?
ヤベぇよ、このプライスは…
肩ん所、欠けてて、電気仕掛けのギター、前から欲しかったんだよね…
本人が、どうしても連れて帰って欲しいというので、つい…
連れて帰って弾いてみて、色々調べてみたら、かなり面白い楽器だと言うことが判明したのであった。
James JE100 NS Electric Guitar
たまにあるんだよなー…
どうしても連れて帰れ!
じゃないと、この場で舌噛んで死んでやるぞ!
って、私をキョーハクするヤツが…
この子がまさにそうでだったのだ。
ケースには立派なブランド・エンブレムが…
でも、誰も知らないぞ、“James”なんて…
ハードケースもかなりしっかりした作りできちんとした代物である。
(実は、購入する時、せいぜい、安物のナイロンソフトケース辺りが出てくると思いこんでいたので、一寸びっくりした)
金具類やハンドルによい物を使っているケースは大体、ケースそのものもきちんとしている。
このハンドルはかなり良くできている。
「エレアコはトップ単板の必要すら無い」
と言うご意見は良く聞くし、事実、確かに高峯辺りでも、かなり上位グレードにならない限り単板ではない。
音響的には電気仕掛けギターなら合板でも充分なのだが…
これはもう趣味の問題なのである。
弾いているときにサウンドホールの断面って結構目にはいるから…
サウンドホール飾りには結構綺麗な貝が使われているが、デザインは極めてシンプルで好ましい。
全体の仕上げはサテン(艶消し)でネックのみグロス(艶出し)である。
プリアンプはFISHMAN Classic4(カタログには載っていない。
(OEM向けのエントリーモデルだろう)
独特なデザインのピエゾinブリッジ。
ちょっと分厚すぎる気もするが…
真っ黒い木だが黒檀ではなさそうである。
ベネチアン・カッタウェイはかなり綺麗に出来ている。
バインディングは白っぽい木製である。
何故かテールピン・ジャックではなく、本体側面にアウトプット。
(これって、結構邪魔じゃないか?)
紫檀(ローズウッド)の指板。
スケールは650mmと少々長く、ナット幅も44mmと広め。
フィンガー向きの仕様なのだろう。
ポジションマークは小さなドットで指板中心ではなく、5.6弦の間に慎ましく入れられている。(一寸格好良い)
かなり特徴的なデザイン・ヘッド。
トラスロッド末端はサウンドホール側で、ヘッドには露出していないタイプ。
チューニング・マシンはGrover風(メーカー不詳:刻印など無し)。
高級品ではない証、ネックはヘッド末端(丁度1.6弦チューニング・マシン下あたり)で継いである。
楽器店では出自が分からなかったので、素性を調べてみた。
恐らく、と言うか、間違いなく製造は中国か韓国であろう。
島村楽器という楽器店のオリジナル・ブランドと思われる。
ジェームス JE100 NS と言うモデルで、店頭では70,000円半ば程で売られているようだ。
してみると、この型番JE100 NSも納得が行く。
つまり、「本当は100,000円だけれど、25%Offが店頭価格ですよ。末尾はNatural Satin-Finishの意味です」という感じだろう。
トップ:シトカスプルース単板
サイド/バック:マホガニー
ナット/サドル:牛骨オイル漬け(一見TASQに見えたのだが…)
サークルフレッティングシステム採用。ハードケース付
と言うことである。
また、発売元のサイトには…
オリジナルシェイプのエレアコ。サークルフレッティングシステムの採用によりピッキングのニュアンスがより細かく表現できます。
ともあった。
…と言うことは、これはフジゲン製なのか?
弦高を調整したらかなり弾きやすくなった。
生音音質が多少チャラチャラしているのは楽器グレードから言ってこんなモノか。
しかし、楽器グレードを考えると、この生音は決して安っぽい物ではない。
逆に「悪くないよ」と表現しても良いレベルの物であろう。
流石に「深みのある音」は無理だが、エフェクタの効きが素直で宜しいようで…
そもそも、エレアコなので、この辺りはあまり気にすることはないだろう。
ネックからヘッドにかけて重量が集中しているのは多少気になるが、エレアコの出音に慣れるために使うのなら充分すぎると思う。
が…これは…拾いモノだったのだろうか?
確かに、こういうタイプの楽器、欲しかったことは確かなのだが…
「今流行ってンでしょ?フィンガー・ピッキングって。
連中の好みってさ、
- 長めのスケール/広めのナット幅
- 薄目のネック
- ベネチアン・カッタウェイ
- シンプルなデザイン
こんなん作って、FISHMANでも付けておけばイチコロよ。売れるぜ、そこそこ。
あれ?なんかどっかで見た事あるよね、これ?」
なんてぇ作り手の声が聞こえてきそうな代物である。
ホントにどっかで見たことがあるようなカタチなのだ。
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